変わる消費 新しい買い方2022 第7回

1990年代半ば以降に生まれたZ世代の間で、自分が愛好するアニメキャラクターやアイドル、声優などを、消費を通じて応援する「推し活」が浸透している。日経MJがZ世代の中の16~26歳約5000人に「推し活」をしているかどうかを聞いたところ、35.6%が推し活を楽しんでいると回答した。同様の質問をした27~38歳のミレニアル世代の回答(計19.6%)を16.0ポイント上回った。Z世代がこれから消費や社会の担い手になっていくなか、新しい買い方といえる「推し活」経済圏はさらに拡大しそうだ。

「推し活」するZ世代はSHIBUYA109へ向かう
「推し活」するZ世代はSHIBUYA109へ向かう

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 東京・渋谷にある商業施設「SHIBUYA109」。1990年代後半には「ギャルファッション」など個性的な若い女性向け衣料品店が軒を連ね、若者向けファッションの聖地として人気を集めてきた。現在、若者たちが109を訪れる大きな理由のひとつが、アニメやアイドルなどのグッズの購入だ。

 SHIBUYA109でスマートフォン片手に友人と一緒にK-POPアイドルのモニターを撮影するのは、神奈川県から来た女子高校生(18)。かばんの中には「推し」のアクリルスタンドを常備している。好きなアイドルがデビューした時には、アルバイトでためたお金で5万円分のCDを購入したという。「自分が好きじゃなくても友達の推しを見つけたら写真を撮ったり、教えてあげたりする」

 シブヤ109ラボの長田麻衣所長は「若者の消費はSNSで何をアップできるかから逆算するようになっている」と指摘する。イベント会場やコラボカフェなど、SNSをきっかけに友人との交流につながっているという。

 自分が愛好するアニメキャラクターやアイドル、声優などを、消費を通じて応援する「推し活」を楽しむ若者が増えている。アニメや漫画に熱中するのは一握りの愛好家に限られるイメージもあったが、今の若者にとってアニメや漫画を楽しむことは当たり前となった。

 フジテレビが毎週月曜午後9時に放送する恋愛ドラマが「月9」として、若者の共感を集めたように「有名アニメは、かつての月9みたいなもの」。企業向けにZ世代コンサルティングを手掛けるネオレア(東京・渋谷)の戎光璃社長(23)は指摘する。

 Z世代の間で浸透する「推し活」は、若者の街、渋谷の姿も変えようとしている。

 「渋谷といえばオタクの聖地」(21歳女子大生)「アニメも韓流もゴスロリもなんでもそろっている」(22歳女子大生)。アイドルやK-POP、アニメ、ゲーム……。渋谷は流行の最先端を走る衣料品やコスメ、CDなどを買い物する場だったが、最近は自分が愛好するアイドルやアニメキャラクターを応援する「推し活」を楽しもうと、渋谷を訪れる若者も多い。

 「売らない店」を掲げる丸井グループは2015年、ファッションビル「マルイシティ渋谷」をイベントなどコト消費を楽しめる「渋谷MODI(モディ)」に業態転換した。1階の「SHIBUYA BASE」は、ネット通販で人気を集めるブランドが期間限定でリアル店舗を営業し、熱狂的なブランドのファンなどでにぎわいを見せる。

 ギャルファッションの聖地として名をはせた商業施設「SHIBUYA109」も現在は、推し活の場となっている。ポップアップストア「DISP!!!(ディスプ)」で、アイドルやアニメ関連の期間限定店を相次ぎ誘致している。

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