
デザインの力がビジネスにおいて発揮されるのは、どういうときか。IDEO共同経営者で、ベンチャーキャピタルのD4V(東京・港)を立ち上げたトム・ケリー氏と、両社の支援を受け、AI(人工知能)を核に成長を続けるエクサウィザーズ代表取締役社長の石山洸氏が語り合った。
D4Vファウンダー兼チェアマン
IDEO共同経営者
──エクサウィザーズは2021年12月、東証マザーズに上場しましたね。D4Vとの関係について教えてください。
石山洸氏(以下、石山) IDEOとトムさんに会ったのは、前職のリクルート時代です。あるプロジェクトでご一緒したことから、2014年7月の『クリエイティブ・マインドセット』の出版記念パーティーに、スピーカーの1人として呼ばれました。その後、私はリクルートを退職し、17年3月にエクサウィザーズの前身となる静岡大学発のAIベンチャー、デジタルセンセーションに転職。当時のIDEOのデザイナーの紹介もあり、D4Vの出資を受けたんです。
トム・ケリー氏(以下、ケリー) シリコンバレーでは、誰もがスタートアップにデザインが必要だと分かっています。米国のアップルやピンタレスト、エアビーアンドビーなど、成功しているスタートアップを見れば一目瞭然です。
スタートアップの成功の鍵はテクノロジーそのものより、顧客が抱える問題に対する適切なソリューションをいかに設計するか、なのです。そこにデザインの力が欠かせない。我々が5年前に1号ファンドを立ち上げたときは、デザインにあまり関心がない創業者が多かったのですが、2号ファンドの頃は創業者自らデザインを求めてくるようになりました。石山さんは初めて会ったときから、デザインの重要性を強く認識していた経営者の1人です。
“First Designer”をどう採用するか
石山 AIによるヒューマン・センタード・ケアのソリューションを開発する私たちにとって、デザインの力は不可欠です。その重要性は認識していたものの、エクサウィザーズの社員の多くは機械学習のエンジニア。そのような環境ではデザイナーの採用は難しい。そこでD4Vに相談し、IDEOのブランド力を借りることにしました。IDEOとD4Vのデザイナーが1次面接を担当し、合格した人だけがエクサウィザーズの2次面接に進むという採用プロセスにしました。こうして当社のUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)をはじめとするデザインチームを構成してきました。
ケリー このエクサウィザーズでの取り組みが、D4Vの「Startup First Designer Program」を立ち上げるきっかけとなりました。今度3回目を開催する予定ですが、エクサウィザーズのファーストデザイナーである前田俊幸さんに講師になっていただくなど、素晴らしい循環ができています。
──ファーストデザイナーを採用して以降は、順調ですか?
石山 ファーストデザイナーに続き、3人ぐらい採用できたことが大きかったですね。3人もいれば、外から見ても「エクサウィザーズにはデザインチームがある」と認識される。ファーストデザイナーの前田さんは、ピープルマネジメントを含めデザインチームのカルチャーづくりに加え、上流フェーズのコラボレーションも得意としていました。最初はユーザーリサーチなどの上流に強いデザイナーが入り、プロダクトを作るフェーズに入っていく段階で、フロントエンドのデザインをできる人材が入ってきました。デザイナーは増え続けており、今はいろいろなタイプのデザイナーが活躍しています。
エクサウィザーズ代表取締役社長
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