
多様性やジェンダーフリーといった概念に関心が集まる少し前から、メンズコスメの市場が活性化してきた。SNSでの情報拡散も後押しとなり、男性と美容の距離感は年々縮まっている。Z世代男性にとってコスメは「自分らしく生きる」ためのツールでもあるようだ。そんなメンズコスメの「メイクアップ商品市場」が盛り上がっている。
メンズコスメの市場が伸びている。富士経済(東京・中央)が2021年8月に発表したメンズコスメの市場調査結果によると、21年の市場全体は1571億円で前年比4.3%増(見込み、以下同)、化粧水や乳液などの整肌料は246億円で前年比11.3%増、洗顔料は120億円で同7.1%増と拡大している。メンズコスメの種類は多く、洗顔料や化粧水などの「スキンケア用品」、育毛剤やシャンプー、ワックスなどの「ヘアケア用品」、BBクリーム(ファンデーションと美容液などが一体化した製品)や色付きリップクリームなどの「メイク用品」がある。
近年、特に品数が増えている商品が除毛剤だという。ロフト(東京・渋谷)の商品部健康雑貨部バイヤーの廣末将太氏は、「現在、10ブランドほど展開している。10年ほど前から取り扱っているが、3~4年前から種類が増えてきた」と話す。
そもそも、男性の美容意識が高まってきたのはなぜか。そのきっかけは、Z世代の女性が求める男性像の変化が影響しているようだ。俳優の菅田将暉や横浜流星、坂口健太郎など、人気俳優は中性的な印象が強い。Z世代に人気の美容室「LIPPS(リップス)」を手掛けるレスプリ(東京・港)の取締役商品事業部長の長島幹孟氏は、メンズコスメブランド「LIPPS BOY(リップスボーイ)」の開発を始めた17年ごろ、男性が美容に求めるものは「男臭さを消して清潔感を出したいといった、内面的なものだった」と話す。だが、ロフトの廣末氏は「今では男性がメイクや除毛をしていることを、女性が受け入れている。女性らしさや男性らしさではなく、“自分らしさ”を大切にしているのだろう」と言う。
男性でも違和感なく使える工夫
レスプリの長島氏も、今やメンズコスメは「市民権を得てきた」と言う。その手応えの理由として、「メンズコスメを扱うメーカーや、メンズコスメを専門に扱うSNSのアカウントが増加した」ことや、「男性美容インフルエンサーをマネジメントしている会社から、タイアップの売り込みが増えてきた」ことなどを挙げた。現在、Instagramではメンズコスメに関する情報が日々投稿されており、「#メンズコスメ」は10.4万件(22年1月10日時点)。ヘアや眉毛の手入れをした「ビフォー・アフター」画像や「小顔になるマッサージ」などの投稿を見ていると、男性と美容の距離感が縮まってきていることが分かる。Z世代にとっては抵抗感よりも、「格好良くなれるなら使ってみたい」「女の子にモテそう」といった好奇心のほうが強いのだろう。
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