本連載ではグロース X(東京・渋谷)が開発するマーケティングの学習アプリに実際に盛り込んでいる人気クイズなどを軸に、今日から役立つ知識を伝えていく。第3回のテーマは「売り上げ構造の理解」だ。経年の売り上げを管理する「階段図」を用いて、グロース X取締役CMO(最高マーケティング責任者)でシンクロ(東京・渋谷)社長の西井敏恭が解説する。正しいルールを身に付けることで、よりマーケティングの確度と精度を引き上げることができる。

「階段図」を用いながら顧客の継続購入率を高めることで、事業の安定性の向上につながる(写真/Shutterstock)
「階段図」を用いながら顧客の継続購入率を高めることで、事業の安定性の向上につながる(写真/Shutterstock)

 ECサイトで商品を販売している化粧品会社が自社の売り上げ構造を分析するのに当たり、顧客の獲得年度ごとに新規顧客と継続顧客を分けて次の図表で分析した。

こうした「階段図」を基に改善点を見つけ出せる
こうした「階段図」を基に改善点を見つけ出せる

 横項目に年度ごとの売り上げ推移を、縦項目に年度ごとの獲得したユーザー数や購入金額、購入回数などをまとめている。例えば、1年目は100人が1万円で平均2回購入し、2年目になるとそのうち30人が顧客として残り、1万円で平均4回購入したことになる。この図表は階段のように見えることから「階段図」と呼ぶ。


この階段図から読み取れる、改善すると理想的な課題は何か

(1)1年目に獲得したユーザーの2年目の購入回数 =3回
(2)1年目に獲得したユーザーの3年目の購入回数 =4回
(3)1年目に獲得したユーザーの2年目の継続率 =30%
(4)1年目に獲得したユーザーの2年目から3年目の継続率 =66.6%

 いかがだろうか。正解は(3)の1年目に獲得したユーザーの2年目の継続率=30%だ。

 階段図とは、簡単にいうと「今年顧客になった人が、翌年にいくら/何回購入したか」を複数年にわたって可視化するものだ。今回のクイズで挙げた図表では、選択肢(1)の「2年目の購入頻度」は3回、(2)の「3年目の購入頻度」は4回となっている。1年目は2回となっているため、年々増加していることが分かる。

 年を追うごとに一定数の顧客が離反し、根強く支持する顧客は残るため、自然と購入回数は増えるのが一般的だ。それを踏まえると、もう少し多いのが理想だが、現状の数字で解決が急務だとは思えない。

 一方、(3)と(4)はどうだろう。(3)1年目から2年目の継続者数は100人中30人となっているので、継続率は30%。そして(4)2年目から3年目への継続率は、30人中20人が残っているため66.6%となる。2年目で大幅に減少しているのは大きな問題だ。したがって、この設問での正解は(3)の1年目から2年目への継続率の向上が優先施策となる。

 ビジネスが安定する顧客継続率の目安は、年度や期で区切ると50%が安定の境目だ。構造的に50%の達成が困難な業種もあるが、一般的に50%を切ると、毎年かなりの広告宣伝費を投じて、新規顧客を獲得しなければならない。あえて新規顧客を多く獲得して、残った顧客の購入金額や購入回数を上げていく戦略もあるが、継続率が50%を切っているなら引き上げる余地がまだまだあると考えられる。

顧客を立体的に捉える「階段図」

 階段図は筆者がこれまでデジタルマーケティングに携わる中で独自に構築し、実務で活用してきたフレームワークだ。今回のテーマ「売り上げ構造の理解」に役立つ極めてシンプルな考え方なので役立てていただきたい。

 階段図は前述の通り、今年獲得した顧客が翌年どうなるかを、経年で足し上げていくフレームワークだ。現状と予測を記入して、ビジネスの見通しを立てることもできるし、実態の数値を入れて課題を見つけるのにも生かせる。通販やEC事業のように、会員基盤や購入状況のデータがあって顧客の状況を把握できているダイレクトマーケティング型のビジネスはもちろん、リアル店舗でも会員制度やアプリなどで顧客とつながっていれば、作成するのは容易だ。

 こうした図を考案したのは、通販事業に携わる中で、自分自身が「売り上げの構造を細かく把握したい」と思ったことが発端になっている。売り上げの昨年対比やCVR(コンバージョン率)などの指標を追うだけでは、単純に目標と現状を差分して「来月はこのくらい伸ばそう」といった漠然とした方針しか立てられず、実務に生かしにくかった。そこで、いろいろなステータスの顧客を一緒くたにせず、きちんと分解して把握するところを出発点にしようと考えた。

 以降、オンライン、オフライン問わずさまざまな事業でこの階段図を活用してきた。オフラインの事業で顧客IDを完全に把握できていなかったとしても、おおまかに全体像をつかむのに役立つ。階段図を通して現状の課題がどこにあるかを発見し、確度高く施策を打っていくことができるのだ。

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