サラダチキンのように低糖質で、ワンハンドで食べられるスティックタイプのアサヒコ(さいたま市)の「TOFU BAR」。大ヒットを飛ばした一連のプロジェクトを率いたのが、事業部長の池田未央氏だ。米国からTOFUを逆輸入し、サラダチキンの食感を再現。宇宙食への改良も視野に入れ、次のイノベーション実現に向けて歩みだしている。

※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成

アサヒコ プラントフォワード事業 事業部長 池田未央氏
1972年、愛知県生まれ。国内外の菓子メーカーにて商品開発とマーケティングに従事し、2018年アサヒコに入社

 サラダチキンのように低糖質で、ワンハンドで食べられるスティックタイプの豆腐。2020年11月にセブン-イレブン専売品として発売したアサヒコ「TOFU BAR」は、従来の豆腐のイメージを覆す形状を採用し、たんぱく質10グラムを効率よく摂取できるコンセプトが受け、1年で約890万本を販売するヒットとなった。アイデアの着想から商品化までの一連のプロジェクトを率いたのが、プラントフォワード事業事業部長の池田未央氏だ。

手軽にたんぱく質を摂取できる豆腐としてヒット

■TOFU BAR(アサヒコ)
【主な特徴】(1)たんぱく質がとれる、(2)ワンハンドで食べられる、(3)固くて液だれしない
【主な特徴】(1)たんぱく質がとれる、(2)ワンハンドで食べられる、(3)固くて液だれしない

 池田氏は20年近く菓子業界で、国内・海外メーカーのブランドマネジャーを歴任。のどあめの担当だった際には、マスカットなどのフルーツ味を春夏商品として他社に先駆けて開発。「味はハーブ風、売れるのは風邪をひきやすい冬場。そんな当時の常識を覆し、多彩なのどあめが年中買える素地をつくったのは自分だとの自負がある」(池田氏、以下コメント同じ)

 18年にアサヒコに転職。次は、食品のジャンルで何か健康に役立つ商品を生み出してみたいと考え、土地勘のない豆腐の世界へ飛び込んだ。

 転職したばかりの池田氏の目に映る豆腐市場は、実に不思議なものだった。コンビニやスーパーに必ず並ぶポピュラーな食材であり、食卓に並ぶ機会も多い。その割に、ほとんどの人が強い関心を寄せずになんとなく買っているからだ。人それぞれお気に入りのお菓子があり、メーカーが毎回新商品づくりに知恵を絞るお菓子業界とは様相が違っていた。

 「ただ逆に、そこにチャンスが眠っていると感じた。広い視野で全く新しい発想の商品を提案できれば、豆腐をあまり食べてこなかった人にも手を伸ばしてもらえるはず」

 新商品のヒントは、意外に早く見つかった。入社して3カ月目に、視察で訪れた米国のスーパーで目にした、海外産の豆腐だ。パッケージにはアルファベットでTOFUと書かれているが日本の豆腐とは別物。スムージーなどには柔らめのSILKEN、ステーキ用には固めのEXTRA FIRMといった具合に、料理の種類別に固さが選べたのだ。よく見るとたんぱく質含有量も全部に書いてあり、健康意識の高い食材として現地消費者は捉えていた。

 米国人の豆腐の食べ方は多彩で、ナゲットのように揚げてバーベキューソースを付けて食べる人もいれば、細かくしてサラダにトッピングして総菜の具材に使う人もいる。一方日本人はと言えば、冷ややっこや味噌汁の具材の用途が多く、「実は日本人こそ、豆腐が持つ魅力を食事で生かし切れていないことに気付いた」

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