
有望なAmazonセラー(出品者)を買収し、独自のECノウハウで急成長させる新たなビジネスが生まれている。いわゆる「Amazonアグリゲーター」のパイオニアが米セラシオだ。買収したブランドの8~9割が利益を増やし、中には売り上げ9倍以上に成長させた例もある。2022年に日本での活動を本格化するというセラシオのAmazon攻略術に迫る。
「世界で強力なブランドを複数持つ米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のように、ECネーティブで100年続く消費財ブランドの集合体をつくる」。そう語るのは、セラシオ・ジャパン(東京・中央)で最高協業責任者を務める小澤良介氏だ。
これは決して荒唐無稽な話ではない。事実、米セラシオは2018年に創業してから、フィットネスからクルマ、キッチン、アウトドア、ペット、生活家電まで、様々な分野の優良なAmazonセラー(出品者)を次々に買収。例えば、ペット用消臭剤ブランドの米Angry Orange(アングリーオレンジ)など、独自のECノウハウを駆使して買収したブランドを急成長させる新たなビジネスモデルで実績を残している。創業から僅か2年で「ユニコーン」(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)となった、EC業界の風雲児だ。
そんな米セラシオが日本に上陸したのは、21年3月。約1年の助走期間を経て、「22年は日本での買収を本格化していく。270億円の資金を用意しており、25年までに日本で50~100社の取得を目指す」(小澤氏)。買収ブランドの選定を慎重に進めてきており、日本での第1号案件は22年1月に決定した。Amazon.co.jpで頭角を現している年商3億円以上のスポーツ・アウトドアブランドを事業承継するという。
米国ではセラシオと同様のビジネスを手掛ける後発企業が10社近く登場しており、日本でも21年に入ってEC支援会社のいつもなどが参戦。新型コロナウイルス禍でEC市場が急成長する裏で、飛躍が見込まれるECブランドの“青田買い”が繰り広げられているのだ。
では、セラシオとは一体何者か。詳しく解説していこう。
買収ブランドは平均で利益2倍以上に
Amazonセラーを買収する企業(Amazonアグリゲーター)と聞くと、何やら不穏なイメージを持つ人がいるかもしれない。しかし、セラシオが行っているのは敵対的買収でも、買収後しばらくして売却益を狙う投資でもない。強いECブランドの“原石”を発掘し、自らのポートフォリオに加えて事業として育てていく。実際、「米セラシオはこれまで200以上のブランドを買収しているが、1つも売却したブランドはない」(小澤氏)。
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