
2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。より簡便な呼気計測につながる技術として期待されるのが「嗅覚センサー」だ。ヒトが吐き出す息に含まれる成分から、がんや糖尿病などの病気を見つけ出すことを目指す。測定デバイスの小型化が進み、将来的にはスマートフォンに息を吹きかけて体調チェックをする時代が来るかもしれない。
※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成
会社や自治体の健康診断を受けると、血圧や心電図、血液、尿、胸部X線など様々な検査を行う。人間ドックでは、超音波などさらに検査項目が増える。そして将来、病気を見つけるためのこうした検査の一つとして、「呼気」が加わる可能性がある。ヒトが吐き出す息の中に含まれる成分から、がんをはじめとする病気を早期に見つけ出そうという研究が、様々な企業や機関で取り組まれている。
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呼気計測は身体に負担を与えず、手軽にできる検査手法として注目されている。既に導入されている例としては、ぜんそくの「NO(一酸化窒素)検査」や、胃にピロリ菌がいるかどうかを調べる「尿素呼気検査」などがあり、その有用性が認められている。
様々なにおいをセンサーで“かぎ分け”てデータ化
これらは専用の検査機器を用いるが、様々な病気を見つけるための、より簡便な呼気計測につながる技術として期待されているのが「嗅覚センサー」だ。生き物の鼻のようににおいのもとになるガスを検知し、それをデータ化する。
中でも応用範囲の広さで注目されるのが、国立研究開発法人の物質・材料研究機構が開発する嗅覚センサー「MSS」だ。多様な材料で作られた膜(感応膜)を用いる方式で、センサー自体は1ミリメートルにも満たないサイズ。デバイスに利用されるチップも1円玉より小さい(下図)。このチップにセンサーが4つ付いている。
■嗅覚センサー「MSS」(物質・材料研究機構)
センサーの感応膜ににおいの分子が吸着すると、膜が変形する。「においの種類によって、変形の大きさやスピードは異なる。この感応膜の変化を電気信号として検知して、においの識別に利用する」(研究グループリーダーの吉川元起氏)。においには様々なガス分子が含まれている。センサーはその組み合わせ全体で1つの信号として認識し、その信号のパターンをAI(人工知能)が学習することで、何のにおいかを判断できる。
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