NFTバブルは本物か 第1回

NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)市場が拡大している。大手企業が相次ぎ参入しているほか、高額で売れたというNFTコンテンツについての報道も相次ぐ。“NFTバブル”ともとれる市場の拡大は本物なのか、実務の現場、特にコンテンツホルダーはどのように活用しようとしているのか――。国内でNFT事業に取り組む各社を取材した。

 「デジタルな作品がやっと認められた」――。アレクシー・アンドレ氏は、NFTかいわいで有名な「ジェネラティブアート」のアーティストだ。英国グラスゴーで2021年10月31日から開催された「第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議」(COP26)。期間中の11月5日、アーティストの一人として関連イベントに参加した。地球温暖化をイメージしたジェネラティブアートの作品をCOP26会場の壁面に投影したのだ。これまで、デジタル作品をフリーで世に出していた“フリーネーティブ”のアーティストだと自負するアンドレ氏。ライブコンサートでの映像やインスタレーション作品などは“製作”より“開発”になってしまい、「アート作品」という「価値」をつけるのが難しかった。

 でも、NFTならそうではない。アート作品として売れる。そして、作品の設計図はブロックチェーンがある限り消えない。美術作品なら、古くなれば修復が必要だが、ブロックチェーン上にあるデジタル作品なら設計図を基に、劣化しないNFT作品をいつでも再現できる。作品を作った自分がいなくても、だ。「そこが魅力、その技術だからこそできる」と目を大きく見開いて話すアンドレ氏。2020年8月からNFTで作品を販売しはじめ、2000個以上の作品を公開してきた。直接販売した作品では11.55イーサリアム(ETH、暗号資産。執筆時点のレートで換算すると約530万円)で売れた作品もある。

アレクシー・アンドレ氏のNFT作品。画面キャプチャーなので止まって見えるが、これは動画作品
アレクシー・アンドレ氏のNFT作品。画面キャプチャーなので止まって見えるが、これは動画作品

 「ちょっとバブルだけど……」。そう言ってはにかむと話が止まらなくなったのは、NFTで広がったデジタルアートの可能性についてだ。「NFTのおかげでデジタルアートをそのままコレクターに渡して、デジタルな形で楽しめる環境がそろってきた。オンラインでやりとりできるので、相手は“全世界”。ギャラリーで見てアートを購入するのと比べると大きくマーケットが広がったと言える。自分の作品がメジャーなアートオークションハウスのChristie'sとSotheby'sに出たことは驚きだった。革命的な進歩だと思うが、冷静に考えると、アート作品でないものも含めてNFTの活用が当たり前になるのはまだまだ先」

 ようやく入り口に立ったNFTは、世界中のアーティストの作品作りを後押しする。

日本で一番売れた作品にはストーリーがあった

 NFTがデジタルコンテンツの流通を変えようとしている。デジタルトレーディングカード、雑誌のデジタル付録、セル画のデジタル証明……。さまざまな分野で事業の可能性を探る動きが加速する。米国でバスケットボールのNFTコンテンツである「NBA Top Shot」などが海外で人気となってから「国内の事業者が一斉に手を挙げた」(NFT事業の関係者)。一定の準備期間を経て、NFTコンテンツは一気に市場にあふれ始めた。

 「“NFTバブル”? 隣は何をする人ぞ」――関連事業を手掛ける企業が気になるのは他社の動向だろう。連日のように届く関連ニュースを見ながら企画を考える中、浮かんできたのは3つの疑問だ。「高額で売れることも少なくないNFT。なぜそんなに売れるのか」「NFTに向いているコンテンツは何か」、そして「本当に今後、NFTは広がるのか」――。この3つの疑問を胸に秘めながら取材した本特集。見えてきたのは冒頭のアンドレ氏の言葉にあるような、NFTの技術がコンテンツビジネスを大きく変えるに違いないという「確信」である。


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