2022年1月4日発売の「日経トレンディ2022年2月号」では、「ほったらかし株&投信」を特集。会社から早期リタイアし、経済的な自立を目指す新しい生き方「FIRE(ファイア)」が一大ムーブメントを巻き起こしている。しかし、年金制度の手厚い日本では著しく不利になる。そこで、老後への備えも効率的に蓄えておく“日本版FIRE”の最適解を探った。
※日経トレンディ2022年2月号の記事を再構成
革命的な人生プランか、はたまたただの夢物語か──。株式投資などで資産を一定以上ためて定年より早く会社を退職。余生は資産を運用した利益で生活し、お金の呪縛から解き放たれる。そんな、新しい生き方「FIRE(ファイア)」が自由を求める若年層や閉塞感を抱えている30代、40代を中心に一大ムーブメントを巻き起こしている。
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FIREとは、経済的自立を意味する「Financial Independence」と早期リタイアを意味する「Retire Early」を組み合わせた造語で、基本ルールはこうだ。まず25年分の生活費を用意して、それを4%で運用する。例えば、生活費が年400万円の家庭が、1億円の資産を築いて年利4%で運用益を得れば、理論上は永続的に資産を維持したままで暮らしていける。
しかし、米国発のFIRE理論を日本に当てはめようとすると、いくつかのリスクが顕在化する。必ず考慮しなければならないのは会社を辞めることによる厚生年金の喪失だ。日本では年金積立額の半分を会社が負担してくれるため、会社員の老後は手厚く守られている。
一般的な平均標準報酬月額32万円の人が40歳でリタイアすると、65歳まで勤め上げた場合に比べてもらえる年金額が約50万円も減る。「国民年金だけでは老後の備えが少なく、FIREするリスクは給与収入の途絶だけではない」(社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏)。人生100年時代といわれ長寿化が進む中、無期型の年金が減少するのは痛手だ。
FIREの落とし穴
①年金制度の手厚い日本ではリタイアが著しく不利に
■リタイア年齢に応じて年金が増減
上の表は、平均標準報酬月額32万円(生涯の平均年収384万円)で試算した、リタイア年齢ともらえる年金額。40歳でリタイアすると、65歳まで勤め上げた場合に比べて、年53万円も年金受給額が下がる(井戸美枝氏による試算)。
②そもそも1億円では全く資金が足りない
■FIREに必要なお金は莫大
上の表は、1年間の生活費を310万円としたときに、90歳まで生きた場合の必要総額の試算。投資がうまくいかず、FIRE生活が破綻すると重大なリスクにさらされる。実際には、介護や医療費、追加で自宅のリフォーム費用なども必要となる(井戸美枝氏による試算)。
日本に合った“緩いFIRE”とは
では、日本ではFIREはできないのか。それは違う。老後の備えである厚生年金に加入し続けながら仕事をセミリタイアする“緩いFIRE”もある。正社員での仕事ではなく、アルバイト&パートを行いながら運用益との両輪で生活していくスタイル。週20時間以上、賃金が月8万8000円以上などいくつかの条件があるものの、厚生年金の適用ハードルは高くない。しかも、2022年10月以降には厚生年金加入の条件となる企業側の事業規模や見込み雇用期間が緩和される追い風も吹く。
少しだけ早くリタイアする“プチFIRE“を目指すのも手だ。「5年」の経済的自由を手にする方法で、リタイア時期は60歳。退職金、企業年金も基本的に満額で給付され、公的年金水準も60歳までの加入歴に基づいて支給されるため、シンプルに5年分の生活費さえあればよい。
♦ライトFIRE♦
厚生年金を確実に得ながら会社は辞めて自由を確保
会社員でなくとも一定の条件を満たすことで、パート&アルバイトとして働けば厚生年金に加入できる。一定程度の年収が見込めるうえ、老後資金がショートするリスクをある程度カットすることができる。
♦プチFIRE♦
5年早く会社を辞めて、老後前の自由を楽しむ
5年分の生活費を60歳までに蓄えて、60歳で会社を辞める方法もある。年金や退職金も十分にもらえるので、老後も含めたマネープランの見通しが立てやすい。
♦フルFIRE♦
40代で会社を辞めて運用益のみで生きる
完全に会社を辞めて投資収入だけで生活する状態。国民年金はもらえるが、ぎりぎりの資金繰りを続けると医療費など余計な出費が発生したときに家計が破綻しやすい。
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