セブン&アイ・ホールディングスが百貨店子会社、そごう・西武を売却する検討に入った。かつて西武は先端ファッションや文化を旗印にして、そごうは各地に巨大店舗を多数つくり大衆消費の受け皿となってきた。いま時代の激変とともに、大衆に向けた大型百貨店の価値が揺らいでいる。追い込まれたそごう・西武の盛衰は、百貨店業界の今後にも影響する。
「あの話はどうなるんだ」
2022年2月1日、そごう・西武の売却が検討されているという報道に触れた大手衣料品メーカーの幹部はつぶやいた。
21年2月期の営業損益が66億円の赤字だったそごう・西武。22年は反転攻勢に打ってでる構えだった。各店で改装を計画し、西武池袋本店(東京・豊島)では高級ブランド売り場の増設を柱とした12年ぶりの大型改装を予定していたが、不透明感も出てきた。
「まだ何も決まったことはない。落ち着いて目の前の仕事に取り組んでほしい」
そごう・西武の林拓二社長は2月1日、社員にメッセージを送った。ベテラン社員は冷静な受け止めも多かったという。なぜなら「もっと大変なことを経験してきた」(関係者)からだ。
旧そごうグループは2000年に約1兆8700億円の負債を抱えて経営破綻し、旧西武百貨店は03年に約2200億円の債権放棄による私的整理となった。03年の経営統合を経て、06年にセブン&アイの傘下に入った。そごう・西武の流転の歴史は、百貨店業界の映し鏡ともいえる。
セゾングループ、劇場や美術館で文化を発信
戦時中の1940年、池袋駅に隣接した場所に発足した「武蔵野デパート」を起源とする西武百貨店。68年には渋谷に出店するなど多店舗展開を進めた。堤清二氏が率いた西武は仏エルメスなどの高級ブランドを百貨店でいち早く展開。グループ企業としてパルコのほか「ロフト」など新しい専門店を生み出した。西武百貨店を中核企業として劇場や美術館といった文化発信拠点をもつ異色のセゾングループは勢いづき、80年代には「セゾン文化」の全盛期を迎える。
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