Amazon&楽天 売れるマーケ活用2022 第3回

楽天グループが、企業・ブランド向けに楽天版BI(ビジネスインテリジェンス)とも呼べるツールを開発中であることが明らかになった。その名も「RMP-For Brands Analysis Report」。ECモール「楽天市場」上の広告施策や売り上げデータの相関性をビジュアライズ化し、ダッシュボードで統合的に管理できるツールだ。活用企業は、これまで分析しづらかった楽天市場内のカスタマージャーニーを可視化し、売り上げ向上を目指した施策の勝率を上げられる。2022年1月から一部の企業にテスト的に導入し始めており、22年第2四半期より正式提供を開始する予定だ。

楽天グループは楽天版BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとも呼べる新たなデータ分析基盤「RMP-For Brands Analysis Report」を開発中だ(写真/Shutterstock)
楽天グループは楽天版BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとも呼べる新たなデータ分析基盤「RMP-For Brands Analysis Report」を開発中だ(写真/Shutterstock)

 RMP-For Brands Analysis Reportは、楽天が提供する複数の広告サービスの効果測定データや、出店者の楽天市場店で買い物をする顧客層といったデータを有機的に結び付けて分析できるダッシュボード機能だ。これまでは施策ごとの個別分析しかできなかったため、購買に結び付いた広告に評価が偏重する傾向があったという。

前回(第2回)はこちら

 例えば、ある楽天市場の出店者が商品の認知拡大を狙い、楽天が提供する動画広告を活用したとする。その動画広告を閲覧した利用者はすぐには商品を購入せず、後日、楽天市場内で検索したときに表示された、検索連動型広告経由で商品を購入した。その場合、従来はデータが連係できていなかったため、検索連動型広告だけが購買に結び付いた広告として評価されてきた。

 だが、実際は最初に動画広告を見たことで商品の認知や購入意欲が高まったことが要因としては大きく、実際に購入を決めたタイミングでたまたま表示された検索連動型広告をクリックしたにすぎなかったかもしれない。検索連動型広告だけを評価して、動画広告の出稿を止めれば、新しい顧客と商品の出合いを創出できず、むしろ広告効果は悪化する可能性がある。これを防ぐには動画広告のアシスト効果も鑑みて分析し、全体最適を施す必要がある。

 ところが、「楽天市場は街の小売店が集まるショッピングモールから始まった。そのため、我々自身も楽天市場を『売り場』と捉え、ROAS(広告費用対効果)ベースで商品がどれだけ売れたかを評価する広告ばかりを提供してきたのが正直なところ」と楽天グループコマースカンパニーマーケットプレイス事業部の春山宜輝ジェネラルマネージャーは言う。

 中小企業のための“ネット商店街”であれば、そうした広告商品だけでも十分だったかもしれない。ただ、楽天市場の顧客規模が拡大するにつれ、大手メーカーやブランド広告主など、活用する企業の幅が広がり、マーケティングの目的も多岐にわたるようになっている。

楽天市場内のカスタマージャーニーをデータで可視化

 RMP-For Brands Analysis Reportはそうした大手企業が、楽天市場をより高度に活用できるように開発した。楽天が提供する複数の広告効果を横断的に分析し、全体最適をできるようにする分析基盤だ。企業・ブランド主導で楽天市場内での売り上げ推移や実施したキャンペーン、広告効果などをダッシュボード内で分析できるようにし、効率的にPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回せるツールを開発している。

 「楽天市場内での購買プロセスを認知、興味・検討、購買と分けたときに、広告の接触によって、顧客がどのようなカスタマージャーニーをたどって購買に至ったのかがデータで分かるようになる」と春山氏は説明する。

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