インターネット上の仮想空間「メタバース」が、消費の場として成立するか注目を集めている。ユーザーの分身であるアバターがバーチャルの街を歩き回り、買い物や人との交流を楽しみ、創作物の販売や仕事でお金を稼ぐ。近い将来、こんな過ごし方が広がるかもしれない。マーケティング上も重要になる可能性があるとして企業も付き合い方を探り始めている。
2021年12月。東京・渋谷の百貨店にハンバーグやすし、カニ鍋やプリンといった豪華な料理が並んだ。通常と異なるのは、百貨店の所在地はバーチャル空間に作られた渋谷であり、色とりどりの食品は3Dで再現されていること。大丸松坂屋百貨店が仮想空間にオープンした「バーチャル大丸・松坂屋」だ。
来店客の分身であるアバターは3Dで表示される食品を手に取って見ることができ、そのまま電子商取引(EC)サイトに移行して購入できる。15種類の食品の3Dモデルを用意したほか、バーチャルでカタログを表示し、2700点以上のグルメを取りそろえた。
2週間ほどの出店期間中に約500人の来店客が3Dモデル経由でEC画面を表示し、食品を購入した。最も売れたのはローストビーフ(7560円)だった。大丸松坂屋百貨店でメタバース事業を担当する田中直毅氏は「平面的な画像しか使えないECと違い、肉の質感やボリュームを立体的に伝えることができた」と手応えを語る。
田中氏はメタバースを「店舗・外商、ECに続く第3の商空間」と位置づける。販売員のアバターが身ぶり手ぶりを交えた接客をすれば、時計や絵画など詳しい説明が必要な商品の販売にも活用できると見る。
「バーチャル大丸・松坂屋」が出店したのは、HIKKY(東京・渋谷)が手掛ける仮想空間のイベント「バーチャルマーケット」。18年に初めて開催し、7度目となる21年12月の回には約80社が出展し、約2週間の期間中にのべ100万人以上が訪れた。セレクトショップ大手のビームス(東京・渋谷)は店舗スタッフがアバターとなって接客し、アパレルなどの商品を販売した。HIKKYの角田拓志CSOは「メタバースに注目する業界が幅広くなっている」と話す。
メタバースの広告活用も進む
恒常的にメタバース上で物販する動きも出ている。
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