変わる消費 新しい買い方2022 第2回

2022年、新しい買い物スタイルの1つとして移動販売が挙げられそうだ。三井不動産グループが東京湾岸エリアを中心に展開する「MIKKE! (ミッケ)」、メガネスーパーのトラックによる眼鏡販売がその好例だ。移動販売で商品の方が消費者の元へとやって来ることで生まれる新たな出合いが、衝動買いや高単価の購買を呼び込む。

三井不動産グループは東京湾岸エリアを中心に移動販売車「MIKKE! (ミッケ)」を展開する。2021年12月16日から20日にかけて豊洲公園(東京・江東)でクリスマスイベントを行い、移動販売車が集まった(写真提供/三井不動産)
三井不動産グループは東京湾岸エリアを中心に移動販売車「MIKKE! (ミッケ)」を展開する。2021年12月16日から20日にかけて豊洲公園(東京・江東)でクリスマスイベントを行い、移動販売車が集まった(写真提供/三井不動産)
[画像のクリックで拡大表示]

前回(第1回)はこちら

 「商業施設でもEC(電子商取引)でもない、“第三の買い物体験”をつくりたいと真剣に考えている」。そう語るのは、三井不動産グループで新規事業の開発・推進を担う企業・ShareTomorrowの須永尚社長だ。

 須永氏が第三の買い物体験と位置付けるのは、ShareTomorrowが手掛ける移動販売車「MIKKE! (ミッケ)」。同社は21年11月より、豊洲や晴海など東京湾岸エリアを中心に、ミッケを本格的に展開している。マンションやオフィスビル、駐車場、公園といったスペースに、食品や衣料品、健康雑貨などの商品を陳列した販売車を派遣するスタイルだ。21年12月26日時点で、41店舗が参加している。

 三井不動産グループが移動販売車を展開する背景には、新型コロナウイルス禍をきっかけとするライフスタイルの変化がある。テレワークの普及や外出自粛の影響で在宅時間が増加する一方で、テレワークを前提とした遠方への移住や複数拠点での生活など、暮らしが多様化している。そうした中で、「不動産として場を提供するだけではなく、そこにいる人たちに向けて多様な選択肢を示していくことで、あらゆるニーズを満たしていきたい」と須永氏は語る。

 そうした発想を踏まえて、身近な場所に新たな商品やサービスとの出合いを生み出すアプローチとして展開するのがミッケだ。昼と夕、1日2回販売車が入れ替わることから、「簡単に見積もって、2回×365日というオペレーションと考えると1年に730もの店が消費者の元にやって来る計算になる」(須永氏)。

 商業施設とは販売規模や販売形態も違うため単純比較はできないが、「アーバンドック ららぽーと豊洲」(東京・江東)に入っているのが214店舗(20年1月時点)であることを考慮すると、ミッケには消費者と商品との新たな出合いを増やす可能性がありそうだ。

 移動販売がもたらすメリットは、出店するテナントにもある。これまで出会うことのなかった消費者と新たに出会える上に、立ち寄った消費者に試食や試供品を提供してテストマーケティングに活用できる。「ミッケをきっかけにテナントを知り、実際にその販売店やECで購入するケースもあると聞いている」(ShareTomorrowミッケ事業本部 営業部長の後藤遼一氏)

 三井不動産としても、新たなテナントを発見する機会になる。「商業施設に『こういう店を入れてほしい』という要望があっても、すぐに応えることが難しかった。移動販売であれば、それが機動的にできるようになる」と後藤氏は言う。

セレンディピティーを生み出す

 移動販売車を通じて、商品の方が入れ代わり立ち代わり消費者の元へとやって来る。それによって生まれるのが、セレンディピティー(偶然の出合い)だ。