2020年のビール減税を追い風に、国内大手4社がビールに磨きをかけている。アサヒビールは発売以来、初めて主力の「アサヒスーパードライ」を刷新。キリンビールはクラフトビールで「第2の創業期」を掲げる。新型コロナウイルス下で盛り上がる「家飲み」需要を巡るビール各社の競争は第2幕を迎える。

※「日経MJ」2022年3月23日付記事「『家飲みもビール』据え直す」を再構成したものです
店頭に並ぶリニューアルした「アサヒスーパードライ」(東京都千代田区のライフ神田和泉町店)
店頭に並ぶリニューアルした「アサヒスーパードライ」(東京都千代田区のライフ神田和泉町店)
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 新スーパードライ、始まる――。

 アサヒビールが1987年3月17日の発売以来、初めてフルリニューアルした「スーパードライ」。同社では過去最大規模の広告費を投じ、"誕生日"である2022年3月17日を中心に大規模なキャンペーンを展開している。3月末にはスーパードライを発売した当時と同様に、飛行船を使った大型プロモーションなども予定する。

 リニューアルでは製法や酵母を調整し、飲み応えを向上させた。ビールを口に含んだ直後、味や香りを強く感じられてスッと抜けるという同社が「辛口」と定義する特徴をさらに際立たせた。

 プロモーションでも全国各地の主要都市に移動式のコンセプトカーを配置し、茨城工場にあるミュージアムを疑似体験できたり、製造後3日以内のスーパードライを試飲できたりする。ブランドの世界観を五感で訴えることで「辛口」をアピールしていく。

「若者は辛口=苦い」に危機感

アサヒビール社長の塩沢賢一氏
アサヒビール社長の塩沢賢一氏
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 2020年の酒税改正に加えて、新型コロナウイルス下の「家飲み」需要などが注目されたビール業界。スーパーなどでも人気ブランドのリニューアルへの期待が高まる。

 食品スーパー大手のライフコーポレーションは、神田和泉町店(東京・千代田)にスーパードライの特設スペースを設けた。「スーパードライから離れていた人や、飲んだことがない人に飲んでもらえる機会になってほしい」。アサヒで首都圏の営業を担当する渋谷裕美子さんは意気込む。

 発売以来のフルリニューアルと大規模キャンペーンを展開するアサヒだが、塩沢賢一社長は「屋台骨の商品であるため、本音ではいじりたくないという思いもあった」と振り返る。

 リニューアルを機に熱心なファンが離れてしまう懸念もある。それでも刷新に踏み切った背景には、2000年ごろをピークに右肩下がりでスーパードライの販売量が減り続けていることがある。ビールのトップブランドながらも「このままで良いのかという議論は社内にずっとあった」(塩沢社長)。

 21年に具体的なリニューアルの検討に入ったところ、若者層を中心に「辛口イコール苦い」というイメージが強いことがわかった。広告表現などを変えるだけでは、商品の特徴が伝わらないと判断。味わいそのものを変えるフルリニューアルに踏み切った。

 コロナ下で飲食店の需要が低迷し、業務用に強みを持つアサヒへの打撃は大きくなり、国内シェア(日経推定)は20年に11年ぶりに首位から陥落した。22年には21年に話題を集めた「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」や「アサヒ生ビール」(マルエフ)などの量産体制も整える。22年の首位奪還へ鼻息は荒い。

キリン、クラフトビールで「第2の創業期」目指す

 アサヒが主力商品を刷新する一方で、ライバルのキリンビールが22年に攻勢を掛けるのが、クラフトビールの「スプリングバレー 豊潤〈496〉」だ。21年3月に缶商品を発売し、21年は年間147万ケースを販売した。これを22年には21年比53%増の220万ケースまで増やす計画だ。

 「ビールを再び魅力ある物に変えて市場の活性化につなげる。キリンビールの『第2の創業期』を宣言したい」。キリンビールの堀口英樹社長はこう意気込む。3月下旬にはスプリングバレーをリニューアルし、日本産のホップ「IBUKI」を使用し味わいと香りのバランスを高めた。

キリンビールはクラフトビールをリニューアルする
キリンビールはクラフトビールをリニューアルする
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