※日経エンタテインメント! 2022年11月号の記事を加筆、再構成
米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたコラムをもとに、愛にまつわる物語を描いたAmazon Original『モダンラブ』。2019年に米国で製作されて以来、世界中で人気を集めているが、この日本版『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』がPrime Videoで10月21日から世界同時独占配信になる。7つのオムニバスドラマのうち、「私が既婚者と寝て学んだこと」で主演を務めるのが榮倉奈々だ。
舞台を東京に移して描かれるのは7つの物語。マッチングアプリでの出会いや、仕事と子育ての両立に奮闘する女性の母性、セックスレス、シニアラブにリモートで芽生えた恋愛など、生活や価値観が多様化してきた現代だからこそ、リアルに感じられる設定を通して多様な愛の形に触れていく。
7つのオムニバスドラマのうち、エピソード2「私が既婚者と寝て学んだこと」で榮倉が演じるのは、セックスレスが原因で夫と別れた大学教員の加奈。彼女はマッチングアプリで知り合った男性との関係を重ねていく中で、夫との関係を振り返り自分にとって何が大事だったのか、自分と向き合うことになる。
「インパクトがあるタイトルなので、聞いたときは驚きました。“セックスレス”という言葉自体、日常の会話でも聞き慣れない。でも、加奈は相手の男性にズバズバと夫婦間のセックスについて質問する。好奇心旺盛というか……。役柄も題材も初めてで、最初は戸惑いました。初めてといえば大学教員という役も、ついこの間までは席に座っている学生側だったので、その点も新鮮です」
第2話を監督したのは、“恋愛映画の名手”廣木隆一監督。榮倉が日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した『余命1ヶ月の花嫁』(2009年)以来、『だいじょうぶ3組』(13年)、『娚の一生』(15年)などでタッグを組んできた。
「廣木監督のおかげで、私は台本の読み方が大きく変わったと思います。現場で『今のセリフはどういう気持ちで言っているの?』と監督から聞かれると、最初の頃は萎縮してしまっていました。現場での監督の言葉も、当時は意味がすぐに分からなくて…。何年後かに分かったこともあれば、いまだに分かっていないこともたくさんあります。ただ今回は、こういう気持ちで言っていますと答えることもできました。私も大人になったのかなと思います(笑)」
信頼する廣木監督との久しぶりの現場をこう振り返る。なかでも印象に残ったのは、リハーサル初日に監督から言われた言葉だった。
「『今回は舞台を撮りたいんだ』とお話がありました。つまり、セリフで物語を進めるのではなくて、一連の流れで見せたいというような話をされたんです。なので、自然体を意識しました。ラストシーンは雨が降っているのですが、そのシーンもカットを割らずに長回しをして撮っています。監督から“OK!”と言ってもらえたときは、本当に幸せでした」
久しぶりといえば、加奈の元夫・圭介役の柄本佑との共演も。「佑さんとは『檸檬のころ』(07年)という映画以来です。とても尊敬できる役者さんです。撮影の合間には互いの子どもの話をしたりしたのですが、そういう変化も面白かったです」
見終えたら優しい気持ちになれるはず
自身もライフステージが変わっていく中で役者としての変化があったという。
「子どもを産んでからは変わったかもしれません。物理的に今まで通りの生活はできず、どうしても距離を取らなければならない場面も出てきます。ただ、距離を取らなければならなかったからこそ見えるものもありました。仕事に対して、客観視できるようになったことで視野が広がったように感じます」
もともと米国版『モダンラブ』が好きで、そんなお気に入りの作品の日本版で初めての配信作品に挑んだ。10月21日からの世界同時配信に関して、「プレッシャーはありました」という彼女だが、楽しみもあるという。
「これまで海外へ仕事で行ったとき、現地で『どんな作品に出ているの?』と聞かれても、見てもらえる機会が少ないことがもどかしかったので……。海外の人たちにも見てもらえることは、自分のプロフィールになると思います。世界配信ということで、東京の街を流れる川の景色や雰囲気など、廣木監督らしい、美しく粋な描写が満載なのも見どころです。お話、映像、どこが見る人の琴線に触れるかは分からないけれど、見終わった後、優しい気持ちになれると思います」。