女優シーンのトップを走り続けてきた広瀬すず。デビュー10周年を迎えた2022年は、松坂桃李とW主演の『流浪の月』が5月13日に公開を控えるなど、その活動は順風満帆に見える一方、「俳優業を休もう」とさえ思ったこともあると言う。女優の活動の場が多様化している昨今において、演技や活動に懸ける思いを聞いた。
※日経トレンディ2022年5月号より。詳しくは本誌参照
2012年に雑誌「Seventeen」の専属モデルとして芸能界でのキャリアをスタートして以降、映画『ちはやふる』シリーズやNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」の主演を務めるなど、女優シーンのトップを走り続けてきた広瀬すず。デビュー10周年を迎えた22年は、松坂桃李とW主演の『流浪の月』が5月13日に公開を控えるなど、23歳となった今なお、その活動は順風満帆に見える。だが、多くの社会人が10年目までに様々な悩みや壁にぶつかるのと同様、広瀬すずも「俳優業を休もう」とさえ思ったと言う。令和の時代、歌やバラエティー番組などで存在感を示す女優が増えるなど、活動の場が多様化している。演技や活動に懸ける思いを聞いた。
――10代から活躍する広瀬さんも、デビューから10周年を迎えて23歳になりました。年齢とともに演じる役も変化してきたと思いますが、出演する作品選びの基準などで変化はありますか?
20歳過ぎた頃から、事務所のみなさんと「制服を着る仕事は、いつまでもできるわけじゃないからね」という話をするようになりました。学生の役がくることは、確かにあまりなくなりました。役自体については、「どんな役を演じたい」という考えはないです(笑)。作品に引き出してもらう方が私らしいし、その場その場で考えて、いい方向に向かえればいいな、と思っています。もちろん年齢を重ねるからこそできる表現はあると思うので楽しみではあります。
ただ、実は『流浪の月』のクランクイン前、お芝居が分からないというか、感情がずっと出てこない時期があったんです。『流浪の月』の李(相日)監督にはお話を頂いてから、「自分、どう演技をしたらいいか分かんないです」って素直に話したんですけど、そうしたら、監督も『怒り』以来、久しぶりに手掛ける長編映画だから「こっちもボールの投げ方すら忘れた」みたいなことをおっしゃってて(笑)。それで、今回は「お互い色々手探りになるだろうな」といろんな意味で想像がつかない感じで撮影が始まりました。
コロナ禍が考える時間に私生活の大切さに気付く
――演技への悩みはいつごろから芽生えたんですか?
19年に放送された朝ドラ「なつぞら」に出演したときくらいからです。朝ドラは一人の女性の人生を長い期間をかけて描きますが、一人の人生にちゃんと向き合って演じたいのでエネルギーを使うじゃないですか。ただ、私の感じ方として映画とドラマでは撮影を進めていく速度が違うという印象があって、特に朝ドラは撮影のペースが速いので、どんどんこなしていっている自分がいるような気がして。今までなかった悩みや考え方が生まれました。
もちろん朝ドラは朝ドラで楽しかったし、よく「朝ドラのヒロインは大変」っていわれますけど、それを経験できたこともうれしかったし、ありがたいと思っています。でもそんな経験をして、一回映像から離れたいと思ったんです。女優をやめるとまでは思ってはいなかったですけど(笑)。だからその直後に、舞台(野田秀樹作・演出「Q:A Night At The Kabuki」)に出演させていただくお話を頂いたのは、タイミングが良かったです。
そうしたら、次はコロナ禍でお仕事がストップしてしまったんですが、私にとってはゆっくりと考える時間になったんです。仕事が続いていたときは、プライベートで心動くことがなくなっていたんですね。それこそ映画見て泣くこともなくなってきちゃっていて。うれしい、ジェラシーなど色々な感情って、自分の時間にそれを持っていないと役で演じようとしても出てこないんだなって今感じています。なんかちゃんと自分の時間を大事にしてみようかなって思いました、人間として(笑)。
――SNSが普及した今の時代に活動する俳優さんは、演技だけでなく、プライベートな面でも注目されますよね。どのような距離感でファンの方と接していくのか、その向き合い方がすごく難しい時代だと思いますが、広瀬さんは自分自身をどのように発信していこうと考えていますか?
何も考えてないです(笑)。インスタグラムなどで、プライベートの瞬間を気分で載せることもあるんですけど、基本的には自分よりも作品を評価してもらえる方が何倍もうれしいです。自己中かもしれないですけど、やっぱり自分の人生、自分のやりたいことが優先で、そこを応援してくださる方がいればうれしいなと思います。だからこそ、「いい作品を届けたい」って思うんです。私は「広瀬すず」として出たいわけではなく、役を演じる表現者として表に出たいから、自分がどう思われるかよりも作品を見ていただきたいです。
――デビュー10周年記念の写真集『レジャー・トレジャー』(講談社)をセルフプロデュースしたのは表現者としてですか?
自分が自分でいるときは、自分の好きなことをしたいんです。だから、よくあるような写真集を作るというよりは、自分の好きな世界観とか空間とか、自己表現をプロデュースするのは面白いんだろうなって思ったんです。直感的にポンポンって意見が出てくるタイプなので、今回はそれを信じたいな、と(笑)。
――最近の女優さんは演技以外にも活動の幅が広がっていますよね。例えば、歌手業が好調な上白石萌音さんや、お姉さんのアリスさんはバラエティー番組への出演に積極的だったり。広瀬さんのように、演技一本で勝負している俳優さんって、なかなかいないような気がします。
本当ですか? 考えたことがなかった。私も最初は雑誌「Seventeen」のモデルからスタートしているので、何か一本に絞るつもりはないんですよ。ただ、他にできることがないから一つになっちゃった感じです。むしろ、歌う力があるなら歌いたいです(笑)。なんでもやってみたいんです。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー

【最新号のご案内】日経トレンディ 2023年7月号
【巻頭特集】ずるい!ChatGPT仕事術
【第2特集】得する旅行術
【第3特集】シン・ツーリズム
【SPECIAL】山田涼介インタビュー
発行・発売日:2023年6月2日
特別定価:850円(紙版、税込み)
■Amazonで購入する