インバウンド(訪日外国人)向けのガイド付き少人数ツアーが注目を集めている。新型コロナウイルス禍の影響で大人数の行動を控える傾向が強まり、個別のニーズに合った観光を楽しむ旅行者が増えたためだ。政府は2023~25年度の観光立国推進基本計画に初めて1人当たり消費額の目標を盛り込むなど、観光の高付加価値化に向けた動きが進む。
ガイド付き少人数ツアーを手掛けるotomo(オトモ、東京・千代田)は23年5月、熊本県でPRキャラクター「くまモン」を活用したプライベートツアー「くまモンの歩き方」を始める。1グループ最大6人の少人数ツアーで、大人数では訪れにくい場所に誘客する。
熊本市、人吉市、八代市で少人数の利点を生かしたツアーを計11プラン用意した。例えば熊本市の南部に位置する川尻地区は刃物づくりなど伝統工芸が盛んだが、狭い路地に大型バスを止めにくく観光客は多くなかった。少人数ツアーなら小回りがきき、ガイドがいるため事前情報が少ない場所でも楽しみやすい。
熊本県はくまモンを活用して観光客や企業を誘致する「くまモンランド化構想」を掲げる。蒲島郁夫知事は23年2月の定例記者会見で「ガイドと一緒に街歩きをしながら熊本やくまモンのことを楽しく学べるプライベートツアーで、海外からの交流人口の増加にもつながる」と期待を込めた。
旅行商品も“ロングテール化”が進むか
オトモは17年設立で、これまで全国で350種類以上のガイド付きツアーを提供。1100人超のガイドが登録しており、ガイド料金は5~6時間のツアーで1グループ2万円ほど。19年にアニメツーリズム協会(東京・千代田)と組んで人気アニメのガイド付き聖地巡礼ツアーを共同開発するなど、ツアーの内容は幅広い。参加者からは「観光地のことだけでなく、日本の文化や生活の話も聞けて楽しかった」という声が挙がった。
コロナ禍で一度落ち込んだが、23年2月の月間ツアー件数はコロナ前に最大だった月の4倍に増えた。平塚雄輝社長は「コロナ前の旅行はみんな同じ場所に行き、同じものを見て、同じものを買っていた」と指摘。その上で「移動が制限されたコロナ禍を経て旅行に今まで以上に特別感を求めるようになった。今後は個別ニーズに対応したガイドツアーが重要になる」と話す。
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