小売店にとって現金を循環させる心臓部とも言えるPOS(販売時点情報管理)レジ。そこで得た購買データを武器に店舗の売り上げアップを支援する取り組みが、レジ各社の間で広がっている。買い物内容から顧客の趣味趣向や商品の動きを分析し、適切な販促や、最適な価格設定を提案。機器だけでなく、コンサル力で小売業界を開拓する。
いつも昼休みに昼食を買いに行く会社近くのスーパー。ある日、弁当を購入すると、決済内容を印字したレシートとともに、次回使える「総菜が50円引き」と書かれたレシートがレジから出てきた。一方、一緒に買い物にいった同僚が受け取ったレシートは「冷凍食品で20ポイントアップ」の表示。一人ひとりの趣味趣向にあった割引内容が印字されている。
これは2022年1月から寺岡精工が始めた顧客の購買傾向から購買確率を算出し、販促の内容を変えられる新サービスのイメージだ。顧客は会員カードをレジに読み取らせて会計すると、次回割引される商品が記されたレシートがもらえる。割引対象の商品情報は顧客の会員情報にひも付いており、次回は会員カードを読み込ませるだけで割引を自動で受けられる。
店側が拡販したい商品を設定した上で、購買データをもとに人工知能(AI)が購買趣向を分析し、顧客ごとに商品の購買確率を算出する。例えば、昼食をよく買いに来る人には弁当や総菜、週末に食材をまとめ買いする人には冷凍食品といったように販促商品を変えることができる。
実験導入した小型スーパーでは、会員カードを持つ顧客の1カ月あたりの来店回数が10~50%向上し、販促商品の購買確率はチラシに比べて50%向上したという。寺岡精工リテイル事業部の松橋広巳氏は「顧客によって販促内容を最適化することで固定客の増加につながりやすい」と話す。
複数チェーンをまたいだレシートデータ分析も
電子レシートを活用して、より細かい顧客の趣味趣向を分析しようとしているのがレジ最大手の東芝テックだ。同社の電子レシートサービス「スマートレシート」の利用者は対象店舗での会計時に、専用アプリのバーコードを読み取ってもらうことで、アプリ上でレシートの内容を確認・管理できる。スーパーはスマートレシートから得た購買履歴などの情報を元に、クーポンやキャンペーン情報をアプリ内に配信できる仕組みだ。
21年11月には東急ストア、同年12月にはミニストップが導入。飲食店やスーパー、ドラッグストアを中心に現在の導入店舗は約7000店。22年9月末には2万店の導入を目指す。
東芝テックが目指すのは複数チェーンをまたいだデータ活用だ。
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