2022年12月10日に東京・新国立劇場中劇場にて幕を開けたラブライブ!シリーズ初の完全新作ミュージカル『スクールアイドルミュージカル』。オールメディアで展開するラブライブ!シリーズの既存作品のミュージカル化ではなく、本作のために新たなオリジナルストーリーと登場人物が書き下ろされた。
物語の舞台は、運営方針の違いにより対立する2つの伝統校。しかし、両校の理事長の娘である兵庫・椿咲花(ツバキサクハナ)女子高校の椿ルリカと、大阪・滝桜(タキザクラ)女学院の滝沢アンズが、スクールアイドル活動を通じて出会ったことで、彼女たちを取り巻く世界に変化が生まれていく。
東京公演が始まると、その物語の面白さや音楽の良さに加えて、初のミュージカルながら、しっかり“ラブライブ! らしさ”が踏襲されていることに対し、SNSに絶賛の声が相次いだ。今回、本作でダブル主演を務める堀内まり菜(椿ルリカ役)と関根優那(滝沢アンズ役)に東京公演を振り返ってもらいつつ、大阪公演への意気込みを聞いた。まずは、ラブライブ!史上初の完全新作ミュージカル主演という大役を担った心境や、ミュージカルならではの面白さ、一貫するラブライブ!らしさについて語ってもらった。
――お2人は初対面ですか?
堀内まり菜(以下、堀内) 実は8年くらい前、お互いにアイドル活動をしていた時に対バンライブで出会っていたんです。最近、ファンの方がその時の画像を送ってくださって「会ってたんだね」と話しました。
関根優那(以下、関根) グループ同士が挨拶をしている時の画像だったんですけど、ちょうど私たちが向かい合っていて驚きました(笑)。そんなふうにお互いの存在は知っていたのですが、改めて会ったのは、今回のキービジュアル撮影の時。当時、まだ役の詳細も分からない状態だったから、手探りでの撮影でしたね。
堀内 緊張していたのですが、優那が「よろしくね」って優しく話しかけてくれたので、心が軽くなりました。
関根 その後、稽古に入る前のワークショップの時には、「敬語をやめよう」と2人で決めたんです。私たちはメインとして頑張っていく間柄だし、仲良くなれたらと思って。
堀内 やっぱりこれだけ大きな、歴史のある作品ですから、ラブライブ!シリーズに携わってきた皆さんの思いを背負っていきたいと思ったし、なにより底力を見せたい思いがありました。女の子の底力というか、「女の子が頑張る舞台で、かっこいいところを見せたいね」という話をしたんです。
関根 ラブライブ! シリーズの偉大さを感じて、キャスト全員にプレッシャーや責任感が芽生えていたので、それもみんなで共有しました。稽古の行き帰りもずっと、どうつくっていくかをみんなで話し合ったよね。
堀内 そうだったね。それに稽古場に優那がいると、すごく和むんですよ。私がめちゃくちゃ失敗した時もすごく笑ってくれる(笑)。
関根 失敗じゃなくて、ルリカちゃんは動きが面白いんです。で、まり菜が個性的なしぐさや踊りでそれを表現しているのを見て、その時は一番笑っていたかもしれない(笑)。
堀内 今回のミュージカルは、キャストの個性をすごく尊重してつくっていただいた感覚がありますね。役を生きる気持ちは前提として、自分自身に近付けて表現する部分もありました。
役柄とキャストに共通する部分も
――お互いの役柄について教えてください。
関根 まり菜が演じるルリカちゃんは、明るくて人懐っこくて甘えん坊で、自然と周りに人が集まってくるような女の子です。とにかくパワーがあって、ルリカちゃんが真っすぐ一生懸命に頑張る姿に、みんなの気持ちも乗っかっていく。それは、まり菜も同じなんです。誰よりも一生懸命に取り組むまり菜の姿を見て、みんな「ついて行きたい」と思うんですよね。
堀内 うれしい(笑)。
関根 それとルリカちゃんは、ラブライブ!シリーズ王道の「ザ・主人公」。ルリカちゃんの明るさでみんなも明るくなれるし、見ている方もきっと元気をもらえると思います。物語のキーである「約束」をすごく大切にする子なので、そこにあるルリカちゃんの思いに注目してほしいですね。
堀内 ルリカちゃんの気持ちをめちゃくちゃくみ取っていてくれて、うれしいです。生の舞台ってチームワークが大切で、発信し続けても受け止めてくれる人がいなければ成立しないじゃないですか。だけど優那は、ルリカちゃんとアンズちゃんの関係性も含めて、ちゃんと受け止めてくれていて。本当に、アンズちゃんを演じるのが優那でよかったなって思います。
関根 あはは(笑)。
堀内 アンズちゃんは、いろいろな葛藤を抱えている子なのですが、その分、心の根っこが本当に優しいんです。一人一人の良いところを見つけるのが上手で、みんなをつなげてくれる存在。そして、「歌うことが好き」という強い思いを持っている子です。ストーリーが始まって、最初にスポットが当たるのがアンズちゃんなので、アンズちゃんの「好き」という気持ちが輝く瞬間を皆さんに見届けてほしいですね。
関根 アンズちゃんがルリカちゃんと出会って変わっていく時の気持ちは、共感しやすいと思うので、たくさんの人に楽しんでいただけたらうれしいです。アンズちゃんが成長していく過程を見せるという点は、演じる上で大切にしていますね。
――改めて本作の見どころは?
関根 やっぱり、個性豊かな登場人物たちのかわいらしさ。そのパワーを生で受け取っていただけることがミュージカルの一番の魅力だと思うので、ミュージカルと「ラブライブ!」が合わさった時の爆発力が見どころです。
堀内 確かに。スクールアイドルって、本当に背中を押してくれる存在だと思うんです。特別な何かを持っていなくても、やりたい気持ちがあればできるんだって、諦めなくてもいいんだなって思える。私にとってもそういう存在です。それから、ルリカちゃんとユズハちゃん(浅井七海)の、幼なじみの愛が物語の中でいいスパイスになっていて、「ラブライブ!」らしい青春を感じられるポイントだと思います。
ミュージカルならではの面白さ
――スクールアイドルがミュージカルで表現されることの面白さは?
関根 歌に乗せて心情を伝えるところでしょうか。セリフとはまた伝わる重みが違うと、稽古場でもみんなで話しています。今回、本当に幅広いジャンルの歌を歌っていて、みんなで歌う曲もあれば、落ち込んで、1人で寂しくてどうしたらいいか分からないという曲もあって、まるでジェットコースターみたいで。
堀内 同じ曲を、違うシーン、違うアレンジで歌うこともあるんですけど、役の心情が変わると曲もいろんな表情を見せるんですよね。それは、ミュージカルならではの面白さだと思います。
関根 曲も歌詞も表現の仕方もすごくストレートなので、より心に入ってきやすいというのは、演じながら感じています。演じる側としても、伝えたくなる、届けたくなる言葉がすごく多いんですよね。そこは、ラブライブ!シリーズのミュージカルらしいと思いました。
堀内 うんうん。それから、カーテンコールでは皆さんがペンライトを振って楽しめるステージがあるのですが、そこを含めてすべてが終わるまで、私はルリカちゃんとしてステージに立っているんです。そういった、徹底して作品を作りこむところに「ラブライブ!」らしさを感じます。ほかにも、理事長役の岡村さやかさんと蒼乃夕妃さんが影ナレを担当していたりと、細かな部分にまで愛を込めて皆さんにお届けするという作品との向き合い方は、こだわりを感じたポイントですね。
(撮影/中村嘉昭、ヘアメイク/Ai)