楽天グループが西友に出資して1年。楽天流の西友立て直し策が見えてきた。2022年4月からはネットスーパーのアプリを実店舗でも利用できるようにして、ポイント還元でそれぞれのお客に相互利用を促す。楽天グループが西友を「OMO(オンラインとオフラインの融合)リテーラー」に育てる先には、競争が激化する食品EC市場を深掘りする野望も見える。

※「日経MJ」2022年3月30日付記事「OMOしろい西友 楽天流」を再構成したものです
共同会見を開いた楽天グループの三木谷社長(写真左)と、西友の大久保社長(写真右)
共同会見を開いた楽天グループの三木谷社長(写真左)と、西友の大久保社長(写真右)
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 2022年3月末の土曜日、東京都武蔵野市の「西友吉祥寺店」は買い物客でにぎわっていた。店頭で目を引いたのが、出入り口に設けられた「楽天ポイント」をPRするのぼりや、勧誘員のスタッフ。「新しいお得、はじまる。」のキャッチコピーを掲げ、クレジットカード「楽天カード」の説明や新たなスマートフォン向けアプリの特徴などを説明するチラシも積極的に配っていた。

 楽天グループと西友は4月26日から、西友のネットスーパーと実店舗の両方で使える新たなアプリを導入する。共同で展開する「楽天西友ネットスーパー」向けに開発したアプリを、西友の全国約330店でも使えるようにする。店舗ではスマートフォン決済「楽天ペイ」で支払いできるほか、楽天カードを使えば効率的にポイントをためられるようにもなる。

 「西友が日本を代表するOMOリテーラーになるための支援をしていく」。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は意気込みを語る。ネットとリアルの垣根をなくす小売業界の世界的な潮流に楽天流で打って出る。

ECで注文が入った商品を店頭から集める西友の店員(東京都練馬区の西友高野台店)
ECで注文が入った商品を店頭から集める西友の店員(東京都練馬区の西友高野台店)
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 ネット通販や携帯通信など幅広いサービスを手掛ける楽天グループの強みは、ポイントによる集客力とデータ活用だ。サービスを併用することでポイントがたまりやすくなる「楽天経済圏」の顧客基盤はのべ1億人を超えるという。国内ネット企業では最大級の規模を誇る。約330店ある西友の店舗を楽天経済圏に組み込むことで、これまでアプローチできなかったお客との接点を持てるようになる。

 西友の店舗を利用する顧客のうち20代~50代女性が占める割合は35%弱だが、楽天西友ネットスーパーでは70%を超える。アプリを通じて、ネットと店舗の双方で顧客を補完しあえる可能性がある。西友の大久保恒夫社長は「店舗とネットスーパーを一体化できればより大きな経済圏ができる」と期待を寄せる。

西友以外にもネットスーパー支援広がる

 アプリでネットと実店舗の購買データを一元管理し、楽天グループがデータ分析を支援することで販促も大きく変化する。日ごろの購買行動をより全体的に把握できるようになるほか、ネットと実店舗で買い分けている商品なども把握できるようになる。食品スーパーでは不特定多数への販促が主流だが、スマホを通じた「個」のマーケティングに転換する。アプリのダウンロード数は2022年中に120万、25年には500万まで伸ばす計画だ。

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