※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

浪江女子発組合(JA浪江)は、東日本大震災後の復興が続く福島県浪江町をファンと一緒に訪れ、街の魅力を広めたいと始まったプロジェクトだ。活動を始めたときの思いやコンセプト、そして1stアルバムの聴きどころを、佐々木彩夏をはじめとしたメンバー8人に聞いた。

浪江女子発組合(なみえじょしはつくみあい)・最前列左から高井千帆、佐々木彩夏、愛来、中列左から鈴木萌花、内藤るな、後列左から小島はな、播磨かな、市川優月
浪江女子発組合
なみえじょしはつくみあい・最前列左から高井千帆、佐々木彩夏、愛来、中列左から鈴木萌花、内藤るな、後列左から小島はな、播磨かな、市川優月

――ももいろクローバーZが2019年3月に福島県・浪江町を訪ねたことがきっかけで、同年11月から始動したアイドルグループ、浪江女子発組合(JA浪江)。浪江町で「定期大会」と呼ばれるイベントを開催するなど、浪江を知って訪れる人を増やし、町の魅力を全国に発信するのが使命の1つ。総合プロデューサーも務める佐々木彩夏を筆頭に、AMEFURASSHIやB.O.L.Tなどのメンバーが、グループを兼任しながら活動を続けてきた。

佐々木彩夏 浪江町の方からお声掛けをいただいたときは、どんな感じになるのかなという、ドキドキとワクワク両方がありました。JA浪江の活動には震災という重いテーマが切り離せないし、アイドルと震災って結びつきにくいと思うんです。浪江町の出身ではない私たちに何ができるか、やってみないと分からないことばかりでした。ただ、ファンを巻き込んで「みんなで一緒に浪江町へ行こう」というコンセプトは面白いなって。ももクロではできないことを後輩たちとできるし。

市川優月 あーりん(佐々木)と一緒のグループだと聞いて驚きました。定期大会で、小さい子たちがJA浪江に似せた服を作って着てきてくれてうれしかったです。私が憧れたみたいに、浪江町の皆さんにも少しずつアイドルを好きになってもらえたらと思います。

高井千帆 私もあーりんと一緒に、しかもプロデュースしてもらえると聞いて「いえーい!」ってアガリました(笑)。清楚なコンセプトは個人的に好きなのでうれしかったのですが、実際にヒールを履いて踊るとまるで生まれたての小鹿みたいに脚がガクガクに(笑)。

――コロナ禍で定期大会が思うように開催できないなか、オンラインフェスへ参加し、YouTube公式チャンネルも開設。21年7月、新たに播磨かなが加入し、8人体制へ強化した。同年12月に東京・渋谷で「2021年JA浪江 組合総会 あいのりきっぷ」を開催するなど、活動域を着実に広げ、2月23日に1stアルバム『花咲む』をリリース。楽曲には浪江町との絆や彼女たちの願いが込められている。

定期大会と呼ばれる浪江町でのライブは市役所前の広場や体育館を使用する。ライブを楽しんだ後、復興が進む浪江町の施設を訪れるファンも多い(写真/塚田亮平)
定期大会と呼ばれる浪江町でのライブは市役所前の広場や体育館を使用する。ライブを楽しんだ後、復興が進む浪江町の施設を訪れるファンも多い(写真/塚田亮平)

鈴木萌花 グループお披露目で歌った『なみえのわ』は、浪江町の空や海の青、町の花であるコスモスや桜などのピンクの情景が歌詞に出てきます。アルバムもJA浪江入門編だと思いますが、この曲は特にそうだなって。オンラインで歌うときも、浪江町の情景やみなさんの顔が浮かぶんです。

愛来 『つながる、ウンメイ』は、運命や絆がテーマ。第1回定期大会当日は私の誕生日で、町の皆さんも初めてのイベントで大変だったと思うのに、サプライズでお祝いしてくださって。JA浪江で活動していると、人の温かさを感じますし歌詞にもそれを感じます。

内藤るな 『いつかまた浪江の空を』は浪江町出身のシンガーソングライターの牛来(ごらい)美佳さんが作った曲のカバーです。被災されたご自身の経験と思いを知ってほしいという思いから作られたと聞いたので、歌詞を重く受け止めていましたが、ライブやレコーディングでは、明るさを意識して歌うようになりました。この何年間で浪江町が前に進んできて、私たちと浪江の方々が笑顔で歌える曲になったのかなと思うと感慨深いです。

播磨かな 『ミライイロの花』は浪江町のお祭りを元にしていて、未来を感じさせる明るいところが素敵だなと。サビで一緒に手拍子ができるので、ライブでも一体感を感じてもらえる曲だと思います。

小島はな 『それぞれのハタ』も浪江のお祭りがテーマ。JA浪江には珍しくアップテンポで、元気が出る曲です。簡単な振りもあるので、皆さんと楽しめたらいいなって。これまでのアイドル人生で、あまり落ちサビを歌ったことがなく、この曲で歌わせてもらえて…すごくうれしくて。そこも注目してください(笑)。

佐々木 私たちの曲は、浪江のお祭りや行事にちなんでいて、どの曲も毎回浪江町の方に歌詞を確認していただいています。衣装の裾も長めで、ミドルテンポの曲が多いのも、アイドルになじみの少ない浪江の方々も安心して見られるようにと、地元の方々と話して決めたコンセプトです。各グループのファンの方は普段見られない推しの一面を見てもらえるんじゃないかな。浪江の皆さんは温かく迎えてくださるので、福島出身者がいないのを逆手に取って、ファンの皆さんも私たちと同じように気軽に参加できる雰囲気を作りたいなって。活動域や見せ方を広げながら、浪江町に寄り添えるグループになりたいです。

1stアルバム『花咲む』

既発配信シングル曲『なみえのわ』『あるけあるけ』『ミライイロの花』『つながる、ウンメイ』『またキミと。』ほか、浪江町にゆかりあるエピソードが盛り込まれた楽曲を収めた。温かでエバーグリーンなポップソングが並ぶ。キングレコード/3300円

(写真/藤本和史)

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