セブン&アイ・ホールディングスが、伸び悩むショッピングセンター(SC)事業の強化に乗り出した。2021年秋に開業したSC「セブンパーク天美」(大阪府松原市)はエンタメ要素を充実し、滞在そのものを楽しめる「エクスペリエンスモール」を目指す。コンビニエンスストア依存の収益構造を変えるためにも、次世代の商業施設運営のノウハウを育てる考えだ。

※「日経MJ」2022年2月23日付記事「セブン 相手はUSJだ」を再構成したものです
「セブンパーク天美」では、ボーカロイドがオリジナルソングを歌う
「セブンパーク天美」では、ボーカロイドがオリジナルソングを歌う

 「ずっと待ちわびてたんだ~♪」

 2021年12月下旬。「セブンパーク天美」では、3階までの高さの巨大ディスプレーに映し出された人気バーチャル歌手「初音ミク」が歌っていた。

 楽曲はセブンパーク天美のオリジナルソング。映像で登場する衣服やコーヒーは、館内テナントの商品と細部まで同じ見た目にこだわった。家族で買い物に来ていたという松原市の男性(29)は思わず足を止めて、「SCでここまで大きいディスプレーは見たことがない」。

 巨大ディスプレーが置かれる「天美スタジアム」は、ライブハウス並みの音響と照明機器を備え、21年秋の開業時には30機のドローンが飛び交うショーや地元の中学生・高校生によるダンスが披露された。

 営業終了後はイベントホールとして利用が可能だ。21年12月17日には午後10時からラップライブ「MIDNIGHT AMAMI FES」が開催され、館内で約230人、オンラインでも約220人を集めた。

 営業終了後に、イベント開催するのはSCとして異例の運用となる。エンタメ色を前面に打ち出した背景には従来のSCとは一線を画す独自の商圏戦略がある。

 物販の商圏は半径5~10キロメートルに設定し、食品スーパーのテナントには関西の商圏に詳しいライフコーポレーションを誘致した。セブン&アイのSCに、イトーヨーカ堂以外のスーパーが入居するのは異例だ。

 一方で、イベント開催時は全国からの集客を目指している。三井不動産グループのSC「ららぽーと」やイオンモールだけでなく、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)のようなテーマパークもライバルに見据える。

配信イベントは全国から集客

 エンタメ特化を体現するテナントが、企業プロモーションなどを手掛けるアイワット(名古屋市)の「AMAMI PLUS」。セブンパーク天美の秋本和宏支配人も企画段階から携わり、オンライン同時配信のイベント会場と収録スタジオを兼ねている。「AMAMI PLUS」による独自のイベントも開催している。

 声優のトークイベントや朗読会は好評を得ており、毎回会場内で用意する20~30席は即完売している。東京や名古屋から足を運ぶ参加者も少なくないという。

 今後は施設全体と連動したイベントの配信も模索している。館内には、バラエティー番組のようなエンタメ要素を詰め込んだスポーツ施設「VSパーク」や、家族や友人同士でパーティーなどを催せるレンタルルームも営業している。

 「遊べる商業施設」ともいえるセブンパーク天美の開発・運営を手掛けるのが、セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン&アイ・クリエイトリンク(東京・千代田)だ。

 立地ごとにコンセプトをイチから企画することで、マンネリ感やテナント依存のSC作りからの脱却を進める役割を担う。クリエイトリンクの近藤悦啓会長は「年に1~2回は全国で話題になるようなイベントを仕掛けたい」と話し、アイドルのライブなどを定期的に開催することも視野に入れている。

 今後は営業終了後に開くイベントにVIP席を設けたり、館内にある有料のレンタルスペースから遠隔でイベントを観覧できるようにしたりすることも検討している。近藤会長は「消費者は商品だけでは満足しなくなってきた。ショッピングセンターの次の言葉を探す」と話す。

 セブン&アイがSC事業に本格進出したのは2005年。傘下のイトーヨーカ堂と三井物産の共同出資で「モール・エスシー開発」を立ち上げ、「アリオ」ブランドのSCを全国に展開してきた。

 ただ先行するイオンモールとの差は縮まらず、事業は伸び悩んできた。16年にはセブン&アイがモール・エスシー開発を完全子会社化し、セブン&アイ・クリエイトリンクに社名変更。20年には、イトーヨーカ堂の子会社となった。

グランツリー武蔵小杉(川崎市)は屋上庭園が集客の目玉になっている
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