2022-2030大予測 第19回

2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。ブロックチェーンの技術が投資の世界をさらに一変させ、セキュリティートークン(ST)と呼ぶデジタル証券を発行する新しい仕組みが登場する。数億~十数億円の不動産が小口証券化され、株式のように売買が可能に。23年には国内初の取引所も誕生予定で、流動性が一気に高まりそうだ。

※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成

前回(第18回)はこちら

 インターネット以来の革命的なテクノロジーの発明と評されるブロックチェーン。ビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)を生み出したこの技術が、投資の世界をさらに一変させようとしている。

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 セキュリティートークン(ST)と呼ぶデジタル証券を発行する新しい仕組みが登場。不動産や社債など様々な資産を証券化する流れが、これから加速する。

 相場が乱高下しやすく、中には詐欺的なコインもある投機的な一面を持つ仮想通貨に対し、STは株や債券のように、社会的に認められている財産価値に裏打ちされている点に特徴がある。希少性から高騰が続くデジタルアートなどを扱うNFT(非代替性トークン)とも、この点で大きく異なる。

【2023年はこうなる!】小口証券化した不動産を株式のように売買可能に

 STを使った証券化が一気に進展しそうなのが不動産市場だ。2021年7月、不動産ファンドのケネディクスが複数の証券会社を通じた不動産STの公募を日本で初めて実施した。都内渋谷にある10階建てマンション(鑑定評価額27.4億円)を1口100万円で小口証券化。予想利回りは年率3.4%で、年2回分配金を支払うとして売り出したところ、募集口数を大きく上回る申し込みがあった。

 個人投資家にとっての魅力は、株式取引に似た感覚で不動産投資ができること。利回りの良い物件に投資して配当を得たり、相場変化で売却益を得るのを狙ったりできる点は株式と同じ。特にこれから立ち上がる市場だけに、早く始めれば値上がりする銘柄を先んじて発掘できるチャンスも大きい。

 「今後は継続的にファンドを組成し、物件によっては1口10万円程度の不動産STにも乗り出すことを検討している」(ケネディクス執行役員の中尾彰宏氏)

■ケネディクス、三菱UFJ信託銀行、野村證券、SBI証券
機関投資家向け事業を展開するケネディクスが不動産STを手掛けるのは、個人向け事業を新たな収益の柱に育てる狙いがある。不動産STは、2030年までに2.5兆円規模の市場にまで育つと見ている
機関投資家向け事業を展開するケネディクスが不動産STを手掛けるのは、個人向け事業を新たな収益の柱に育てる狙いがある。不動産STは、2030年までに2.5兆円規模の市場にまで育つと見ている
不動産STの公募の仕組み
不動産STの公募の仕組み

 ここに来てSTが注目を浴びる理由は、20年の改正金融商品取引法施行によりSTが有価証券の一種として法的に位置づけられたことが大きい。投資家は保護の対象となるし、金融機関に対するルールや罰則も明確に定められている。引き受けに当たっては証券会社が審査を実施し、投資信託と同様に目論見書も発行される。透明性がある程度担保され、安心して投資しやすいわけだ。

 特定物件への投資としては、既に不動産クラウドファンディングが活況を呈す。ただ運用期間中(3年未満が多い)は解約できないという制約があり、二の足を踏む個人投資家もいる。不動産STなら適時売買でき換金性が高く、不動産クラウドファンディング以上にハードルが低い。

■エンジョイワークス、LIFULL
一般投資家向けに実施した国内初の不動産STは、神奈川県の葉山町にある古民家の再生を目的に証券会社を介さずに公募したものが初だとされる
一般投資家向けに実施した国内初の不動産STは、神奈川県の葉山町にある古民家の再生を目的に証券会社を介さずに公募したものが初だとされる

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