10年以上にわたって走り続けてきた女優・山本舞香が、出演する映画『カラダ探し』公開日の前日である2022年10月13日に25歳の誕生日を迎えた。良い作品を作るために共演者やスタッフを盛り上げるなど、年齢を重ねたことで仕事への取り組み方も変わってきたという。ここからの仕事への取り組み方をどのように考えているのだろうか。
※日経トレンディ2022年11月号より。詳しくは本誌参照
2022年10月14日に出演するホラー映画『カラダ探し』が公開され、10月20日からは主演ドラマ「Sister」が放送開始――。11年より芸能活動を本格的にスタートし、10年以上にわたって走り続けてきた女優・山本舞香が、映画公開日の前日である10月13日に25歳の誕生日を迎えた。25歳といえば、一般的に30代を意識し働き方や人生設計が変わり始める年齢。また女優にとっては、学生役から社会人役へシフトするなど、演じる役柄も変わる時期だ。10代から芸能界に身を置く山本舞香は、ここからの仕事への取り組み方をどのように考えているのだろうか。
――ドラマ「Sister」で演じるのはファッションデザイナーを目指す25歳という今の年齢とぴったりの役ですが、映画『カラダ探し』は高校生役です。25歳を迎え、高校生を演じることはどのように感じますか?
逆にどう思います? 『カラダ探し』は21年夏から秋にかけて撮影したので23歳のときだったんですけど、まだ制服イケますよね?(笑) 自分の中ではあと3~4年はいけるんじゃないかなって考えているんですけど、事務所がどう思っているか。学生の役をできるのは演技の幅の広さにもなると思います。でも、どんどん学生役に挑戦するかどうかとなるとそれは別かな。『カラダ探し』は、メインキャストが6人なんですけど、大人数の学園ものは性格的に無理だなと。集団行動が無理だから(笑)。
共演者やスタッフに心遣い
――『カラダ探し』で共演した主要キャストは、主演の橋本環奈が23歳。共演が眞栄田郷敦(22歳)、神尾楓珠(23歳)、醍醐虎汰朗(22歳)、横田真悠(23歳)と、みなさんが山本さんより年下でしたが、撮影現場ではどのように接していたんでしょうか。
まず一番年上ではあるので、一応あまりふざけられないなというのはありました(笑)。それに、私と環奈以外は全員、人見知りだったんです。私は、真悠と郷敦とこた(醍醐虎汰朗)は今回が初めてのお仕事。最初、現場はぎこちない雰囲気だったんです。だから、環奈と2人でみんなを盛り上げようとしていたというか。例えば、郷敦は「人と話すのは好きだけど、自分から話せない」っていうタイプだったので、マネジャーさんを通じてどういう子なのかを聞いて、「どう仲良くなっていこうかな」と考えながら毎日過ごしていましたね。そんなことを、一人ひとり性格が違うのでそれぞれに。
自分たちを支えてくれるスタッフさんにも声をかけていました。私たち俳優が入る前から現場にいて、撮影が終わると次の日の準備をしてくれてとみなさん疲れているので。あんまりやりすぎてもやらしいので、その加減は難しいんですけど(笑)。共演したみんなの中で、私のイメージって真逆だったみたいです。郷敦にも「一匹狼で物静かな感じだと思っていた」と言われたんです。
――どのような思いから、共演者やスタッフのみなさんに声をかけているんですか?
みんなで仲良く撮影できることが一番大事かなっていう。この作品は、6人が一致団結して“赤い人”と戦いながら、謎を解き明かしていく話。ホラーのシーンはもちろん怖いんですが、6人が戦う中で仲良くなっていく楽しいシーンも多いんです。こういうシーンは楽しく撮りたいので、みんなをなごませるようにと思っていました。気まずい芝居って、見ている人にも何となく伝わると思うので、それを出したくなかったんです。スタッフさんも巻き込んで楽しく撮影できたので、完成した作品を見るとみんなで“青春してる”シーンは良い雰囲気がしっかり映っていたなと思います。
積み重ねが次の仕事につながる
良い作品を作るために共演者やスタッフを盛り上げるなど、現場の雰囲気をつくることを心掛けたと語る山本舞香。だが、もちろんデビュー当初からそのような行動を取れていたわけではない。年齢を重ねたことで、仕事への取り組み方も変わってきたという。
――10代の頃から、共演者やスタッフに声をかけるといった、現場の雰囲気づくりを意識していたんでしょうか?
ないです、全くないです(笑)。仲良くなるまでに、本当に時間がかかるタイプだし、性格的に一人でも平気だったので。年齢的に徐々にかな、20歳くらいからできるようになったと思います。ちょっと余裕がでてきたというか、やるならみんなで楽しくやりたいよなっていう考えになってきてからですね。
――25歳は、一般的に働き方が変わりそうな時期だと思います。演じたい役や仕事での目標は変化していますか?
やりたい役や目標を聞かれることがあるんですけど、なかなか答えられないんですよね。だって、この仕事はプロデューサーさんや監督さんに、「この役は山本舞香がいい」って言ってもらって初めてできるものなので。私たちの仕事は、頂いた役になり切ること。待ってくれているファンの方に見ていただきたいから、必死にお芝居をして、宣伝をしてというのを毎回こなしているんです。結果は後でついてくるから、立ち向かっていくだけ。そのときを必死に生きている感覚かな、私は。
だから今、この先の演技の仕事について具体的に考えていることはないです。自分の好きなタイミングで好きなことをやりたいっていうふうには思っているんですけど、そういうのって、そのときの感覚でしかないんですよね。色々な経験を積んで2~3年後にまた何を思っているか、自分でも分からないです。「こうなりたい、こんな人になりたい」と具体的に思っているのか、いや「このままでいいかな」って思っているかもしれない。
――となると、例えば、一般的な社会人の場合は、「将来、こんな仕事をしたいので、そのために必要なスキルを高めよう」といった計画を立てることができますが、俳優の場合はそういった将来に向かってのスキルアップや計画を立てるのが難しいのでしょうか。
私は他の仕事と一緒だと思う。働くすべての方が今いる環境の中で努力をして、いろんなことを積み重ねて、次のステップに進んでいきますよね。私たちもそう。いろんな現場で、いろんなキャストやスタッフさんと一緒にお仕事をして、いろんなことを学んで経験を積んで、今の自分がある。やっていることは一緒なんですよ。ただ人前に出て、見てくれる方に楽しんでいただくエンターテイナーとして仕事をしているだけだと思います。
――撮影現場ではスタッフのみなさんにも目を配っているということで、制作側の仕事への興味はありますか?
映画やドラマが制作は大変なことは分かっているので、簡単に「やりたい」とは言えないんですけど、興味はあります。以前、出演したドラマでも、共演者の方が映るシーンで「このカットは風が欲しい。その方が絶対にかわいい絵が撮れるから」って、監督に言って、その場で私が扇いで風を起こしたこともあります(笑)。
ご一緒する方の魅力が、もっといろんな方に伝わってほしいって思うんですよね。閉じこもっている子を解放させたいというか、みんなの良さをもっともっと出していきたいというか。例えば、バラエティー番組に出るとどうしても、カッコよく見せたいだとか、面白く見せたいという思いは私も出てしまうんですけど、それを壊したい。「横田真悠ってこんな面白い人なんだよ」って、見ている人に伝えられたらいいのになって思うんです。プロデュース業もやりがいがありそうだなと思うこともあるんですけど、人の人生ですから背負うのは覚悟が要りますよね。プロデュースへの関心は、今は興味本位のレベルです。
――芸能界以外やプライベートでの将来設計は考えていますか?
私はもともと、20代の早いうちに結婚したかったんですよね。でも、結婚の欲は最近なくなってきています。周りの友達が結婚して子供もできているんですけど、それを見ているだけで幸せなんですよね(笑)。もちろんタイミングが合えば、結婚できればいいなと思うけど、そんな急ぐこともないかなと最近は思います。
今、一番やりたいことは動物の保護施設をつくることですね。今は、私が関わっていることは大々的には言わずに、どれだけの保護猫や保護犬がいるかを調査するためにイベントを数回開催しているレベルなんですけど。将来的には、地元の鳥取に1店舗目を出すことを目標にしています。女優のお仕事もそうですけど、保護施設の件でもたくさんの方に助けてもらって。一人では何もできないんですよね、どんな仕事も何をするにしても。
――お話を聞いていると、「やりたい」という思いを周囲の人たちに伝えているんでしょうか?
言ってますね。演技の仕事も、「今はこれじゃないかな」とか「この作品はやりたい」とか。言葉にすること、伝えることは大事だと思います。言わないとストレスになるし。ただ、私って生意気って思われがちなので、そこは気を付けようと思っています(笑)。
(写真/中川容邦)
(ヘアメイク/KUBOKI(ThreePEACE) スタイリスト/Shingo Tsuno(impiger) 衣装協力/AMERI、e.m.)

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