※日経エンタテインメント! 2022年1月号の記事を再構成

2020年12月まで放送された『チェリまほ』で主演し、注目度が急上昇した赤楚衛二。勢いは衰えることなく21年に入り、『かのきれ』『SUPER RICH』とドラマに連投。雑誌などのメディアへの登場回数も飛躍的に増えた。俳優として変化の多かった1年。今はどんな景色が見えているのか。21年に取り組んだ作品や人との出会いを振り返りながら、じっくり語ってもらった。

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――深夜枠での放送ながらSNSを中心に盛り上がりを見せ、ギャラクシー賞の「マイベストTV賞」グランプリや、ATP賞テレビグランプリ「ドラマ部門」優秀賞を受賞するなど大きな盛り上がりを見せた『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(20年、通称『チェリまほ』)。このドラマで主演した赤楚衛二は、2021年に最も注目度が上がった俳優の1人に。7月期の『彼女はキレイだった』(通称『かのきれ』)に続き、10月期には『SUPER RICH』(フジ系)に出演した。仕事もプライベートも怒涛の展開を見せる、お金に振り回される女性社長の主人公の氷河衛を江口のりこが演じ、赤楚は貧乏学生時代に衛に出会い、彼女の人生に影響を与える春野優にふんした。

赤楚衛二氏(以下、赤楚) 優のキャラクターは割と難しくて。序盤は素直でかわいらしい“子犬系”だったけど、1年間留学して自信がついたり、社会にもまれることで、自分の意見をはっきり言うようになったり。見た目もちょっと変わって、後半に向けてさらに成長していくんですね。

 しかも展開が速くて、1秒後には全然違う状況に飛んだり。監督によっても、優の持つ色が変わっていくので、根本にある衛さんが好きという思いや、衛さんのために動きたい、幸せにしてあげたいというところをベースに、あとは自分の思う“春野優像”をやってみたうえで、周りのお芝居と合わせたり、演出で調整していきました。

 オリジナル作品なので、まっさらな状態から役を作れるというのは醍醐味の1つだなと感じてました。例えばマンガ原作だったら、キャラクターにイメージがあるので、それを壊さないようにと考えますけど、オリジナルであればある程度自由にできる。あとは、役のことを自分が1番知っているという自信が持てます。演じるのは僕で、「このときはこういう感情なんです」と説明すると、「じゃあそっちでいこうか」となったりすることも多いので。

 江口さんとは初共演なんですが、その時々の状況によってお芝居が変化していくんです。発見が多くて、僕から投げ掛けても返ってくるものが新鮮。頭の中をのぞきたくなるほど楽しい。江口さんの発する言葉って自然だから、セリフじゃなくアドリブっぽく見える瞬間もあると思うんですが、台本通りなんですよ。江口さんが表現されると、何倍も面白くなる。絶妙な間や声のトーンに、関西の言葉も相まって、江口さんならではの人を引き付ける表現になっているんだなと思います。

――『SUPER RICH』では、『チェリまほ』のコンビとなる町田啓太との再共演にも、熱視線が注がれた。

赤楚 『SUPER RICH』も町田君と共演できて、役への向き合い方だったり、プロフェッショナルな姿勢は改めてすごいなと。町田君が演じる空とは、衛さんを巡って優は対立関係にあったりしますが、やっぱりお芝居がやりやすいし、心強い味方だと感じていました。

 もしかしたら、『チェリまほ』を見てくれた方は、「もう別作品で共演するの?」と思った方もいるかもしれませんが、僕としては心から信頼している方と、また一緒に物作りができる楽しみのほうが強くて。だから、共演を知ったときは純粋にうれしかったです。『チェリまほ』の安達と黒沢、『SUPER RICH』の優と空があって、また次、全然違う役でガッツリ関われたらいいなとも思っています。

――7月期の『かのきれ』、10月期の『SUPER RICH』と連ドラが続いたのに加え、21年8月には映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が公開。これに伴い、PR活動としてバラエティへの出演機会も増加した。

赤楚 バラエティはまだ慣れないです。準備ができないからドキドキしますし。その場のアドリブ力でしか勝負ができないのでコワイです。コメントを振られても、日によっては全然うまく返せなくて落ち込んだり。せっかく出させていただくからには、少しでも面白いことを言いたいんですが。

 でも、好きは好きなんですよ。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』公開のタイミングでは、『しゃべくり007』(日テレ系)に呼んでいただけたんです。学生時代からずっと見ていたので、芸人さんに「うまく飲み込まれたい」「振り回されたい」と思いながら収録に臨みました。結局、みなさんに思い切りいじり倒されましたが(笑)、ものすごく楽しかったです。

――メディア露出も増え、重要な役柄にも起用されるように。人気者になった実感は?

赤楚 いや…人気の実感はあまりないです。SNSでコメントをいただいたり、最近は外で声を掛けられることも増えてきて、うれしいなと思いつつ。でもやっぱり、まだまだもっと上に行きたいのでより頑張らないといけないという気持ちのほうが強いです。

 作品選びはマネジャーさんにお任せしていますが、ご縁でつながったケースが多いんですね。『チェリまほ』プロデューサーの本間(かなみ)さんは、『わたし旦那をシェアしてた』(19年)を見てくださっていたり、『かのきれ』は『探偵・由利麟太郎』(20年)で共通のスタッフさんにお世話になっていて、『SUPER RICH』は先に『監察医 朝顔』でプロデューサーの金城(綾香)さんとご一緒していたりとか。運やタイミングもあると思いますが、人とのつながりでここまで来られた感じです。

町田君をはじめ“再会”がうれしい

赤楚 最近は“再会”の機会も増えて。11月に放送された『世にも奇妙な物語』では、16年の舞台『露出狂』で一緒だった坂口涼太郎君と共演できたんですよ。それこそ、町田君もそうですし、スタッフさんとの再会もめちゃくちゃうれしい。半年でも数年後でも、当時と同じものは作れないわけで、お互いに変化した状態で新しいものを作れるというのは、何物にも代えがたいです。

 成長できたこととしては、監督に自分の意見を伝える頻度が増えたというのはあります。きちんと伝えるための言葉って難しい、というところの壁にぶち当たりつつ。

 21年は、精神面で安定したかもしれません。「いいパフォーマンスができるか」とか、「嫌われないか」とか、「意見を言っていいんだろうか」とか、ずっと不安と戦ってきていて、今もそうなんですけど。自分がやってきたものに対して「良かったよ」と言ってもらえる機会が増えて、それがすごく糧になっています。不安が薄くなるくらいの経験を積ませていただけたとも思いますし、自己肯定感も生まれてきて。

 でもまだ俳優歴6年なので、未知なものばかり。エンタテインメントから社会派まで、いろんな作品と役に出合えたら。目標はあえて立てないようにしているんですが、強いて言うなら、渋谷の巨大ポスターにドーンと載りたい(笑)。もちろん、NHKの朝ドラや大河ドラマとかにもいつか挑戦したいです。

 22年は、議員秘書と二世議員の世界をシニカルに描いた映画『決戦は日曜日』が1月に公開されて、格差社会の闇を描く復讐サスペンスの『ヒル』(WOWOWプライム。3月4日から)の放送もあるので、また違った表現を楽しみにしていただけたら。同時に、赤楚衛二という人間を表せるような、強さだったり、ちょっとしたわがままみたいなものが欲しいので、そこを目標にできたらと思っています。

赤楚衛二
あかそ・えいじ 1994年3月1日生まれ、愛知県出身。15年に俳優デビュー。『仮面ライダービルド』(17年)、『わたし旦那をシェアしてた』(19年)などのほか、主演作に単発ドラマ『パニックコマーシャル』(19年)、連ドラ『ねぇ先生、知らないの?』(19年)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(20年)、映画『思い、思われ、ふり、ふられ』(20年)など。22年は映画『決戦は日曜日』が公開。3月4日から放送のWOWOWオリジナルドラマ『ヒル』Season1で主演。人気ドラマを映画化した『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』は4月8日公開。

(文/内藤悦子、写真/橋本勝美、スタイリスト/壽村太一、ヘアメイク/廣瀬瑠美)

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