ドラッグストア業界で大型再編の機運が高まる一方、生鮮品など品ぞろえも進化し、新しいステージに入った。売上高1兆円規模の企業が相次ぎ誕生しようとするなか、地方の中堅チェーンはどう生き残るのか。食品強化で地域のインフラになったり、デジタル化を進めたりしている2社の取り組みから、ドラッグストアの将来像の一端が見えてくる。

※「日経MJ」2022年1月24日付記事「新章ドラッグストア 地方の中堅 自主独立の旗」を再構成したものです
北陸や中部地盤の中堅ドラッグストア、Genky DrugStores(ゲンキー)は岐阜の自社施設で精肉や総菜を加工・調理する
北陸や中部地盤の中堅ドラッグストア、Genky DrugStores(ゲンキー)は岐阜の自社施設で精肉や総菜を加工・調理する

 JR岐阜羽島駅から車で10分ほどの郊外にある食品加工兼物流センター。施設内では、おにぎりや弁当、総菜で約50品目をつくるほか、精肉加工も行われる。

 食品スーパー向けの加工センターにも見えるが、北陸や中部地盤の中堅ドラッグストア、Genky DrugStores(ゲンキー)の子会社「富士パール食品」(岐阜県安八町)が運営する。ゲンキーは2019年に65億円を投じて同センターを開設し、自社のドラッグストアに弁当や総菜、精肉を供給する。

 ドラッグストアが自前で総菜や精肉の加工センターを設けるのは異例だ。ゲンキーは23年には2カ所目のセンターを富山県に立ち上げるほか、24年以降には愛知県での建設も検討している。

 矢継ぎ早に食品関連の投資に動く理由は、食品強化のビジネスモデルにある。店内では精肉や総菜のコーナーを小型スーパーを上回る規模に広げ、16年6月期に55.3%だった売上高の食品比率は、21年6月に65.4%と10ポイント上昇した。食品に強みがある大手のコスモス薬品の約58%を上回る。「食品比率が7割を超える可能性は十分ある」。ゲンキーの平田都芳執行役員は、食品の品ぞろえを深掘りする姿勢を強調する。

 日用雑貨や医薬品などをそろえるドラッグストアは、一般的に食品スーパーに比べて来店頻度が低いとされる。ゲンキーは食品の品ぞろえを強化することで固定客を獲得し、来店頻度の向上につなげている。既存店売上高は21年11月まで6カ月連続で前年を上回り、12月も0.3%の微減だった。「普段の買い物はここで十分」。ゲンキーを毎週2回は利用するという女性会社員はこう話す。

パールネックレスのように地域に店舗網

 これまで福井、石川、岐阜、愛知の4県に集中出店するドミナント戦略を徹底してきた。22年6月期の店舗純増数は約60店舗を見込み、ドラッグストア業界では高水準の出店ペースを誇る。

 成長を支えるのが徹底した自前主義だ。「(物流の)トラックドライバー以外は自前で構築する」と平田執行役員は意気込む。食品加工にとどまらず、約50人の開発部隊が自分で車を走らせて候補地を探し出すことでスピード出店を可能にしている。

 将来的には「店舗数1万店チェーン」の実現を掲げている。ゲンキーを創業した藤永賢一社長は「富士パールネックレス作戦」を標榜する。富士山を大きく取り巻く首飾りのように店舗を連ねるドミナント戦略の拡充を目指す。

Genky DrugStoresとサツドラホールディングスの2社は独自戦略で生き残りを図る
Genky DrugStoresとサツドラホールディングスの2社は独自戦略で生き残りを図る

 北海道・東北地盤のツルハホールディングスが積極的なM&A(合併・買収)で店舗網を全国に広げるなど、大手チェーンの規模拡大が続くドラッグストア業界。地方企業が群雄割拠していた構図は変わってきており、大手チェーンが地方企業を傘下に入れてシェアを奪い合う動きが強まっている。それでも再編とは距離を置き、地域密着で生き残りを図る地方チェーンは少なくない。

「もはやドラッグストアではない」

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