LiSAが約2年ぶりのニューアルバム『LANDER』を発表。ソロデビュー10周年で、数々の記録を塗り替えた『炎』以降のめざましい活躍も記憶に新しいが、ABEMA・テレビ朝日「FIFAワールドカップ カタール2022」の番組公式テーマソング『一斉ノ喝采』まで全14曲を収録した新作をどのように作っていったのか。前後編のロングインタビューでお届けしていく。
――2022年4月までの1年間、ライブツアーやミニアルバム発売などソロデビュー10周年を駆け抜けたLiSA。「自分が想像していなかったような、誰も発見できなかったような、誰もたどり着けていないような1年になった感じました」と話す、そんな彼女の今の気持ちを表した“着陸船”の意味を持つ11月16日発売の6thアルバム『LANDER』は、2022年だからこそのLiSAのロック魂が詰まった1枚となっている。
今回のアルバムは春頃から制作を始めたのですが、10周年ではソロデビューしてからの10年を振り返る機会が多くあり、楽曲がたくさんの人に愛されたことや『紅白歌合戦』への出場をはじめ様々な場所で歌う機会をいただいたことなど、「アーティストとして自分が想像していなかったステージまで連れてきていただいたな」と感じていました。
そのうえで、新しく進むときに新型コロナウイルスで変わった世界も含めて、「新しいプラネットで新しい1年を始めていく」、そんな感覚があって。新しい星に「あらっ? たどり着いたな」という気持ちだったので、『LANDER』というタイトルをつけました。
4月の日本武道館でのライブ(『LiVE is Smile Always~Eve&Birth~「the Birth」at NIPPON BUDOKAN』)は、10周年の締めくくりで11周年を迎えたお祝いだったんですけど、そこで新しい「1」というのをずっと考えていて。新しい1歩目、私は今どこにいるんだろうと足元を見たときに、誰も来たことのない場所で新しい始まりだなと思ったので、それをアルバムから感じてもらえたらうれしいです。
それぞれ役割を持ったシングル9曲
――アルバムには2020年10月発売の『炎』の他、『テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』のオープニングテーマ&エンディングテーマを飾った『明け星』と『白銀』、テレビドラマ主題歌となった『HADASHi NO STEP』などシングルを多数収録している。
『炎』からのシングル曲を並べると既に曲数があって(笑)、そこからアルバムのために曲を作っていくのはけっこう大変でした。新曲は自分自身が思う『LANDER』に足りないものを埋めていく作業というか、自分勝手に自由に、好きなように、好きな人たちと作っていく――素直な気持ちを込めていけば、12年目のアルバムとして出来上がっていくんじゃないかなと思いながら、1曲1曲に向き合いながら作ったアルバムになりました。
例えば最初のシングルは『炎』(7曲目、M7)だったのですが、この楽曲は2年前にリリースしてからたくさんのいろんな景色を見せてくれた楽曲で。(作詞・作曲の)梶浦由記さんとの1つの到達点、大きな山を作れた感覚があり、自分の表現がすごく広がった1曲でもありました。そこから『明け星』(M5)、『白銀』(M6)と梶浦さんの楽曲が続くなかで、『炎』で新しく進んだ1歩がさらに広がっていくような感覚がありました。
『HADASHi NO STEP』(M9)はドラマの主題歌ということもあって、ポップで、等身大の大人の恋愛、というテーマに向き合った楽曲。『往け』(M1)や『dawn』(M13)は、アニメ作品の主題歌として今までやってきた「作品ときちんと向き合う」ことを大切にしました。その中でも『往け』ではYOASOBIのコンポーザーとしても活動するAyaseさんが作る繊細なメロディーが絡み合っていくなかで、楽器も自分の歌も、悩みや不安がグルグルしているような感情も、全て振り払って前に進んでいくような力強さの表現に挑戦できたなと思っています。
そうやってやれることを広げていって、すごくいろんなことに挑戦させてもらった2年でしたし、自分自身でもLiSAというイメージがすごく広がった時間でしたので、その経験がすごく生きたアルバムになったなと思っています。
アルバムの軸になった『NEW ME』と『一斉ノ喝采』
新曲で軸になったのは4月に日本武道館のライブで初披露した『NEW ME』(M14)と『一斉ノ喝采』(M2)です。
『NEW ME』は、アルバムの曲として作ろうと思ったわけではなく、これから始まる11周年のお祝いにライブで聴いてもらえるような楽曲が新曲で作れたらいいな、という気持ちから作りました。その時点では、先のライブもリリースの約束も何もなかったのですが、私が届けることができるメッセージみたいなものを--未来からの手紙みたいなイメージでした。
ライブのときは、本当に“最後の手紙”のような気持ちで歌ったんです。「この手紙を持ってみんな頑張れよ!」って(笑)。結果、時がたってアルバムのなかの曲として1つの軸となってくれたときに、どちらかというと新しくたどり着いたプラネットからみんなをいつでも見守ってずっと歌っているような感覚というか、一緒に進んでいくためのファンのみんなに対するメッセージみたいなものがすごく詰められた曲になったなと。
何というか…この楽曲は私自身がタイアップ先だと思ったんです。10周年最後のライブの日に12年目の私は何を歌っていたいのかということを想像しながら、ライブから伝えられるものや、私自身が素直な言葉で、ひと言で伝わるような言葉っていうのはすごく意識して作詞しました。ライブを作りながら作っていった楽曲でもあったので、軸が固まるまではきちんと時間がかかりましたね(笑)。
――『一斉ノ喝采』は「FIFA ワールドカップ カタール 2022」のABEMA・テレビ朝日の番組公式テーマソングになっている。サッカーというスポーツと自身のライブが重なる瞬間を曲に込めたという。
自分が今、ステージに立ち続けられるのは、自分自身も周りも裏切らずにこれまで頑張ってきたからだと思うんです。いいライブを超えていきたい、昨日からはみ出していきたい、昨日よりもいいプレーをしたいという強い気持ちがすごく大事なことだなって。それはサッカーも自分自身も、そして私たちの人生も同じだと思うんです。だから、昨日よりもいい日にしていくということを力強く歌っていく楽曲になっています。
手拍子とか掛け声とか歌ってもらう場所がたくさんあるんですよ。やっぱりライブでみんなの声が聞きたいとすごく感じたんです。コロナ禍になってから数回ツアーをしたんですけど、みんなの合唱だったり一斉に喝采したりする日を私自身もすごく夢見ているところがあって。「勝ったぞ!」「優勝したぞー!」っていうときくらい喝采できる世界になっているといいなあという希望も込めて作りました。この『NEW ME』と『一斉ノ喝采』ができたときに、アルバムの軸が固まりました。
後編に続く