ピスタチオスプレッド、トリュフ香るミックスナッツ……。成城石井が毎年のように連発するヒット商品は、原昭彦社長の“直感”から生まれる。経営トップ自らが世界中を食べ歩き、その精度を「自問自答」の繰り返しで高めるという。2022年に狙うヒットのキーワードは、「スパイス」だ。

※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成

社長に就いてから10年以上が経つ原氏。ヒット商品を世に次々と送り出してきた
社長に就いてから10年以上が経つ原氏。ヒット商品を世に次々と送り出してきた
成城石井 代表取締役社長 原 昭彦氏
1990年4月に入社し、成城石井 青葉台店(横浜市)に勤務。乳製品や卵、豆腐などの日配品を担当する。2006年7月に営業本部商品部部長に就任。その後、07年1月執行役員営業本部本部長、10年5月取締役を歴任し、10年9月社長に就任する。東京出身、駒澤大学経営学部卒、54歳

 毎年のようにヒット食品を連発する成城石井。2010年に42歳で代表取締役社長になった原昭彦氏が先頭に立って、現場のバイヤーや総菜担当者と商品開発に取り組む。例えばピスタチオ関連では20年4月に発売した「ポリコム ピスタチオスプレッド」(税込み1070円)がよく売れた。パンに塗る食品としては高額だが一時は品薄になるほどで、累計約56万個を販売。発売から1年半以上が経った今でも、同店の常温加工食品カテゴリーで1番人気になっている。

 その後、21年5月に売り出した「成城石井自家製 ピスタチオプリン カスタードソースがけ」(税込み323円)も累計約77万個を記録し、同年に成城石井で最もヒットしたデザートとなった(21年11月中旬時点)。

新機軸「スプレッド状」でヒット

 20年春の時点でピスタチオを使った食品は世の中ではやる兆しを見せていたが、原氏が手がけたスプレッドタイプは珍しかった。なぜ商品化を決めたのかという問いに、原氏は「直感で売れると思ったから」と即答する。

 このスプレッドに出合ったのは、19年に訪れたイタリア・ミラノの展示会。「透明容器から透けて見えるきれいな緑色は、ジャム売り場で色映えすると思った」と原氏は振り返る。味わいは香ばしくて濃厚で申し分ない。現地の生産者は代々続く老舗で、ピスタチオを焙煎(ばいせん)の段階から丁寧に仕込む、とお客を引き付けるストーリー性もある。ヘーゼルナッツの定番スプレッド「ヌテラ」(イタリア製)も、成城石井では安定した人気だ。売れそうな要素はいくつもあるが、商品化を決断した根底にあるのは、「ピスタチオはもともと人気のナッツだが、その魅力にはもっとポテンシャルがあるという自分の感覚」(原氏、以下コメント同じ)だ。

■ポリコム ピスタチオスプレッド
ピスタチオ関連ではスプレッド状という新提案が、消費者にとても受けた
ピスタチオ関連ではスプレッド状という新提案が、消費者にとても受けた
■成城石井自家製 ピスタチオプリン カスタードソースがけ
21年に商品化したプリンもヒット
21年に商品化したプリンもヒット

 直感で商品化したものがヒットにつながった例をもう1つ。トリュフ関連の商品は、18年から売り出して今や人気が定着した。冬に採れる白トリュフは高級食材として知られるものの、オイルや塩と組み合わせた加工品でも、その風味を楽しめる。「トリュフ特有の香りにある“中毒性”と、価格に対して日本人が抱くイメージとのギャップ。ポテンシャルや新鮮な驚きがあるから、消費者に受け入れられる」と原氏。白トリュフのフレーバーオイルをイタリアから直輸入して自社製総菜に使うことを決め、18年11月に「成城石井自家製 3種きのことベーコンの白トリュフ風味リガトーニ」(税込み647円)を商品化したところ、大ヒット。間を空けずに投入した「成城石井 2種のトリュフ香るミックスナッツ」(19年1月発売、税込み648円)もよく売れた。

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