家電デザインの新潮流 第1回

本特集では各家電メーカーの一押しプロダクトを取材。担当デザイナーにそれぞれの“こだわりポイント” を聞いた。消費者の気持ちに寄り添ったデザインで商品を開発すれば市場を開拓できる。シャープからは補聴器の「メディカルリスニングプラグ」とプラズマクラスター搭載の冷蔵庫の「GKシリーズ」「MF/MWシリーズ」。いずれも生活空間になじむデザインを目指した。

ワイヤレスイヤホン兼用補聴器「メディカルリスニングプラグ」
ワイヤレスイヤホン兼用補聴器「メディカルリスニングプラグ」 軽・中度難聴者向けの補聴器「メディカルリスニングプラグ」<MH-L1-B>は、デジタルガジェットのようなイメージ。ワイヤレスイヤホンと兼用で、通話用マイクを使ってハンズフリーの通話もできる。仕事中に音楽を聴いているように思われないよう、通常のオーディオ系のイヤホンよりも落ち着いた外見にすることにも注意した。「2021年度グッドデザイン賞」のほか「CEATEC AWARD 2021」の要素技術・デバイス部門でグランプリを受賞
軽・中度難聴者向けの補聴器「メディカルリスニングプラグ」<MH-L1-B>は、デジタルガジェットのようなイメージ。ワイヤレスイヤホンと兼用で、通話用マイクを使ってハンズフリーの通話もできる。仕事中に音楽を聴いているように思われないよう、通常のオーディオ系のイヤホンよりも落ち着いた外見にすることにも注意した。「2021年度グッドデザイン賞」のほか「CEATEC AWARD 2021」の要素技術・デバイス部門でグランプリを受賞
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 シャープが2021年9月に発売した軽・中度難聴者向けの「メディカルリスニングプラグ」は、ワイヤレスイヤホン兼用の補聴器。同社にとって補聴器は初の商品。一般的な補聴器はベージュに近い色が多い。耳の穴に合わせて小型化した商品が多いが、日常的に装着することに抵抗を感じる人は多いという。

 そこで今回、色は黒を採用し、ワイヤレスイヤホンに近いデザインにして、他社と差異化を図った。「格好いい見た目ならポジティブに使いたい」という開発中に聞いたモニターの意見を取り入れ、デジタルガジェットとなじみやすいデザインにした。

 主なターゲットは、40~50代のビジネスパーソンだ。マスク着用時やオンライン会議での会話など、ビジネスシーンで聞き取りづらい状況が増加しているため、ニーズは高いとシャープは分析している。

 「国内に軽・中度難聴者を含む難聴自覚者は推定で約1400万人いるが、実際にはそのうち約14パーセントの人しか補聴器を使っていない。欧米では約30~40パーセントが使っているといわれる。特にビジネスシーンで使ってもらえれば『聞こえる』ことの価値を実感してもらえると思った」と、デザインを担当したシャープ通信事業本部デザインスタジオシニアデザイナーの和気琢哉氏は胸を張る。

シャープ 通信事業本部 デザインスタジオシニアデザイナーの和気琢哉氏
シャープ通信事業本部 デザインスタジオ シニアデザイナーの和気琢哉氏
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 売上高は非公表だが、若年層から80代まで幅広い年齢の購入者がいるという。希望小売価格は両耳で9万9800円(非課税)に設定。10万円を超えないようにして、保険適用外で購入に悩む軽・中度難聴者でもデジタルガジェットを購入する感覚の価格にした。

補聴器の呼び方を変えたい

 開発に当たっては医療機器の製造・販売を行っているニューロシューティカルズ(東京・文京)と協業。シャープでプロジェクトを推進したのは、スマートフォンの開発を担当する通信事業部門だ。シャープは「ヘルシオ ホットクック」など健康に配慮したヘルスケア家電を発売しているが、より医療機器に近い分野を開拓しようとデザインとマーケティングの両面からニーズを調査し、補聴器に行き着いた。ビジネスシーンを想定したのは、軽・中度の難聴者への聞き取りを行った際に、仕事中の打ち合わせや会議などの責任の発生するシーンでは、家庭内に比べて周囲の助力や自身の努力に限界があることが分かったからだ。

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