セレクトショップ大手のビームス(東京・渋谷)が新たなビジネスモデル構築を模索している。売上高に占める電子商取引(EC)の比率が30%強に高まり、今後はデジタル関連事業も強化する。顧客とスタッフとの絆を重視する「コミュニティーブランド」を掲げ、「個性的なスタッフが集まるおもしろい集団を目指す」と語る設楽洋社長に展望を聞いた。(聞き手はビジネス報道ユニット部次長 遠藤邦生)
ビームス 社長
――新型コロナウイルス感染拡大はファッション業界にどのような影響を与えましたか。
ビームス 設楽 洋社長(以下、設楽) 新型コロナがなくとも5~10年後には想定された変化が、この2年間で一気に起きたと感じています。SDGs(持続可能な開発目標)にファッション業界も対応しなければならないという意識が高まりました。環境や社会に配慮した衣服を購入するのは感度の高い一部の層に限られ、まだ小さなトレンドだと見ている関係者も少なくありません。けれども世界ではSDGsへの対応が当たり前となっており、日本でも大きなトレンドになると見ています。
ファッション業界は大量に衣料品を生産して販売し、余ったらセールで売り切っていく。それでも売れ残った衣料品は廃棄してきました。SDGsへの対応が求められるなかで、こうした常識は崩さなければならない。適正な量の衣料品を生産し、廃棄を少なくする商売が求められます。売り上げを追求するのではなく、粗利などの収益を重視するビジネスに切り替えていきたい。セールに頼らず、値下げ前のプロパー価格で販売してお客様に購入してもらえるようにしていきます。
――プロパー価格で販売するためには、価格以外の魅力がなければ、お客は集まりません。
設楽 私たちは現在、『コミュニティーブランド』を掲げています。ビームスが提供する衣服はスーパーブランドのような高価格帯でもなく、ファストファッションほど安価でもありません。ファッション業界では、ビームスと同じ価格帯の衣料品がたくさんあります。お客様が店舗に足を運んだり、電子商取引(EC)サイトを訪れたりしてもらうためには、店舗で働くスタッフとの関係性がますます重要となります。スタッフ一人ひとりがコミュニティーを作り、彼ら彼女らのセンスや趣味、人柄などに共感するお客様を集めていくことを目指しています。
振り返ればセレクトショップはバイヤー自身が好きな服を海外などから仕入れて『好きな人はこの指とまれ』と呼びかけ、お客様を集めていました。これからもスタッフが自分の好きな世界を追求し、仲間になりたいお客様をコミュニティーに集めていきたい。スタッフのライフスタイルに共感し、楽しんでもらえるブランドになりたいと考えています。
――小売店と消費者の関係の密接さが問われているのでしょうか。
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