公開当時、全米歴代3位という興行収入を上げた映画『ブラックパンサー』。その続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が11月11日(金)に公開される。大ヒット作の続編だが、前作で主人公ティ・チャラ(ブラックパンサー)を演じたチャドウィック・ボーズマンが2020年に死去したことで、新たなブラックパンサーは誰なのかという点でも話題になっている。この映画で前作に続き、ティ・チャラの妹シュリの日本版声優を務めるのが、ももいろクローバーZの百田夏菜子さん。女優や声優としても活躍する彼女だが、本作ならではの難しさがあったと言う。
――前作の公開が18年。間隔を空けて同じ役を演じることになりました。
百田 過去の作品でも、間隔を空けて同じ役というのはやったことがなかったので、どうなるのかという不安は正直、ありました。(シュリを演じる俳優の)レティーシャ・ライトさんも4年たっていて、彼女の中でもきっと変化があるだろうなとも思いましたし。まず前作を見直して、ライトさんの変化を想像しながら、現場に飛び込みました。
ただ映画が始まった途端、前作とは空気が違うなというのがもう一瞬で分かったんです。もちろんベースの部分はつながっているんですけど、この4年間を作品自体でも感じさせる内容だったので、そこは新鮮な気持ちでやらせてもらいました。
――公開されたポスターではシュリが中央に来ていました。それだけ役割も重要になっているということでしょうか。
百田 シュリ自体が重要な人物であることは確かです。だから、演じていても、それだけの重圧というか、エネルギーが必要になる。「まずい、ついていかないと」って思う瞬間がたくさんありました。
――前作のシュリは、兄を応援する明るい妹というキャラクターでしたよね。
百田 はい。実際、前作はそういうキャラクターを意識して演じていました。でも今回は、一目見たときからシュリや周りの仲間たちの表情や雰囲気がまったく違うんです。シュリを中心としたいろいろな人たちの成長も見られるので、そこが新しい点だと思います。ただ感情についていくのが難しくて。
――先ほどの「まずい、ついていかないと」という点ですね。
百田 実際に演技をしている俳優さんの吹き替えなので、彼女の表情を見て、セリフを聞いて、「この表情はどんな思いの表情なんだろう」「この表情でこのセリフを言うってことは、こう思っているのかな」と想像しなくてはいけない。本人に「どんな思いでここを演じていたんですか」と聞けるわけでもないので。「この流れだったらこう思うよな」「こういう状態で今、このセリフを話しているのかな」と想像するのがすごく難しかった。
――百田さんは劇場アニメ『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』や『魔女見習いをさがして』でも声優をしていますが、それとは違いますか?
百田 アニメーションの声とは、また全然違いますね。実際のその方が演じているものにあてるというのは、別の世界に思えるくらい、本当に違います。
――実際に声優をしてみたから分かる、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の見どころは?
百田 アクションシーンは本当にすごく壮大。海と陸と空でのアクションがどれも大迫力です。だからこそ私も大変な部分ではあったんですけど、その迫力が伝わればいいなと思います。あとは誰がブラックパンサーになるのかも、多くの人たちが気になっている注目ポイントですよね。
4年間で成長したと思う点は…
――前作公開(18年3月1日)から4年間。百田さんが自分が成長したなと思う点は?
百田 4年前はちょうど結成10周年を迎える頃で、ももクロが4人になったばかりだったんですよ。
――4人になったももクロは、当時行っていた全都道府県ツアーのために、急きょ振り付けや歌い分けを4人体制につくり直したんですよね。さらに初の東京ドーム2デイズに挑むという時期でした。
百田 もう必死でした(笑)。10周年なので、普通だったら10年やってきた余裕みたいなのがちょっとあるのかなって思ったんですけど、全然余裕なんてなくて。新たにつくるもの、つくらなければならないものに追われていた時期でした。あれから4年かあ。何が成長したかなあ……。
ちょっと前にドラマの主演をやらせていただいたんです(22年6月から7月にかけてフジテレビ系で放送された『僕の大好きな妻!』)。ちょうどドラマの撮影と自分たちのツアーが重なっていて。
以前、NHKの朝ドラ(16年のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』)に出演していたとき、撮影期間が長かったので同じようなことが何回かあって。そのときにうまくついていけない自分がいて。何をやっているのか、わけが分からなくなってしまったんです。その経験が今回すごく生きて、自分の中での向き合い方が分かった気がしました。以前は、自分の引き出しに入っているものをいつ出せばいいかが分からなかった。今日は何を出して、何をしまえばいいかが分からず、全部引き出しを開けて、部屋が汚くなってしまったみたいな。それが今回は少しは整理整頓された部屋でいられたような気がします。これは変わったなと実感しました。
って、連ドラからだと4年じゃなくて6年ですね(笑)。
新しい挑戦で感じる怖さも全部経験に
――ももクロは12月24日、25日のクリスマスライブ、大みそかの年越しライブ、そして来年4月22日、23日には広島県福山市とタッグを組んだ春のライブと続きます。今回のような声優の仕事がももクロの活動に生きたという経験は?
百田 具体的には思いつかないけど、違う色を付けられる引き出しが増えている可能性はあります。だから、これから生きる可能性はあるかも。やっぱり新しいものに出合ったときは、そうですね。
――そんなにすぐに役立つものではない?
百田 ないですね。どこでそれがマッチするかというのは分からないので。でも経験というものがすごく生きるとき、経験が何かにつながる瞬間は、たくさん経験してはいいます。声の話じゃなくても、例えば緊張感にしても、「あそこであんなに緊張したから今は大丈夫」と思える瞬間があったり。
――ももクロの皆さんは百戦錬磨だから、もう緊張しないのかと思ってました。
百田 ゴリゴリに緊張しますよ(笑)。今でも緊張するのは変わらないです。でも、その緊張との向き合い方はある程度分かってきた。それがあるだけでやっぱり全然違うし、そんな自分とどう向き合うかの経験はあるという感じ。
新しい仕事に挑戦するとき、違うところに飛び込むときの怖さとか、そういうものも全部経験になってきます。それは過去にももクロでいっぱい経験しているからこそ、今回のような、飛び込むときに生きてきたりもしますし、だからこそこういう仕事からももクロに生きることも未来にはあると思います。
――ももクロは基本的に飛び込む人たちですものね。
百田 そうなんですよね、本当に。昔は怖いもの知らずだったんですけど、今は怖いものを知っているので余計に、嫌と言ったらあれですけど……。知らないほうが良かったとは言わないですけど、また全然気持ちが違うというか。昔の自分たちとか見ていると怖いですもの。よくこんなこと言えるなって。でも、それが何かとつながってくるかもしれないから、分からないですよねえ。
――最後に、百田さんが日本版声優を務めたシュリは天才発明家です。百田さんがももクロのライブに役立つ発明をするとしたら?
百田 えーっ、何だろう? でも入場が超スムーズになるチケットとか良くないですか。何も出さなくてもスムーズに入場できる。そんな身軽になれる発明があるといいなあ。
手ぶらで駅の改札から会場への入場、さらにライブの準備までができるような未来っていいと思いません? みんなが安全に、楽しく、身軽に、もっとラフに来られる便利なものが発明できたらいいな。モノノフさん(ももクロのファンたちの愛称)たちは私たちのグッズや服を身につけてきてくれますけど、ボタン1つで「ももクロ戦闘態勢完了!」みたいに着替えられるスーツとか(笑)。
(写真/中川容邦 ヘアメイク/横山藍[KIND]、スタイリスト/関 志保美)
監督:ライアン・クーグラー
出演:レティーシャ・ライト
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
11月11日(金) 全国劇場にて公開