Instagram広告最新活用 第2回

2021年2月にオーブントースター「ビストロ」を発売し、後発ながら高級トースター市場に参入したパナソニック。同社では初めてプロモーション戦略の主軸にInstagram広告を据え、旧モデルの2倍の売り上げを達成した。どう成功につなげたのか。

オーブントースタービストロでインスタ広告に使用した画像(写真提供/panasonic)
オーブントースター「ビストロ」でインスタ広告に使用した画像(写真提供/パナソニック)

 高級トースター市場に新規参入する自社製品の魅力をどうアピールするか。パナソニックはこの答えをInstagramを活用したプロモーション戦略で見いだした。売り上げを旧モデルの2倍に伸ばしている(実勢価格2万7500円前後(税込み)の新モデル21年2月発売~5月までの累計と、実勢価格2万2000円前後(税込み)の旧モデルの前年同時期を比較)。

前回(第1回)はこちら

 パナソニックでは、2016年以来、Instagramの公式アカウント「Panasonic Cooking(パナソニッククッキング)」を通して自社の調理家電で作るレシピを紹介してきた。「『ちょっと憧れのキッチン空間』という世界観を目指し、投稿を続けている」(パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 メディア戦略課の及川麻菜美氏)。Instagramは画像投稿がメインのため、食との相性がいい。現在のフォロワー数は12万人。「いいね」や保存数なども順調に伸びてきた。

 高級トースター市場へ満を持して発売したという21年2月発売のオーブントースター「ビストロ」。このプロモーションに活用したのが、Panasonic CookingアカウントとInstagram広告の配信だ。

 これらの施策について「Instagramを運営するフェイスブック ジャパンと協業し、消費者インサイトを探る事前調査から一緒に取り組んだ」とパナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部メディア戦略課の富岡広通氏は説明する。Instagramを通じ、コロナ禍で変化する消費者の生活や行動、ニーズを理解した上で取り組むのが目的だ。富岡氏にとってこれは、新しい経験の連続となった。

 旧モデルのトースターは、「パンが焼けて、オーブン調理もできてフライの温めもできる、何でもできるコンパクトなオーブン」として訴求した。しかし、Instagramの分析で消費者インサイトを探る中で最終的に決定した商品のコアメッセージは、「厚切りも冷凍もおまかせ。サクッと、ふんわり黄金比トースト。」だ。新商品のプロモーションでは「パンがおいしく焼けるトースター」に絞った訴求に方向転換した。経緯を説明しよう。

インスタ施策を成功させたパナ独自のフレームワークとは?

 ブランディング開始前に調べたのは、Instagramの中で「トースター」「パン」「ランチ」といった話題がどう語られているかのトレンド分析だ。「コロナ禍で、『トースト』に関する投稿が増えたり、投稿へのエンゲージメントが高くなったりしていた。中でも反応が良いのはアレンジレシピだと分かった。また、『在宅』×『ランチ』の投稿も一定のボリュームを保っていた」(富岡氏)

 富岡氏が面白いと感じたのは、投稿画像の中で得られる非言語化された情報だ。例えば背景を見ながらトーストを誰と食べているのか、どんな状況で作ったのか、などユーザーのライフスタイルや場の雰囲気を感じ取ることができた。これらはアンケートなどの定量調査とは違った意味で、ユーザーを肌感覚で理解するのに非常に有効だったという。

 ユーザーやトレンドを踏まえ、Instagramのどの機能を使って何をするか。次に手掛けたのはメディアプランの作成だ。ここでは、パナソニック独自のフレームワーク(ジョブフロー)を使用した(下にイメージ図)。

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