『スクールアイドルミュージカル』で、ダブル主演を務める堀内まり菜(椿ルリカ役)と関根優那(滝沢アンズ役)に聞く後編。取材は1月上旬。1月25~29日に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される大阪公演の稽古前のタイミングだった。多くのファンを持つ大人気シリーズの初ミュージカル化に、賛否両論あるだろうことも想像していたという彼女たち。東京公演の幕が開くとともに寄せられた大きな反響は、うれしいものだったという。
――東京公演はいかがでしたか。
堀内まり菜(以下、堀内) まずは、全員で東京公演を駆け抜けられたことにほっとしています。初日の幕が開くまで、この作品をどう受け取ってもらえるかという不安も正直あったので、見に来てくださった方に楽しんでいただけたこと、「『ラブライブ!』の世界がここにあった」とか、「初めてミュージカルを見に行ったけどすごく面白かった」といった感想をいただいたことはすごくうれしかったですね。千穐楽(せんしゅうらく)は平日のお昼にもかかわらず、たくさんの方が来てくださって。
関根優那(以下、関根) キャスト全員、皆さんに受け入れてもらえるか分からない状態で初日を迎えたので、満員の客席を見た時にうるっと感動してしまいました。皆さんに喜んでいただけたことが空気感からも伝わりましたし、日を重ねるごとに反響が耳に入ってきて、SNSでも目にしました。ラブライブ!シリーズのファンの方々は、すごく熱くて愛情が深いイメージなのですが、シリーズ他作品と同じようにスクールアイドルミュージカルを受け入れて、好きになってくださったことがただただ純粋にうれしくって。
堀内 ツイッターでトレンド入りしているのを見た時は、うれしくてみんなで騒ぎました(笑)。
気持ちを強く持って舞台へ
――シリーズ初の試みへの不安や怖さもあったのではないかと思います。
関根 いろんな意見があるのは分かっていましたし、厳しいことも言われる覚悟でした。だけど、お客さんもどんなものか分からない状態だということが、逆にやる気につながったんです。受け入れてもらいたいとみんなで頑張れました。それに、私たちが自信を持たなければ、作品をお届けできない。自信を持てるまで練習したし、気持ちを強く持って舞台に立ちました。本当は不安でしたけど、表情はごまかして(笑)。
堀内 優那が言ったように、自信を持つ必要があったというか、持たざるを得なかった。だけど、本当に信頼できる仲間たちに甘えて、支えられて、お互いを信じて舞台に立ちました。準備としては、私はとにかくシリーズの作品を見ました。舞台での動きも、アニメを見て意識するところがありましたし、アニメの中で体力づくりのために階段を走るシーンを見て、私も走りに行って(笑)。体力もつけましたね。
関根 「間違ってなかったな」と思うし、ラブライブ!シリーズの中で生きられる喜びを感じながら演じることができました。公演が終わったあとは「今日、このシーンこうだったね」とみんなで話して、「じゃあ次はどうしていこうか」という話し合いはずっとしてたよね。
堀内 本番が終わって楽屋に戻ってきて、「今日、あそこ成功したよね」と言いながら、みんなでご飯食べる、みたいな(笑)。
関根 そうそう(笑)。そうすることでどんどん変わっていくし、話すことでみんなの気持ちが同じ方向に向く。やっぱりコミュニケーションは大事だなと思いました。裏でも、“リアル『ラブライブ!』”だったよね。
堀内 本当に!(笑)。
――前編で「女の子の底力を見せたい」という言葉がありましたが、女優の底力の見せどころでもありますよね。生身の人間が演じるという。
関根 そうですね。そこに、私たちが演じる意味があると思いますし、役目だと思っています。生身の人間が演じるからこその変化を見せることができたら、よりラブライブ!シリーズの世界も広がるのかなって。
堀内 稽古ではたくさん試練もありましたけど、みんなで乗り越えられた経験があるからこそ届けられたエネルギーもあると思います。底力を見せられたのではないかと。
東京公演の経験を大阪公演に生かす
――初日から千穐楽にかけての変化はありましたか?
堀内 やっぱり、演じるごとにルリカちゃんとしての気持ちは深まっていくので、初日と千穐楽ではエネルギーが変わったと思うシーンはありますね。チームワークもどんどん強くなっていって、それぞれが出すエネルギーを受け取り合う力も深まっていったと思います。
関根 本当に、毎回、その気持ちを受け取って演じていました。それから、稽古の時にはマスクをしていたので、相手の表情が分からなかったんです。本番に入って顔を見て、「そういう気持ちで歌ってるんだ」と伝わることも多くて、心がぐーっとなって。公演ごとに気持ちが高まるシーンがありましたね。
――東京公演を終えて、次に生かしたい点は?
関根 まず大阪公演の梅田芸術劇場メインホールは、東京の新国立劇場中劇場よりも会場が大きいんですよ。
堀内 そうなんです。私はいちミュージカルファンでもあるので、『レ・ミゼラブル』とかを上演していた劇場だと思うと、すごく……。
関根 やっぱり、立ちたいところだもんね。
堀内 本当に光栄ではあるのですが、いざ立つとなるとやっぱり緊張します。稽古がもうすぐ始まりますが、お正月のお休み中も「大阪公演がある」というドキドキがずっとあって……。
関根 分かる。考えちゃうよね。
堀内 でも、東京公演をさらに超える、より良いものを届けたいです。ルリカちゃんは、天真爛漫(らんまん)でみんなを引っ張っていく、物事を起こしていくシーンが多いんですけど、大阪公演では、後半に向けて見えてくる葛藤を、会場の一人一人にもっと届くように演じたいと思っています。
関根 私は、あの大きな劇場でどう表現するかをしっかり考えたいです。身体が小さいので、皆さんに届けるにはよりパワーが必要なのですが、葛藤している役なので大きく表現するのも難しい。だけど、後ろの方にも届くぐらいのエネルギーをもっと出していけたらいいなと思っています。
アルバム発売も決定した楽曲への思い
――楽曲の良さも『ラブライブ!』ならではですが、役として思い入れの深い曲は?
堀内 本当に、どの曲もいいんですよね。終盤に、この物語を通してルリカちゃんたちが1つの確信を得る場面があるのですが、そのときに歌う曲が特に好きです。資料をもらった時、歌詞が本当に心に刺さって、「もう1人自分がいたら、絶対に観客として見に行くのに!」と思いました。それくらい胸に響いた曲があるので、その衝撃を皆さんにも感じてほしいです。
関根 私は、最初に歌う曲ですね。スクールアイドルミュージカルの始まりですし、ここでいかに滝桜女学院のカリスマ性を見せられるかが大事ですから、気合を入れて歌っています。それから、セリフではあまり描かれないアンズちゃんの心情を、全てぶつけて歌う曲があるんです。その曲も、すごく気持ちが入りますね。
――使用楽曲を集めたアルバムが5月10日にリリースされるとの発表もありました。
関根 すごくうれしかったです。出せると思っていなかったので……。
堀内 楽曲が本当にすてきなので、私もアルバムを聞いていっぱい浸りたいです。スクールアイドルミュージカルを演じるのが心の底から楽しいので。できるかどうかは全く分かりませんが、再演も実現できたらいいなって思います。
関根 やりたいよね! それから、音楽のライブステージもやってみたいです。カーテンコールも楽しいんですよ。アイドル活動を終了して以降、またこうしてライブをできるなんて思っていなかったから。
――コンサートが実現したら、どんなステージになりそうですか。
関根 えー! どんなステージ……キラキラ全開な、エネルギッシュなステージになりそう(笑)
堀内 楽曲にストーリー性があるので、見ているお客さんも楽しめるような巻き込み系のライブがいいです。風が吹いてくるとか!
関根 物理的に巻き込むんだね(笑)。
堀内 だけど、どんな形でも、今後もラブライブ!シリーズに関われたらうれしいですね。多分これは、キャスト全員が同じ気持ちだと思います。
(撮影/中村嘉昭、ヘアメイク/Ai)