EXILEなどを擁するLDH所属の16人組グループ・THE RAMPAGEは近年、メンバーのソロ活動が活発化している。ボーカルの一人である川村壱馬は、この秋に『HiGH&LOW THE WORST X』『貞子DX』と出演映画が相次いで公開。さらに2021年からはゲーム実況配信にも取り組んでいる。「グループは大事だけど、ど真ん中ではない」。こう話す、ソロ活動への思いを聞いた。
※日経トレンディ2022年10月号より。詳しくは本誌参照
デビュー2年目の2019年に行ったアリーナツアーで約26万人を動員し、21年には初の単独東京ドーム公演を成功させる──。EXILEなどを擁するLDH所属の16人組グループ・THE RAMPAGEの勢いが増している。川村壱馬は3人いる同グループのボーカリストの1人であり、センターポジションを担うメンバーだ。これまでグループでの活動を中心に取り組んできた彼が、活躍の場を広げようとしている。
この秋には、主人公・花岡楓士雄(はなおか・ふじお)を演じる『HiGH&LOW THE WORST X』(22年9月9日公開)に加え、人気ホラーシリーズの最新作『貞子DX』(22年10月28日公開)と出演映画が相次いで公開。さらに21年からはゲーム実況配信にも取り組んでいる。どのような思いをもってソロ活動に取り組むのかを聞いた。
——『HiGH&LOW THE WORST X』は、19年に公開された『HiGH&LOW THE WORST』の続編ですが、作られると聞いたときの気持ちは?
実は、前作のときから次が制作されることは聞いていたんですが、コロナ禍で大きく延期になってしまって。撮影に入ると決まったときには本当にうれしかったです。
——コロナ禍では有観客のライブが開催できないなど、音楽活動を思うように行えなかったと思いますが、俳優業も止まってしまったと。そんなコロナ禍を、どのような思いで過ごしていたのでしょうか。
「自分は、何者でもない」って痛感した時期でしたね。あのような状況になると、何もできないんです。デビュー以来ステージで歌ってきたけど、この仕事は、会場に来て、受け取ってくれるファンの皆さんがいるから成り立っている。応援してもらっていることのありがたさを、改めてリアルに実感しました。ファンの皆さんとの交流を途切れさせたくなかったので、コロナ禍には配信ライブにも挑戦しましたし、16年ごろから個人的に毎日書いているブログも絶対にやめたくないと思って続けました。ブログでは、何千、何万というコメントやリアクションを頂いて、コメントを読むとファンの皆さんのリアルな気持ちを知れる。プラスに考えるなら、改めて皆さんの声に耳を傾ける機会を頂けたのかなと思います。
初のLDH以外の場で収穫
——『THE WORST X』と『貞子DX』はそれぞれいつごろに撮影したんですか? またこれまで川村さんが出演した映画やドラマは、LDHが主導して制作する作品でしたが、『貞子DX』は初のLDH以外の作品。オファーがあったときの気持ちは?
『貞子DX』が21年10月ぐらい、『THE WORST X』は22年1月末くらいから4月頭にかけて撮影しました。『貞子DX』のオファーはびっくりしましたし、ありがたいと思いましたね。演技も色々挑戦したいと思ってきたんですが、タイミングが合わずに出演できないケースもあったんです。そんな中で、誰もが知る「貞子」シリーズのお話を頂いて。LDHという看板のもとで活動させてもらえる、そのネームバリューをありがたいと思いつつ、でもそれだと届かない方もどうしてもいて。『貞子DX』への出演は、ホラー映画として見に来た、僕のことを全然知らない方に接するチャンスだなと思うんです。
——『THE WORST X』で演じる花岡楓士雄は男気あふれる仲間思いの熱い役ですが、『貞子DX』で演じた前田王司は常に貞子におびえ、小芝風花演じる主人公の一条文華に頼りっぱなしという、作品の中でのコミカルな要素を一手に担う存在。音楽活動でのパフォーマンスで見せる格好いい姿とは真逆のキャラクターですよね。
挑戦ですね。楓士雄も元々は自分にはないような明るさを持った役なんですけど、でもどっか近いところもあるんですよね。でも、前田王司は「共通しているところはどこ?」というくらいのキャラクターで。演じていてすごい面白かったですよ。むしろ普段の自分ではないキャラクターがよかったなと思うんですよね。もし『貞子DX』で僕のことを知ってくださった方が、気になってTHE RAMPAGEのパフォーマンスを見たら、「え? 同一人物?」って驚くと思うんです。全く違う人を演じることは、俳優業の魅力の一つだと思っています。
——LDH以外の現場を経たことで、得たものはありますか?
座長の小芝さんが素晴らしい人だったんです。スタッフの皆さんの名前をしっかり覚え、常に共演者や周りのスタッフさんへ気を配って。
『HiGH&LOW』の現場に入ったときも、彼女のおかげで座長としての意識は強く持って臨めました。『THE WORST X』はYUTA君(NCT 127、中本悠太)やRYOKI君(BE:FIRST、三山凌輝)など、新たに参加するキャストの皆さんがかなり多かったんで、積極的に皆さんに話しかけに行ったり、控え室で弁当を食べたりとみんなが居やすい環境を心掛けました。普段は自分から積極的に話すのが苦手なんですけど(笑)。みんなで良いものを作ろうと普段しないことをやりましたね。
「好き」を仕事に生かす
——21年4月には、動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」にてゲーム実況配信をスタートしました。川村さんにとって、ゲームをする時間はリフレッシュの時間ですか? それとも仕事として取り組んでいますか?
もともと自分の好きなことや趣味も仕事に生かせたらというマインドで取り組んでいるんです。ゲームは2〜3歳の頃から両親が買ったスーパーファミコンを1人でもやっていたっぽくて。それ以来、ゲームはずっと自分から離れたことがない、音楽よりも先に好きになったエンタメです。コロナ禍でもガッツリやっていました。映画を見るのも漫画を読むのも好きですけど、ゲームの比重が9割近くでしたね(笑)。最近は、ありがたいことに忙しくてできない日もあるんですけど、時間があると十何時間とか平気でやります。
アクションやポケモンも好きですし、ドラクエ、ファイナルファンタジーはほぼ全シリーズやっています。最近は、「ファイアーエムブレム」シリーズにハマりました。シリーズで初めてやった作品は「ファイアーエムブレム 風花雪月」(19年)なんですが、僕的にはNintendo Switch史上一番のゲームです(笑)。今年発売された「ファイアーエムブレム無双 風花雪月」(22年6月24日発売)もハマって、かなりのボリュームがあるゲームなんですが、3日ぐらいでクリアしちゃいました。
ゲーム配信で行う「Apex Legends」のようなFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム/一人称視点でゲーム内を移動しながら戦うゲーム)は、仕事としての比重が大きいですね。配信を見ていただく皆さんに楽しんでもらいたいんで、練習もしますし。
ゲーム実況配信をしていると、僕のことを知らなくても、ゲームそのものに興味があって見てくださる方や、「OPENREC.tv」で他の配信者を見ている方がたまたま僕の配信を見てくれたりということもあるので、音楽や俳優業では触れることのなかった方の目にも留まるチャンスだとも思います。
——お話を聞いていると、演技やゲーム実況配信といった個人での活動は、THE RAMPAGEのために行っているという意識が強いのでしょうか?
グループのことは常に頭にあります。普段言わないですけど、グループの全員とその家族の人生を背負っている感覚はあるので、やっぱりグループのど真ん中で俺がしっかりしなきゃいけないっていう責任感みたいなものも相当ありますよ。
でも、個人での活動はシンプルに自分の個人の夢を実現したいと思っているだけなんで。「すべてはグループのために」って思っていたら、自分が疲れちゃいますから。うまく伝わるか分からないですけど、僕1人がソロでパンと突出してもいいわけですよ。結局、それがグループを知ってもらう機会になるので。グループはいつまでも続けていきたいと思っていますけど、例えば体力の問題などで勇退しなければいけないときがくるかもしれない。今は、THE RAMPAGEっていうグループが当たり前のようにあるけど、グループに頼りきりのマインドだったら、その後、自分が生きていけない。他のメンバーに対しても、「自分のためにでいいじゃん」って思っています。言ってみたら、「俺だけでも売れてやる」ぐらいの気持ちのやつが16人いたらいいわけじゃないですか。
グループはもちろん、100%大事に思っています。でも、自分っていう幹があるとしたら、グループはその木に咲いている花の一つというか。すごく大事なものであるけど、ど真ん中ではないし、グループ=自分っていうものではないんです。
——最近、THE RAMPAGEのメンバーはソロ活動が活発ですよね。吉野北人、長谷川慎、藤原樹などは俳優業に力を注いでいますし、陣はMCに挑戦。グループ内には、HIPHOPに特化したユニット「MA55IVE THE RAMPAGE」も誕生しました。
ここからTHE RAMPAGEが変わっていきそうなのかなという予感がなんとなくはありますね。結構ワクワクしています。メンバーそれぞれの幹が太くなって、みんなでもっと大きなものを支えられるようになるかもしれないというか。16人もいれば小競り合いみたいなものはちょいちょいありますけど(笑)、グループの雰囲気はいいですよ、今。
そしてマネジャーさんなどLDHのスタッフの皆さんは「メンバーそれぞれの夢を応援するのが、自分たちの夢」だと言ってくれるんです。なんでこんないい人がいるんだろう、本当ありがたいなっていつも思っています。
(写真/中川容邦)
(スタイリスト/吉田ケイスケ、ヘアメイク/CONTINUE・中山伸二)

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