
2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。コロナ禍で非接触ニーズが増し、配膳ロボットの導入が一気に進んだ。2030年には、飲食店や食品工場で働くスタッフの大半がロボットになる。アールティが開発した「Foodly(フードリー)」は、ディープラーニングによって食材を見分ける“目”を搭載。将来的には、人間と並んでラインでの作業ができるようになる。
※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成
【2030年はこうなる!】レストラン内の作業はすべてロボット 人間のスタッフは人との交流だけに集中
2030年には、飲食店や食品工場で働くスタッフの大半がロボットになっているかもしれない。コロナ禍で非接触接客のニーズが増し、既に飲食店のフロアでの活躍は始まっている。感染拡大防止を見据え、配膳ロボットの導入が一気に進んだのだ。人手不足も深刻化し、食品業界ではロボットの活用が急務となっている。
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食品工場など中食の分野では、人間と並んで作業できるロボットも出てきた。ロボットやAI(人工知能)を取り扱うアールティ(東京・千代田)の代表・中川友紀子氏は、「食品工場は人手不足に加え、単純作業を長時間繰り返すなど作業環境が過酷。ただ、それをロボットで代替しようとしても、食品の盛り付けといった複雑な作業は従来では難しかった」と語る。しかし、同社は20年に双腕人型ロボット「Foodly(フードリー)」を開発。形が不ぞろいな食材も正確に画像認識して、つかむ一連の流れを可能にした。
人と働けるロボットが厨房で活躍する
通常のロボットはばらばらの食品が複数存在することを認識できず、1つの塊として認識してしまう。しかし、アールティはGoogleのフレームワークTensorFlowを活用し、ディープラーニングで、食材を見分ける“目”を装備させた。
軟らかいものをつかむというのも、ロボットには難しい動作だ。アールティはAIに自らの体の状況を把握させることで、スムーズなアームの動きを実現。つかむ力加減についてはエンジニアが実験したデータをAIに学習させることで、食材を画像認識した際にどのような腕の動きで、どんな強さでつかめばいいのか計算できるようにした。その結果、15年の研究開始から1年、16年には世界で初めて「不定形な食品のばら積み取り出し機能」を可能にした。
■Foodly(アールティ)
18年にはプロトタイプが完成したが、人間と並んで作業ができるロボットとするべく、その後も今のFoodlyとなるまで調整が続いた。身長は約150センチメートルほどと小さくして、省スペースに。食品に混入物が出ないよう、表面にはネジなどの部品が露出しない加工をしており、安全性を保っている。食品工場への試験導入は20年から実施。22年3月からは調味料メーカー、イチビキ(名古屋市)の食品工場で総菜の加工工程にも初めて携わるようになることが発表されている。
「おかずの盛り付け以外にもソフトウエア、ハードウエアの調整次第で様々な単純作業を代替できる」(中川氏)と言い、人間用に作られた既存の機械を人の代わりに操作できるのもFoodlyのメリットだ。21年には海苔巻きを作る機械を展開する鈴茂器工とコラボしたモデルを発表。食材を順番に置くだけで海苔巻きを自動で作る機械で、人間の代わりに定められた位置に適量の具材を置くなど、Foodlyが操作できるようにした。連係するのに元の機械の調整は必要ないといい、導入のハードルが低い。今後様々な場面で人間の作業をFoodlyは代替できそうだ。
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