Amazon&楽天 売れるマーケ活用2022 第6回

Amazonセラー(出品者)の買収ビジネスを日本でも本格化させている米セラシオ。一方、日本勢ではEC支援会社のいつもが2021年4月に参入、すでに8つのブランドを引き継いでいる。ECノウハウを生かし、買収後、僅か3カ月でEC売り上げが135%を記録したブランドも出てきた。その手法とは?

いつもがEC事業を引き継いだ「白坂花店」のAmazonストア。「ベストセラー」マークが付く有力アイテムを持つ生花ブランドだ
いつもがEC事業を引き継いだ「白坂花店」のAmazonストア。「ベストセラー」マークが付く有力アイテムを持つ生花ブランドだ

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 いつもが手掛けるECブランドの買収ビジネスの基本的なモデルは、米セラシオのそれと同様だ。有力ブランドを展開するEC事業者の株式を取得するか、ブランドとECアカウントの譲渡を受けるなどし、自らのECノウハウを使ってさらに成長させる。売却益を狙うのではなく、強いECブランドに育てて利益を最大化する戦略だ。

 セラシオはAmazonを中心とした世界的なノウハウと成長実績を強みとするが、いつもは「これまでのEC支援を通して楽天市場など他のECモールでも成功ロジックを積み重ねてきている」(いつも副社長の望月智之氏)。それ故、同社はAmazonセラー(出品者)のみならず、国内ECモールへの出店ブランドや、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)などの自社ECサイトを展開するブランドまで広く買収対象としている。

 望月氏は、「どのEC形態でも売り上げを伸ばせるし、そのブランドがまだ出店していないECモールへのマルチチャネル展開を進めることでも成長を加速できる」と自信を見せる。

EC人材や資金、マーケティングノウハウなどに乏しく、成長可能性があるのに伸ばしきれていない有力ブランドを取得。いつものECノウハウを注入して、急成長させる
EC人材や資金、マーケティングノウハウなどに乏しく、成長可能性があるのに伸ばしきれていない有力ブランドを取得。いつものECノウハウを注入して、急成長させる

 買収先のコアターゲットは、売り上げ規模5000万~5億円規模のECブランドだ。商品カテゴリーは、化粧品から食品、ベビー、日用雑貨、インテリア、ペット、電化製品、アパレルなど幅広いカテゴリーに対応する。

 もちろん、セラシオ同様、不振ブランドには手を出さない。Amazon.co.jpなら、「Amazon's Choice」や「ベストセラー」マークを獲得しているブランド、楽天市場なら「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)」や月間MVPの「楽天ショップ・オブ・ザ・マンス」に輝いたブランドが優先的な買収対象となる。

 それに加え、「レビューの満足度と内容も重視している」(望月氏)。例えば、テキスト解析でレビューを分析し、どんな不満項目が挙がっているのか精査する。「壊れやすい」「重い」などと、致命傷になりかねない不満が多い場合は買収を見送る。「我々が買収しても、商品の根本的なところはテコ入れできない。あくまで実力のある商品を見極めて、それを基にECで売れるラインアップをそろえたり、マーケや物流を見直したりし、成長させていく事業」(望月氏)と話す。

鍵を握るのは、楽天市場への対応

 基本的に利益が出ているブランドを優先するが、例外もある。商品が優れているのに赤字に陥っているブランドは、物流経費が高すぎたり、マーケ手法に改善の余地があったりと、やり方が悪い場合がある。それが買収後に成長させるための突破口となるのだが、「このままEC事業を続けたいという場合は、出資するか、従来通りEC支援サービスを受託することもできる。当社はどれでも構わない」(望月氏)という。

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