広告の主戦場がネットに移るに従い、コンテンツの最適化や制作のスピードアップが求められるようになった。これに伴い、外部に発注することが多かった企業のクリエイティブ制作を内製化する動きが強まっている。「リチカ クラウドスタジオ」はそんな動きを後押しする、デジタル広告を簡単に制作できるクラウドサービスだ。

ネット広告では媒体ごとに動画のサイズやアスペクト比(縦横比)が異なる。同じ素材を使っても、それぞれの媒体に合わせてトリミングやレイアウトを作り分ける必要がある。「リチカ クラウドスタジオ」はこの作り分けを自動でしてくれる
ネット広告では媒体ごとに動画のサイズやアスペクト比(縦横比)が異なる。同じ素材を使っても、それぞれの媒体に合わせてトリミングやレイアウトを作り分ける必要がある。「リチカ クラウドスタジオ」はこの作り分けを自動でしてくれる
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 リチカ(東京・渋谷)が運営するクラウドサービス「リチカ クラウドスタジオ」は、クリエイティブのスキルがない初心者でも、簡単にデジタル広告を制作できるツールだ。素材やテキストを入力するだけで、高品質の動画や静止画を作ることができる。すでに大手企業を中心に400社以上が導入しており、毎月2万5000本もの広告を送り出している。ネット広告はもとより、街頭の大型スクリーンや電車内の液晶画面、野球場のデジタルサイネージなど、さまざまなメディアで活用できる。2021年9月には投資家を引受先とした第三者割当増資で約8億円の資金調達を実施するなど、投資先としても注目と期待を集めているサービスだ。

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 「企業が従来外部に発注していたクリエイティブを内製化する動きが強まっている」と同社代表取締役の松尾幸治氏は言う。消費者のテレビ離れが進み、スマートフォンなどでコンテンツを視聴し、SNSなどで情報を得るようになった今では、1本のテレビCMで幅広いユーザーにリーチすることは難しくなってきた。

コンテンツの最適化が必要な時代

 しかも、テレビとSNSでは視聴態度や目的が異なるため、テレビ用のCMをそのままSNSに配信しても期待する結果を得られるとは限らない。配信されるメディアによって視聴者の特性はそれぞれ異なり、視聴する目的も異なる。そのため、YouTube向け、Facebook向けなど、それぞれに合わせてデザインや構成など、コンテンツを最適化する必要がある。

 細分化された集団をそれぞれターゲティングし、コンテンツを作り分けるとなると、制作数はテレビ時代より大幅に増え、しかもスピードも求められる。長い時間と大きな予算をかけるテレビCMのやり方は通用しない。内製化によって、目的や意図を反映しやすく、迅速で小回りがきくクリエイティブ制作体制をつくることができる。とはいえ、社内でコンテンツを作れる企業ばかりではない。クラウドスタジオはクリエイティブのノウハウを肩代わりしてくれるというわけだ。

 「コンテンツの最適化をすると、クリエイターの作業量は大幅に増える。もはや人がすべてを作るのは限界ではないか」と松尾氏は指摘する。例えばYouTubeの動画は横長で、Facebookは正方形など、媒体によってサイズや画面の縦横比の違いがある。同じ素材を使った動画でもそれぞれに合わせてサイズを調整する必要があるが、単に機械的に枠に当てはめるのではなく、人が判断して細部を調整しなければ質の高い仕上がりにならない。クラウドスタジオはこうした作業も自動化してくれる。

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