サントリーホールディングス(HD)の次期社長として有力視される鳥井信宏副社長。創業者のひ孫にあたり国内酒類事業を統括する。コロナ禍が長引く中、ノンアルコール商品の拡大など環境変化への対応を急ぐ。インタビューからは「やってみはなれ」の企業風土の原点に回帰し、新時代を切り開く思いが浮かび上がる。(聞き手は日経MJ編集長 鈴木哲也)

※「日経MJ」2022年2月28日付記事「ノンアルを文化にする 鳥井信宏・サントリーHD副社長」を再構成したものです
「ノンアルを文化にする」と語る
「ノンアルを文化にする」と語る
鳥井 信宏 氏
サントリーホールディングス 副社長
1989年、慶応大学経済学部卒、91年米ブランダイス大修士修了、日本興業銀行(現みずほFG)を経て97年サントリー入社、2011年サントリー食品インターナショナル社長、16年サントリーHD副社長。17年サントリーBWS社長を兼務。サントリー創業者、鳥井信治郎氏のひ孫にあたる

新会社、原点から再挑戦

――2022年7月に国内酒類会社を統合し、「サントリー」という会社を発足させます。狙いは何ですか。

鳥井信宏氏(以下、鳥井) 2011年から16年に、清涼飲料のサントリー食品インターナショナルの社長を経験しました。飲料はお茶もコーヒーもすべて一体で見ています。しかし、お酒はビールやワイン、スピリッツ(ウイスキーやチューハイなど)と、それぞれ別の会社です。これはおかしいと思っていました。まずは、お酒の事業会社を束ねる中間持ち株会社のサントリーBWSを17年に作ったのですが、やっぱり中途半端な一体化になっていました。

 お客さんは「お酒」を飲むんですよね。それがビールであったり、チューハイであったり、ワインだったりします。同じ顧客に対して仕事をするのだから、一体経営しようということです。

――統合会社の社名は「サントリー」とシンプルですね。

鳥井 09年にサントリーHDになる前は、もともとサントリーという社名で、いろいろなお酒を売っていたのですから。

――今回の組織再編はいわば原点回帰ですね。

鳥井 はい。事業会社の社長たちと話して、サントリー株式会社にしようと決めました。HDに反対されるかと思ったのですが、反対はありませんでした。かつてあったサントリーという社名が、すっと腹落ちしました。

――コロナ禍を背景にした健康志向などから、ノンアルコール商品の市場が拡大しています。新サントリー社はノンアルのビールやワイン、チューハイなど多様な商品を一体で展開できますね。

鳥井 サントリーはビールでは新参者で、ビールの技術は他社に比べて圧倒的に強いとは申しませんが、蒸留酒は歴史的に長い間手掛けてきました。お酒をベースにしてノンアルを作るという技術的なアドバンテージがあります。ノンアルで幅広い商品を一体でそろえるのが、我々の得意とするところです。

 これまで小売店の売り場では一般的に、冷蔵ケースのビール類の横に、ノンアルビールが置かれることが多かったでしょう。これから多様な商品をそろえたノンアルコーナーを設けるなど、サントリーらしい売り場の提案に力を入れてきます。

ノンアル飲料市場は拡大が続く
ノンアル飲料市場は拡大が続く

――ノンアル商品に関して、2030年には販売量を21年比で倍増させる計画を掲げました。

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