新品を買う際に「使用後のフリマアプリで売れる価格」を参考にする人が増えている。その実態に迫ろうと、慶應義塾大学大学院の山本晶准教授はフリマアプリを利用する人としない人との消費動向の違いや、フリマアプリでの売値が新品に払える金額にどのような影響を与えるのかなどを分析した。その結果をまとめた論文は、新たなマーケティングの可能性を示したものだった。今回はその後編をお届けする。
1648人分の実験データをコンジョイント分析
フリマアプリやネットオークションの利用者が商品を新品で購入する際、使い終わった後に「元値の何割で売れるか」といった情報がどのような影響を及ぼすのか。そんな疑問に対して実験を行い、その結果をまとめた論文が、山本晶准教授の「二次流通市場が一次流通市場における購買に及ぼす影響」だ。
慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授
この論文では「コンジョイント分析」という手法を用いて検証を行った。被験者にはメルカリなどフリマアプリの利用状況を質問し、「購入のみで利用した」「出品のみ(販売のみ)で利用した」「購入・出品(販売)両方で利用した」「これまで一度もフリマアプリを利用したことがない(=非ユーザー)」という4つのグループ(各412人)に分けた。その被験者に、商品が持つ4つの「属性」に関する「水準」を記した16の選択肢を見せた(属性と水準の詳細は【表1】【表2】を参照)。
被験者には選択肢として挙げた16種類の中から、4つの属性と水準を総合的に判断した上で、自分が「望ましい」と思う順に1位から16位まで順位をつけてもらった(コンジョイント分析の詳細については、前回「新商品の購入に「メルカリでの売値」が影響 実験で明らかに」を参照)。
▼関連記事 新商品の購入に「メルカリでの売値」が影響 実験で明らかにこうして得られた1648人分の「1位から16位までの望ましい(買いたい)順番」のデータを基に、統計的手法で分析することで、各属性に関して3~4つある水準にどれだけ「部分効用」があったかが推定され、数値で表される。この分析結果が【表4】「ジーンズの部分効用の推定値」と【表5】「タブレットの部分効用の推定値」だ。この図を読み解くことが、今回の論文の肝といえる。
「うれしさ」の度合いを推定値として数値化
ところで、論文にたびたび登場する「効用」がここで意味するところは何か。
「平たく言えば、被験者にとっての『うれしさ』です」と山本准教授。つまり、【表4】や【表5】に書かれた数値は、左側の縦列に書かれた属性の水準それぞれに対して、被験者がどれくらい「うれしい」と感じたのか、その度合いを数値で表しているのだ。
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