マーケティングに必要なのは、経験と知識だ。特に正しい知識を身に付ければ、マーケティングの成功の確率と精度を引き上げられる。本連載では、マーケター向け学習事業のグロースX(東京・渋谷)が開発するアプリに盛り込んでいる人気クイズなどを軸に、今日から役立つ知識を伝えていく。最初のテーマは「KPI(重要業績評価指標)の管理と改善」だ。数字の見方や判断基準を養うポイントを、ナチュラルローソンやニトリでマーケティングの要職を歴任してきた田岡敬が解説する。

(画像/Shutterstock)
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次の3つは、ある食品EC事業会社の現在の数値を表している。これら3つの数字を一般的な通販会社の数値と比べた場合、改善の余地があるのはどれか

(1)新規顧客のうち、2回目も購入した人の割合は20%
(2)アプリのプッシュ通知のCTR(クリック率)は50%
(3)無料のお試しセットのCPA(顧客獲得単価)は500円

 いかがだろうか。正解は(1)の新規顧客のうち、2回目の購入をした人の割合だ。フリークエンシー(頻度)が2回目という意味を表す「F2転換率」と表される指標だ。その理由を詳しく解説していこう。

 設問の各KPIにおいて「数値の相場はどれくらいか」という観点で考えてみよう。その範囲を大きく外れている項目が、改善の余地が大きく、また対応が急務であるといえる。

 まず、(1)のF2転換率20%という数字だが、実は非常に低い数値だ。毎年一定数の新規顧客を獲得しているのに、そのうち80%が1回きりという、自転車操業で不安定なビジネスになっている。業界によっても異なるが、ECサイトの場合、2回目の購入率は30~50%を維持しなければ、事業を持続させるのは年々厳しくなる。なお、定期購入サービスが事業の根幹で、初回から定期購入者の獲得施策を実施している場合はさらに高い数値を目指す必要がある。

 次に(2)だが、アプリのプッシュ通知のCTRが50%という数値は、低いという印象はない。最後に(3)のCPAだが、これは数字だけで良しあしを判断するのが難しい指標だ。というのも、あくまでも無料お試しセットの申込者の獲得にすぎず、本商品購入への転換率や、1人当たりのLTV(顧客生涯価値)といった指標が分からないからだ。これらの指標次第で判断は変わる。こういった理由から(1)への対処を優先すべきだと考えられる。

KGIへのインパクトが大きいKPIに投資する

 上記の設問のような数字から課題を瞬時に判断するうえで必要な「数値を大まかに見積もり、素早く意思決定をする力」、すなわち「概算力」について今回は解説したい。適切なKPI管理とその改善に必要な要素は大きく次の3つが挙げられる。

(1)KGI(重要目標達成指標)を適切なKPIに分解できること
(2)KPIの対象となる顧客セグメントの分母=N数を把握し、1ポイント増加時の売り上げや限界利益の増加量を把握すること
(3)数字に対する“相場観”を持つこと

 この3つを組み合わせて、事業への影響が大きい施策を見極めることが重要だ。事業インパクトを見積もる際に大まかな数値で素早く計算する力が概算力である。概算力を鍛えることで、素早く意思決定を行えるようになる。

 まず1つ目の、KGIを適切なKPIに分解することから解説しよう。KPIは、平たくいうとKGIを分解した指標だ。KGIは「ゴール」とうたうだけあって最終目標になるため、高めるために「何をするか」の活動は含まれない。KGIを適切にKPIに分解し、「どのKPIに注力するか」を見極めて、はじめてマーケティングの活動が決まる。

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