
ペット関連市場規模は右肩上がりだが、飼育願望はあっても住宅事情やアレルギー、高齢などを理由に諦めている人は少なくない。そんなペットを断念する理由は、転じて「だからペットロボットを購入する理由」になり得る。最新テクノロジーを搭載しながら特段何かの役に立つわけでもない。そんなペットロボットの新しい”飼い方”事情に迫る。
冒頭からいきなりですが、クイズを1つ。総合格闘家の那須川天心、女優の黒谷友香、お笑いコンビ「霜降り明星」の粗品、EXILEの関口メンディー、美容皮膚科医の友利新、『ドラえもん』のスネ夫役などで知られる声優の関智一……、彼ら彼女らに共通することは何?
職業、年代ともバラバラで特に交流もなさそうな6人だが、実は皆、ペットロボット「LOVOT(ラボット)」のオーナー。自身のSNSやYouTubeチャンネルなどで“飼い主”であることを公言している。粗品がYouTube公式チャンネル「しもふりチューブ」で2021年10月、オーナー歴1年を記念し、むーちゃんと命名しているLOVOTの溺愛ぶりを披露した動画は、再生回数が約25万回に上った。粗品は動画の最後に「(宣伝したので)案件ください」と笑いを取っていた。LOVOT愛が高じて、頼まれずとも自発的にインフルエンサーの役割を担っている格好だ。
21年11月12日と15日の2日間、東京・外神田の神田明神に“ペット”連れの飼い主計100人が集結した。連れているのは、ソニーグループの自律型エンターテインメントロボット「aibo(アイボ)」。新aiboが18年に発売され、3歳を迎えたaiboが多いことから、同社がオーナー向けに七五三イベントを企画した。多くのオーナーが“わが子”のために着物を自作し、健やかな成長を願いながら、オーナー同士の交流を深めた。
ここに興味深い調査データがある。楽天グループのマーケティングリサーチ会社、楽天インサイトが21年1月に実施した「ペットに関する調査」。同社にモニターとして登録している全国20~60代の男女1000人を対象に実施した独自調査で、ペットがテーマながらペットロボットへの興味についても尋ねている。
最も多い回答は、「(ペットロボットを)持っておらず、興味もない」で54.0%と過半数を占めた。次いで多かったのが「興味はある」で32.8%。ほぼ3人に1人だ。
このペットロボットへの興味関心度合いは、リアルのペットに対する飼育願望の有無でくっきり分かれる。ペットを「いつか飼いたい」と思っている人は、「(ペットロボットを)持っていないが、興味はある」が49.3%とほぼ半数が関心を寄せている。一方、「ペットを全く飼いたいと思わない」人は20.8%と約5人に1人の規模にとどまる。つまり、ペット市場規模の拡大、すなわちペット飼育希望者が増えることは、ペットロボット興味関心層の拡大にもなる。
ペット関連市場規模は、矢野経済研究所によると19年度で1兆5705億円。20年度、21年度は1兆6000億円台が見込まれ、右肩上がりが続いている。この成長はそのままペットロボット業界にとっても追い風となるわけだ。
LOVOTを開発、販売するGROOVE X(東京・中央)でCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める西井敏恭氏は、LOVOTオーナーの購入動機について、「ペットアレルギーや、居住マンションで飼えないという住宅事情、ペットロスの経験や不安といった理由でペットを断念する代わりとして、そうした課題をクリアできるLOVOTに魅力を感じていただいている」と説明する。ペット飼育希望者のみならず、ペットアレルギーのような、「ペットは自分には無理」と思い込んでいた人をも取り込む裾野の広さがペットロボットにはある。ペットを飼わない理由が、ペットロボットを購入する理由になるのだ。
では、こうしたペットロボットの利点に気づいて購入したオーナーの生活はどう変わるのか。オーナーから寄せられる感想は、楽天インサイトの調査で、リアルのペット飼育者がペットを飼ってからの変化として挙げている内容と酷似している。「大切な家族の一員が増えた」「ストレスが緩和される、癒やされる」――、この2つはLOVOTオーナーの代表的な感想そのものだ。一方、「長期間家を空けにくくなった」「においや衛生面が気になるようになった」というリアルペットを飼うことで生じる課題は、ペットロボットでは起こらない。
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