Instagram広告最新活用 第3回

クランチスタイル(東京・渋谷)が手掛ける花の定期便、「ブルーミー(bloomee)」。サービス開始から数年後に会員数が停滞すると、それまで行っていたInstagramの広告戦略を転換。以降、会員数は右肩上がりで現在10万人超となっている。「花のサブスクリプションサービス」という新市場を開拓したクランチスタイルの秘策とは。

ブルーミーのInstagram
ブルーミーのInstagram

前回(第2回)はこちら

 「2021年から一層ユーザーのヒアリングに力を入れている。今週も2~3人に話を聞く。顧客の解像度がどこまで高いかで、広告効果にかなり差がつくからだ」

 こう語るのは花のサブスクリプションサービス「ブルーミー」を手掛けるクランチスタイル取締役CMO(最高マーケティング責任者)の戸口興氏だ。

 ブルーミーで展開しているのは、550円(花の本数3本以上、税込み、送料別以下同)、880円(花の本数4本以上)、1980円(花の本数8本以上)の3プランだ。専用ボックスに入った花束が毎週、あるいは隔週でポスト投函(とうかん)される。

CPAが5倍の危機でインスタ広告立て直し

 2016年の事業開始当初からInstagramを活用し、投稿や広告を通じてサービスを訴求してきた。会員数は順調に伸びたが、実は19年に一時期、CPA(顧客獲得単価)が5倍になり、危機的な状況に陥ったことがある。「本来は、顧客を3~4倍に増やして事業を急速に成長させなければならない時期だった」(戸口氏)。そのため、急ぎSNS広告の支援を手掛けるアナグラム(東京・渋谷)に相談したという。

 当時対応したのがアナグラムの運用型広告事業部チームリーダーである森弘繁氏を中心としたチームだ。実施したことは大きく2つ。まず、Instagramの中でターゲットに向けて広告がうまく配信されるようにすること。そして、ターゲットに合ったクリエイティブを制作することだ。

 CPAが5倍になった原因は、ターゲットに向けた広告配信をする上で「データが分散していた」ことだった。

 「Instagramでは設定した任意の目標を効率的に達成すべく、広告セット単位で広告配信時のデータが機械学習されていく。例えば、広告をクリックして商品を購入したユーザーのタイプが分かると、同じようなターゲットに広告が配信される仕組みだ。そのため、1つの広告セット内にデータの蓄積が多ければ多いほど配信先が精緻になる(下の図を参照)。だが当時は、同じ目的で複数の広告セットが設定されていたため、データが分散してしまっていた」(森氏)

※広告セットでは、ターゲット、予算、配置(広告が表示される場所)、スケジュールを設定する

 配信システムが広告の配信先として最適な利用者を学習するためには、7日以内に少なくとも50件のコンバージョンが必要になる。そこで、広告セットを集約し、データが効率的にたまるようにした。

性別や年代などを細かく区切って広告セットを作成してしまうと、必要なコンバージョン数が得られずに配信が抑制されてしまうことがある(図版はアナグラムの資料を基に編集部で作成)
性別や年代などを細かく区切って広告セットを作成してしまうと、必要なコンバージョン数が得られずに配信が抑制されてしまうことがある(図版はアナグラムの資料を基に編集部で作成)

 その上で手掛けたのが、新たな広告クリエイティブを次々と試し、それぞれの反応を分析するというPDCAを何度も何度も回すことだ。この「無限PDCA」が功を奏した。

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