新型コロナウイルス感染拡大の影響で鉄道利用の低迷が続くなか、JR各社が新幹線の新たな活用方法を模索している。鮮魚などの荷物を運んだり、集中して仕事できるテレワークスペースとして活用できたりと策を練る。新型コロナ下で働き方が変わり、出張や旅行需要の回復もすぐには期待できない。新幹線の活用で新たな収益の確保を目指す。
「北海道から今日とれた新鮮な魚が新幹線で届きました」
「豊洲市場に入る前に一足早く店に届き最速ですよ」――。
2021年12月10日、JR大宮駅前の商業施設「ルミネ大宮」にある鮮魚店「魚力」。午後1時前には、活きほっけや黒そいなどが店頭に並んだ。北海道の南端にある新函館北斗駅から新幹線で運ばれた鮮魚だ。お客から「まだ動いているほっけを初めて見た」との声が聞かれた。
店頭の鮮魚は、その日の朝にとれたものがずらり。JR東日本やジェイアール東日本物流(東京・墨田)などが連携し、北海道などでその日に水揚げされた鮮魚などを新幹線で運んできた。
新幹線は時刻表通りの到着が見込めるなど、荷物輸送としてのメリットは小さくない。他の輸送手段と比べても環境負荷も低いとされる。ただ、新幹線荷物輸送サービスを手がけるJR東日本事業創造本部の堤口貴子次長は「徐々に需要も細り縮小傾向にあった」と振り返る。
新幹線での小口荷物輸送は国鉄時代から展開し、法人向けが多かった。東日本大震災以降、地域創生を目的に東北などの特産品や野菜などを東京駅などで産直市として販売してきたが、駅での販売が主だった。
新型コロナ下で「家で過ごす時間も増え、なかなか現地に行けない地域の新鮮な食材などを届けたい。新幹線荷物輸送の事業をしっかり育てようという機運が高まっている」(堤口氏)。
新幹線で貨物輸送拡大、その背景は?
この記事は会員限定(無料)です。