2022年1月4日発売の「日経トレンディ2022年2月号」では、「ほったらかし株&投信」を特集。コロナ禍の停滞から急回復を見せている世界経済。レオス・キャピタルワークスの経済調査室長・三宅一弘氏に、22年の経済や株式市場に対する見立てと、個人投資家が取るべき戦略について聞いた。
※日経トレンディ2022年2月号の記事を再構成
三宅一弘 氏
――2022年の株式相場はどのような動きになると予想していますか。
企業収益を見ると、コロナ禍で20年に大きく落ち込んだ後、21年にはV字回復を遂げました。どの時点を出発点とするかにもよりますが、22年は日本のみならず米国、欧州共にEPS(1株当たり利益)の成長率が10%前後になると予想しています。
国内に目を向けると、21年はワクチン接種の遅れによる業績懸念や、衆議院議員選挙の結果がどう転ぶか分からないといった政治的不透明感もあり、欧米に比べて日本株は出遅れ感が目立ちました。日経平均株価の予想PER(株価収益率)は14倍を割る水準まで下がり、21年11月末時点で日米のPERの差は7ポイントまで拡大。これは過去35年間で最大の格差です。
振り返ると21年夏は、半導体不足による自動車の大減産もあり景況感が悪化しましたが、秋以降は減産分を取り戻す「挽回生産」が進み、新車の供給も回復の見込み。また、ワクチン接種率もG7(主要7カ国)中、日本が最も高くなっています。業績回復がより鮮明になり、新型コロナもこのまま抑制できるようなら、22年前半は日本株への見直しが進み、ようやく欧米にキャッチアップするのではないかと期待できます。これらを織り込んで、22年の日経平均は下値2万7500円から上値3万5000円ぐらいのレンジを見込んでいます。
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「米中新冷戦」でブロック経済化が進む可能性
――22年の世界経済を見る上で、注目のポイントを教えてください。
大きく分けて、米国の量的金融緩和の縮小と利上げの時期、米中関係の行方、そして引き続き新型コロナの動向の3つですね。21年12月、景気回復とインフレの加速を背景に、米FRB(連邦準備理事会)は、テーパリング(量的緩和の縮小)の終了時期を22年3月に前倒し、22年中に3回の利上げを見込むと発表しました。
米国のインフレは、原油や天然ガスなどの資源高、部材不足による供給制約、経済再開による需給の不一致などの要因が絡み合ったもの。原油高については、OPEC(石油輸出機構)プラスの加盟国が日量40万バレルずつ石油を増産する方針を続けることに加え、米国や日本などが石油備蓄を放出すると表明したこともあり、冬場の需要期を過ぎた春先には、供給超過になることが予想されています。
また、東南アジア地域の供給体制はコロナ禍の鎮静化で工場再開に向かい、部材の供給制約も解消方向です。人手不足や物流の混乱などによる一時的な需要超過も時間が経てば落ち着いてくると思います。このように、インフレ圧力については緩和の兆しが見えるものの、米国の物価上昇と金融政策には引き続き注視が必要です。
2つ目の下振れリスクは、対立が深まる米中関係です。22年11月に米国では2年後の大統領選を占う中間選挙、中国でも秋には習近平国家主席の任期延長が目されている中国共産党大会が予定されています。“弱腰”と言われる米バイデン政権は支持率が久しく低迷していますし、中国も5年に一度の重要な党大会を控えていることから、互いの譲歩はなく、今後の対立はより先鋭化することでしょう。「米中新冷戦」が構造化することで、東西冷戦時のようにブロック経済化が進むことも想定されます。22年はフランス、日本でも選挙があるので、米中だけでなく主要国の選挙の行方も、併せてウオッチしておくといいですね。
新型コロナについては、オミクロン株など新たな変異株の発生がリスク要因。一方で、第一次世界大戦中に猛威を振るったスペインかぜと同様、「パンデミックはワクチン接種や集団免疫の獲得によって、だいたい3年で収束する」という見立てもあります。個人的にはコロナ禍が峠を過ぎ、いよいよ収束に向かう節目の年となることを期待しています。
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