西友が2023年に設立60年を迎え、新たな局面に立つ。主要株主の楽天グループとの協業を深化させる。23年にも自社のアプリ内に独自メディアを立ち上げ、顧客の趣向データを抽出する。24年には社内のシステムを刷新し、楽天の分析基盤との連携を進める。新経営陣のもとで「安さ」の代名詞を継続しながら付加価値の高い自社商品を開発して粗利を稼ぐ体制を進める。リアルとネットを行き来する「シン・西友」の姿を提示する。
2023年1月末、東京都北区の西友赤羽店で「お得カレンダー」と書かれたチラシが店内の壁に貼られた。カレンダーのマス目が黄色で塗られ「楽天ポイント増量日」と書かれている。楽天グループの電子商取引(EC)サイト「楽天市場」では毎月「5」と「0」の付く日にポイントが5倍になる。リアル店舗でも同じ光景が広がる。
「楽天IDですべてがつながる。西友のお客様がほかで何を買っているかがわかる。不特定多数にムダなチラシをまいていたが、今後は個人に合わせて配信できる」。西友の大久保恒夫社長は、こう語る。
大久保社長は21年に米投資ファンドのKKRと楽天が西友に出資した際に、西友のトップに就いた「プロ経営者」だ。イトーヨーカ堂の業務改革を担当して、成城石井社長などを歴任し、数々の企業再生を手掛けてきた。その大久保社長が「よくぞ来てくれた」と語った人物がいる。
楽天グループの元上級執行役員だった小森紀昭氏だ。「楽天西友ネットスーパー」の立ち上げに携わり、ECに最も知見のある一人だ。小森氏は「西友でオンラインとオフラインをつなぎ、テクノロジーで世の中をよくしたい」と、最高デジタル責任者(CDO)として現場で汗を流す道を選んだ。
西友は21年に発表した中期経営計画で、25年12月期までに食品スーパーとネットスーパーで国内首位を目指している。「ポイント増量日」などに代表されるオンラインとオフラインを融合させた「OMO」戦略がカギを握る。
西友のOMO戦略、3つの重要施策とは
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