資生堂は2021年、思い切った構造改革に乗り出した。化粧品の中でも肌の美容と健康に集中する方針を明確にし、日用品事業や不採算のブランドを切り離した。22年は創業から150周年の節目。魚谷雅彦社長は「希望を持って新しく始める年にする」と前向きだ。改革の歩みと事業の先行きについて聞いた。
資生堂 社長
――21年は構造改革に取りかかりました。どのように振り返りますか。
魚谷氏 新型コロナウイルス禍以前よりもよい状態に成長しようと思うと、厳しい改革も実行せざるを得ませんでした。やるなら2年も3年もかけたくありません。1年でやり遂げたいと思いましたが、できました。雇用をできる限り守る形で、粘り強く相手と交渉し合意できたのはよかったと思います。構造改革は世の中や社員からの見方も厳しくなりますが、資生堂がとるべきプロセスでできたと思います。かなり丁寧に進めてくれました。
21年からの3カ年の経営戦略は(新型コロナが広がった)20年春から作り始めました。この頃は欧米よりも日本の事業が早く回復するとみていましたが、現状は逆になっています。欧米は19年並みに戻っています。夏にかけて順調に回復すればと思っていましたが、先を見極めるにはまだ時間がかかるなというのが正直な気持ちです。
――日用品事業を譲渡しましたが、美容室向けシャンプーなどの資生堂プロフェッシ ョナルは残っています。
魚谷氏 ヘアケアという点で日用品と似ていますが、ビジネスモデルは違います。BtoB(事業者向け)でしっかり利益も出ており、資生堂が掲げるビジョンの中でどのような役割を担ってもらうかは、まだ考えているところです。プロ向け商品や美容専門学校を通して資生堂に最先端の人材が集まり、コアの化粧品事業を支えている面があります。この分野は中国でも伸びており可能性は大きく、どう強化するか考えたいと思います。
――22年は創業150周年です。どのような展望を持っていますか。
魚谷氏 社長に就任した14年から、22年を意識していました。当初のイメージはコロナ禍でガタッと崩れてしまいましたが、何が強みかを見直し『スキンビューティー』に行き着きました。22年がコロナ禍から脱していく転換期になるのなら、意義のあることだと思います。美の力で世の中を元気に、幸せにしたいというパーパスが一番発揮できる時です。化粧品はものすごい社会的意義を発揮できます。社会へのメッセージやイノベーションを思い切り発信しようと準備しているところです。
社員への年賀状に『希望の年が始まった』と書きました。感染再拡大は心配ですが、希望という言葉を大切にみんなで仕事をしようと呼びかけました。150年後の人に『資生堂は昔コロナで大変だったが、乗り越えて今があるんだ』と思ってもらえるような新しい始まりの年にします。
――21年7月にはIT(情報技術)コンサルティング大手アクセンチュアとの合弁会社も作り、デジタル化にも力を入れています。
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