注目度が増している「カスタマーサクセス」の基礎やありがちな誤解に切り込む本連載。第2回は、カスタマーサクセスを考える上で最も重要な視点である、「LTV」について詳細に見ていく。なぜLTVが大事なのか、LTVを高めていくために何が必要になるのか、改めて基本に立ち返ってカスタマーサクセス視点でひもとく。
連載の第1回では、「そもそもカスタマーサクセスとは何か」や「よくある誤解やカスタマーサポートとの違い」についてお話しました。今回の第2回では、「カスタマーサクセス」において最も重要な指標である「LTV」についてお話しします。
「LTV」とはLife Time Value(顧客生涯価値)の略語です。顧客が企業のサービスやプロダクトを購買、または利用を開始して接点を持ったときから、その関係が終了するまでの期間に得られる収益を算出したものを指します。
第1回の記事の通り、さまざまな業界でサブスクリプションモデルをはじめとしたリテンション型のビジネスモデルへシフトが進んでいます。その結果、売るまでではなく、売った後が勝負の時代、一時的な新規顧客の獲得ではなく1人のお客様により長く、より深くそのサービスを使い続けてもらうことが大切な時代となりつつあります。
リテンション型のビジネスモデルでは、商品を一度に購入するのではなく、1カ月間または1年間など一定期間ごとにその商品のサービスを購入するため、初回で支払う金額は安価となる傾向があります。つまり、顧客にとっては購買のハードルがこれまでよりも低下することになります。一方で、取引を終了する(解約する)ハードルも下がります。読者の方も、スマホで簡単にサービスの解約をした経験があるのではないでしょうか。
例えば音楽を聴く場合に、昔は約1000円を払って2、3曲入りのCDを購入するという形式が主でしたが、今は音楽ストリーミングサービスに毎月数百円を支払う代わりに、膨大な音楽を自由に聴くことができますよね。一方で、取引を終了(解約)することも、スマホでいつでも簡単にできます。企業にとっては顧客を獲得するコストが低下しましたが、それでもすぐに解約されてしまってはそのコストすら回収できない構造です。
顧客が利用を開始してから解約するまでに得られるトータルの収益がLTVであり、このLTVが顧客を獲得するコストを上回ることで基本的にビジネスが成長していきます。なお、顧客1人当たりの獲得にかかるコストを「CAC(Customer Acquisition Cost)」といい、事業が健全に利益を生むためにはLTVがCACを上回っていることが前提となります。
従って、リテンション型のビジネスへとシフトが進むこれからの時代において、LTVの考え方に基づく経営は必須であり、事業の健全性や将来への適切な投資を検討するためにも、自社サービスやプロダクトのLTVを正しく計測することが必要です。
LTVは具体的にどのように計算すればいい?
LTVの計算方法はビジネスモデルによって異なります。もちろん顧客1人1人のLTVは異なるため、それぞれの要素の平均値から自社サービスやプロダクトのLTVを捉えることが一般的ですが、代表的な考え方は以下になります。
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