本連載ではグロース X(東京・渋谷)が開発するマーケティングの学習アプリに実際に盛り込んでいる人気クイズなどを軸に、今日から役立つ知識を伝えていく。今回のテーマは、マーケターが優れた成果を出すために必要な考え方や行動特性だ。マーケティング分野における「コンピテンシー」と言ってもいいだろう。CMO(最高マーケティング責任者)を目指すマーケターに送る3つの条件や、キャリアアップのために役立つ要点を、グロース X 代表取締役の津下本耕太郎が解説する。

(写真/Shutterstock)
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 本連載では6回にわたって、デジタルマーケティングのスキルアップに役立つ知識を解説してきた。今回は少し観点を変えて、マーケターのキャリアとそこで求められるコンピテンシーがテーマだ。キャリアパスや必要な能力やスキルなどは個人にひも付く話ではあるが、同時に組織や事業の変化にも連動している。

 特に、手法重視の現場よりさらに上流の経営に近い立場を目指すなら、将来の理想的な事業運営のイメージを念頭に置きながら、自身の成長を考えられる人が“強い”と思う。強いとは、変化にしなやかに対応しながら、確実にステップアップしていけるということだ。まずは、以下の質問に答えていただきたい。

 あなたは、事業会社のマーケティング部で、デジタル広告の運用を中心に携わって5年目になるWebマーケターだ。今後、デジタルに閉じず、幅広くマーケティング業務に携わり、マーケティングを生涯の仕事にしたいと考えている。目指すはCMO(最高マーケティング責任者)だ。

 ところが、現状では成長に伸び悩み、壁を感じている。マーケターとして成長するために、次のうち最も優先して取り組むべきことはどれか?

自身の成長のために優先的に取り組む項目はどれか?

(1)デジタル広告を極める
(2)論理的思考力、共感力、コミュニケーション力などを学ぶ
(3)4P(Product=商品・サービス、Price=価格、Place=店頭・接客、Promotion=広告・PR)の知識を身に付け、実践できる場を探す
(4)営業など異なる部門に配属してもらう

 いかがだろうか。筆者が優先すべきだと考える項目は「(3)4P(Product=商品・サービス、Price=価格、Place=店頭・接客、Promotion=広告・PR)の知識を身に付け、実践できる場を探す」だ。

 クイズのモデルケースとした人物の現在は「デジタル広告の運用」というマーケティング全体から見れば、狭い業務を担っていること、将来のビジョンとしてCMO着任を視野に入れていることを考えると、マーケティングの基礎である4Pを学ぶことが最優先だといえる。

 CMOという立場は商品開発から実際の流通まで、4Pのどこに、どの程度の投資をどのような順番で実施すべきかの判断を求められる。だから、4Pを俯瞰して理解できることが前提となる。その基礎となる知識を知っておくことが絶対条件だ。

 その他の選択肢も「キャリアアップ」という観点では誤りではない。もし、デジタル広告のスペシャリストを目指すのなら「(1)デジタル広告を極める」が有効だが、クイズの人物のCMOを目指すというビジョンとは異なる。「(4)営業など異なる部門に配属してもらう」という選択は、経営層を目指すうえで、社内のさまざまな部署との関係性構築に役立ちそうだ。ただ、マーケティング部で、まずは基礎知識となる4Pの習得と、実践の経験値を積んでからでも遅くはない。

 「(2)論理的思考力、共感力、コミュニケーション力などを学ぶ」は、リーダー職や管理職など、人をまとめる立場なら少なからず必要になるし、外部の取引先企業との連携にも大事な要素といえる。さまざまな部門と連携するCMOとしても必須能力だろう。4Pなどマーケティングの基礎知識の学習に取り組みながら、この能力を養うことを日々意識しながら仕事に当たるのが理想といえそうだ。

マーケティングとはもはや事業創造である

 筆者は今後マーケティングがより面白く、重要な仕事になっていくと考えている。ここからは、自分自身の経験を振り返りながら、その理由を解説したい。筆者の社会人人生は、最初のキャリアは大企業のシステムエンジニアから始まった。その後、アライドアーキテクツという、SNSを主軸としたデジタルマーケティング支援会社に転職したところからマーケティングとの関わりは始まった。同社で役員まで務めて株式公開を経験した。

 その後、マーケティングコンサルティング会社のシンクロ(東京・渋谷)に参画。同社で、マーケティング学習アプリ「コラーニング」を立ち上げ、分社化する形で2020年にグロースXの前身企業が誕生し、同社の代表に就いた。

 現場のいち担当者から、少しずつ視野を広げて経営者になるまで、立場の変遷と共にマーケティングの守備範囲は拡大していった。それに伴い、マーケティングはさらに面白い仕事になっていると実感する。これからさらに楽しくなるはずだ。その点を強調しておきたい。この連載を読んでくださっている皆さんに、その楽しさをもっと開拓し、味わってもらいたいと思っている。

 マーケティングの守備範囲が広がっていることの背景には、デジタルの普及によって「ビジネスモデルそのものにマーケティングの要素が組み込まれるようになっている」という、大きな潮流がある。

 モノを売って終わりのビジネスから、サブスクリプションのようなデジタルを駆使してサービスを継続してもらうビジネスへと大きな変化が起こった。流通小売りを介さず、ネットを通じて顧客に直接商品を販売するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルが台頭している。また、顧客を1つのIDで一意に把握し、密なコミュニケーションによるCRM(顧客関係管理)で、長期的な関係を構築することの重要性が増した。マーケターは商品・サービスの認知から購買を経て、優良化までの顧客体験全般を設計できる能力を求められるようにもなっている。

 事業モデルの変化によって、顧客はモノ単体ではなく、モノを通した「体験」に対価を支払うようになっている。そうしたモデルの設計には、マーケティング的な感覚が必要なのだ。もちろん、提供するモノ自体が優れていることが大前提となるが、ビジネスモデルの構想段階からマーケティング要素を織り込まなければ、もはや顧客を満足させる商品はつくれない。

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