Amazon&楽天 売れるマーケ活用2022 第7回

中国発の家電メーカーのアンカー・ジャパン(東京・千代田)は、スマートフォン向けの周辺機器を幅広く展開する。主力商品はモバイルバッテリーなど、安価でコモディティー(汎用)な商品が中心だ。にもかかわらず、「指名買い」されるほどのブランド力を身に付けた。日本に上陸した初年の2013年に約9億円だった国内の売り上げは、20年に210億円を突破した。なぜ、それほど消費者の支持を得られるようになったのか。その秘密は「Amazonファースト」のマーケティング戦略にある。

中国発の家電メーカーのアンカー・ジャパン(東京・千代田)は「Amazon.co.jp」を活用して、強力なブランドに成長した
中国発の家電メーカーのアンカー・ジャパン(東京・千代田)は「Amazon.co.jp」を活用して、強力なブランドに成長した

 アンカーが2020年12月に発売したBluetooth対応のワイヤレススピーカー「Soundcore 3」は前モデルに改善を加えて、日本向けに発売した商品だ。出力増加、アプリによるイコライザー設定機能、USB Type-Cへの変更など、日本の顧客ニーズに合った製品を開発して販売した。その改善点はECモール「Amazon.co.jp」に寄せられたレビューを基にしている。

アンカーが2020年12月に発売したBluetooth対応のワイヤレススピーカー「Soundcore 3」は、Amazonのレビューを基に日本向けに開発された
アンカーが2020年12月に発売したBluetooth対応のワイヤレススピーカー「Soundcore 3」は、Amazonのレビューを基に日本向けに開発された

前回(第6回)はこちら

 アンカーではAmazonの商品ページにつけられた星3つ以下の評価をネガティブレビュー、同4つ以上の評価をポジティブレビューに分類し、その割合の変化に担当者は常に気を配っている。ネガティブの割合が急速に高まっている場合は、製品の不具合などが発生している恐れがあるため、詳細を確認する。重大な欠点があれば、すぐに本国に改善案を求めるなどのアクションにつなげてきた。改善すべき点がパッケージなどであれば数週間、ハードウエアの場合は数カ月以内には対応する。

 改善後もレビューの推移は逐次分析する。改善前と比較して星の数が増え、評価が高まれば顧客の満足度が高まったと判断する。「レビューが下がると売れなくなるため、いかに早く改善して、レビューを高められるかが重要だ」とアンカー・ジャパン代表取締役最高経営責任者(CEO)の猿渡歩氏は言う。

日本のレビューは世界で勝つための重要な資産

 日本展開を始めてから、アンカーは一貫してAmazonのレビューを事業の根幹に成長してきた。「レビューは資産。カスタマーサポートを内製化しているのも、顧客の声をすぐに製品に反映させるためだ」と猿渡氏はレビューの重要性を説く。猿渡氏も担当者の報告を受け、週次でレビューに目を通す。売り上げ規模が200億円を超えた今でも、それは変わらない。とりわけ、日本のレビューは重要だ。「米国と日本は国民性が異なる。細かい点でも評価が下がり、同じ商品でも他国に比べて点数が悪くなるケースも多い」(猿渡氏)からだ。

 例えば、箱がつぶれているといった、商品の品質そのものとは無関係の欠点でも評価が下がる。その場合は箱の強度を上げるべきだと改善点を伝える。ところが、細かすぎる改善点ゆえに、本国からは「なぜそこまでする必要があるのか」と反論されたこともあるという。だが、「それだけ品質に厳しいということは、逆に言えば日本で星4つの評価が取れれば、米国では星5つの評価が取れる」(猿渡氏)と説得してきた。これこそが、アンカーのブランド力の源泉だ。

2021年10月にアンカー・ジャパン(東京・千代田)の代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任した猿渡歩氏は、今でも週次でAmazonのレビューに目を通すという
2021年10月にアンカー・ジャパン(東京・千代田)の代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任した猿渡歩氏は、今でも週次でAmazonのレビューに目を通すという

 使い古された言葉かもしれないが、アンカーの成功は「選択と集中」にある。アンカーは製品の開発・改善にすべてのリソースを割いてきた。それが、高品質・低価格という認識をつくり上げ、結果的に顧客から高い支持を得るブランドへと成長した。代わりに捨てたのは自社の販路だ。

 「自社ECサイトの場合、商品を受注し、届けるまでのサプライチェーンを組まなければならない。オペレーションコストも高い」(猿渡氏)。これが日本参入時のアンカー・ジャパンのような、数人のスタートアップにとっては高いハードルになる。また、仮に配送の仕組みを確立できたとしても「ブランド力のない製品は、デジタルマーケティングを駆使してもCPA(顧客獲得単価)は高くなる」と猿渡氏は言う。広告費がかさめばその分、商品の開発・改善にかけられる費用が減る。

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