2022-2030大予測 第14回

2021年12月3日発売の「日経トレンディ 2022年1月号」では、「2022-2030大予測」を特集。脱現金化が進む日本で、スマホすら要らないペイレスな世界がやってくる。顔で本人確認し、手ぶらで決済できる次世代版キャッシュレス普及の機運が高まっているのだ。既に千葉県佐倉市のニュータウン「ユーカリが丘」では交通インフラで実験中。22年には商業ビルなどにも広げる考えだ。

※日経トレンディ2022年1月号の記事を再構成

顔がIDとなり、交通機関に乗車。観光エリア内でも「手ぶらで周遊」の取り組みが進む
顔がIDとなり、交通機関に乗車。観光エリア内でも「手ぶらで周遊」の取り組みが進む

前回(第13回)はこちら

【2025年はこうなる!】“顔パス”で、決済も入館も完了

 ここ数年で着々とキャッシュレス化が進展し、脱現金化が進む日本。決済のイノベーションは、いよいよ次のステージへと飛躍する。顔で本人確認して手ぶらで決済できる次世代版キャッシュレス普及の機運が高まっているのだ。スマホすら要らないペイレスな世界がこれからやってくる。

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 それを街全体に社会実装しようとしているのが千葉県佐倉市にあるニュータウン「ユーカリが丘」。街を1周する新交通システムの6駅や、住宅地や商業施設を走り回るコミュニティーバス5系統では、市民100人が日々顔認証決済による乗車実験に参加している。

ユーカリが丘
ユーカリが丘
●総開発面積:約250ヘクタール●人口:1万8823人(7786世帯、いずれも21年10月末時点)●商業施設:約245施設●子育て支援施設:保育園10施設、幼稚園2施設、小中学校7施設●高齢者福祉施設:5施設(約946人)●公園:31施設

交通機関から商業施設まで 街のいたる所で顔がIDになる

 乗車前にすべきことは、事前に専用スマホアプリを使って自分の顔データと決済用のクレジットカードを登録するだけ。後は新交通システムなら各駅の改札で、カメラを取り付けた専用レーンを通過するだけ。一瞬立ち止まる必要はあるものの、マスクをしていても顔の照合は瞬時に終わるので、発車間近でも慌てることはない。料金は、乗車した回数分が月末に一括でクレジットカードに請求される仕組みだ。

 2022年には、実証実験の対象を商業ビルなどにも広げる。レジで財布もスマホも取り出すことなく、住民が快適に買い物できるかを検証する。「正式サービスへの移行は24年の計画。全住民が街中でペイレスの恩恵にあずかれるよう、福祉施設や医療機関にも導入していく」(ユーカリが丘の開発を手掛ける不動産会社・山万副社長の林新二郎氏)。

■山万
20年11月から5系統のコミュニティーバスの運行を開始。現在すべてのバスで、顔認証のためのタブレットが乗車口付近に設置してある。定期券をあらかじめ登録しておくことも可能
20年11月から5系統のコミュニティーバスの運行を開始。現在すべてのバスで、顔認証のためのタブレットが乗車口付近に設置してある。定期券をあらかじめ登録しておくことも可能
実証実験では、パナソニックの顔認証技術を活用するほか、ジョルダンのチケット管理システムを導入した
実証実験では、パナソニックの顔認証技術を活用するほか、ジョルダンのチケット管理システムを導入した
6駅をつなぐ新交通システムは全長4.1キロメートル。各駅の改札に1台の顔認証システムを設置した
6駅をつなぐ新交通システムは全長4.1キロメートル。各駅の改札に1台の顔認証システムを設置した

 ユーカリが丘には約1万8823人(約7786世帯)が暮らしており、全国に先駆けて顔認証決済ができる街に変貌をとげることになる。

ユーカリが丘には商業施設が約245ある。山万所有のテナントを利用して、実証実験の次のステップでは店舗決済を実施する計画
ユーカリが丘には商業施設が約245ある。山万所有のテナントを利用して、実証実験の次のステップでは店舗決済を実施する計画
エリア内の高齢者施設や子育て支援施設、医療機関でも活用したい考え
エリア内の高齢者施設や子育て支援施設、医療機関でも活用したい考え

 街中で手ぶらで決済できる場所は今後、都市部から地方まで日本全国に広がる可能性もある。三菱地所は、将来構想の一つとして顔認証を使った決済環境の整備を視野に入れる。同社は東京の「大丸有(大手町、丸の内、有楽町エリア)」で、1つのIDで店舗を含む様々なサービスを受けられるようにする「Machi Pass」を推進中。例えば今後、利用者のニーズや許諾があれば、登録した顔データで大丸有エリアの店舗で手ぶら決済できる環境を整備することも技術的には可能という。

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